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戦いの後 2
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「リリア、ケント体は大丈夫か?」心配な表情で二人の父親が近づいてくる。
「お父様。最後まで見届けていただいて有難うございます。陛下とお父様の援護がなければ厳しい状況でした。感謝いたします。」
「リリア、そのような堅苦しい言い方はよしてくれ。
マリアのこと、ゲイブに信頼を置いてしまったこと。全て私の愚かさが招いてしまった結果だ。ああ、リリアもっとわたしを責めてほしい。わたしのせいでお前から母親と兄を奪ってしまったのだ。」
「そうですね。お父様。
娘の立場から言わせてもらいます。
何で私たち家族を見てくれなかったのですか!?
領地や領民は確かに大切です。
でも、貴族の生活に慣れないお母様を置いて従者に任せきりにしたりして…。ひどいです…。
その上、お母様がいなくなった後は幼い子供たちを残し放っておくなんて…。
寂しかった…。
お兄様にひどいことを言われたのも悲しかった。でも、お父様がそれに気がついてくれなかったことがもっと悲しかった。私の何が悪いのか誰も教えてくれなかった。苦しくて…孤独で…。」一気に皐月でなくリリアの感情が流れ込み、泣きじゃくりながらこれまでの事を父にぶつけた。
「すまない。すまなかった。リリア。」父も現実を受け止め、涙をながしながらリリアを抱きしめた。
その様子を皆が見ている。
ケントも父と妹の姿を見ていた。
母親を死に追いやり、リリアをも追いやって消そうとしていた、これまでの行いに胸が張り裂けそうになってその様子を見ていた。
そこにロイがリリアのそばに優しく寄り添う。
ロイはリリアの手を握った。
「リリア、本当によく頑張った。やっと終わったぞ。誰もリリアを狙わない。このバスク地区も狙われない。もう安心していいんだ。」ロイが優しくリリアに伝える。
ロイの手の温度と優しい声を聞いて一気に力が抜ける。
「おっと、大丈夫か?ほとんど魔力も体力も残ってないもんな。」と言いながらロイはリリアを抱きしめるように支えた。
リリアの父親はリリアをロイに任せ、息子であるケントの元に歩き始めた。
「ち、父上…。」
父親が手の届く距離に来ると、ケントは土下座をする。
額を地面に擦り付け涙や鼻水などでぐちゃぐちゃになりながら謝る。
「申し訳ありません…。僕のせいで…。母上もリリアも、デリスも、みんなが不幸になってしまいました。どのような処分でも受ける所存です。僕はアルバ家の恥です。この場で一思いにこの首を切り落として下さい。」
皆が静まり返った。
「…っ。」
この場でケントを許したい皐月の感情と、今まで辛い思いをさせられたリリアの感情が行き来してリリアは言葉が出ない。
皆が黙っているとリタさん、セリさんとその夫ジル、ラジオの執事が施設に入室した。
「お取り込み中ですかー?たまたまシェルター待機組の皆さんとそこで出会いまして~。ラジオ様全て終わったのですねー。さすが我が主いー。あれ?ダンさん何だか以前と変わりましたねー。おっとー、それは精霊の刻印じゃないですかー。」
執事の力の抜ける声かけに皆一斉に力が抜けた。
「あら、ラジオ様の執事、おかえり。あんた相変わらずだね。こっちはちょいとアルバ家のお坊ちゃんの件でお取り込み中だよ。」マーガレットがニヤリと笑いながら説明する。
「おやおやー。このお方がリリア様のお兄様であられますかー。この重々しい空気はさては処刑などなど話し合っていたのでしょうかー。」
「君、もう少し口を慎まないか。国王もおられる場だ。」ラジオが執事を静止する。
「ラジオ様、丁度良いじゃない。このお坊ちゃんも処刑を望んでるんだ。一思いにケリをつけてやろうじゃないか。」
「あ!思い出した!この子あの偉そうな執事と一緒にあたしのこと根掘り葉掘り調べようとしたリリちゃんのお兄さんだ。セリちゃんを屋敷に閉じ込めて嫌がらせしたり、メイド使って攻撃してきた奴だ。流石に妊婦に攻撃した時はあたしも屋敷ごと吹っ飛ばしそうなくらい腹が立ったよ。」リタさんが色々思い出したことを話す。
「ああ、罪深い若者さ。ラジオ様の執事ならあの能力で苦しまずに首を切り落とすのも訳ないだろ?」
「ちょっと、マーガレットさん!何を言い出すのですか!?彼にそんな事させません!」ラジオが取り乱す。
しかし、マーガレットの瞳がじっとラジオを見る。その色は何か考えがあるようだ。
ラジオはマーガレットを信じた。
ラジオは意見を変える。
「でも、まあ、この場で手を下すのなら彼が一番適任ですね。身分と言い、精神力と技術で言えば彼しかいない。国王もアルバ家当主も異論はないようですし。」
国王は何も言わない。ただじっと成り行きを見ている。
ケントの父は震えている。
数々の修羅場をくぐっているが息子の処刑などこれまで考えたこともなかった。
国王が容認しているのなら一介の貴族である自身は異論を唱えられない。もし、ケントが処刑されるのであれば自身も後を追う覚悟だった。妻や息子、娘への罪は重たすぎる。
領地はリリアに任せれば良い。今のリリアならなんの問題もないだろう。
そこまで考えていた。
「お父様。最後まで見届けていただいて有難うございます。陛下とお父様の援護がなければ厳しい状況でした。感謝いたします。」
「リリア、そのような堅苦しい言い方はよしてくれ。
マリアのこと、ゲイブに信頼を置いてしまったこと。全て私の愚かさが招いてしまった結果だ。ああ、リリアもっとわたしを責めてほしい。わたしのせいでお前から母親と兄を奪ってしまったのだ。」
「そうですね。お父様。
娘の立場から言わせてもらいます。
何で私たち家族を見てくれなかったのですか!?
領地や領民は確かに大切です。
でも、貴族の生活に慣れないお母様を置いて従者に任せきりにしたりして…。ひどいです…。
その上、お母様がいなくなった後は幼い子供たちを残し放っておくなんて…。
寂しかった…。
お兄様にひどいことを言われたのも悲しかった。でも、お父様がそれに気がついてくれなかったことがもっと悲しかった。私の何が悪いのか誰も教えてくれなかった。苦しくて…孤独で…。」一気に皐月でなくリリアの感情が流れ込み、泣きじゃくりながらこれまでの事を父にぶつけた。
「すまない。すまなかった。リリア。」父も現実を受け止め、涙をながしながらリリアを抱きしめた。
その様子を皆が見ている。
ケントも父と妹の姿を見ていた。
母親を死に追いやり、リリアをも追いやって消そうとしていた、これまでの行いに胸が張り裂けそうになってその様子を見ていた。
そこにロイがリリアのそばに優しく寄り添う。
ロイはリリアの手を握った。
「リリア、本当によく頑張った。やっと終わったぞ。誰もリリアを狙わない。このバスク地区も狙われない。もう安心していいんだ。」ロイが優しくリリアに伝える。
ロイの手の温度と優しい声を聞いて一気に力が抜ける。
「おっと、大丈夫か?ほとんど魔力も体力も残ってないもんな。」と言いながらロイはリリアを抱きしめるように支えた。
リリアの父親はリリアをロイに任せ、息子であるケントの元に歩き始めた。
「ち、父上…。」
父親が手の届く距離に来ると、ケントは土下座をする。
額を地面に擦り付け涙や鼻水などでぐちゃぐちゃになりながら謝る。
「申し訳ありません…。僕のせいで…。母上もリリアも、デリスも、みんなが不幸になってしまいました。どのような処分でも受ける所存です。僕はアルバ家の恥です。この場で一思いにこの首を切り落として下さい。」
皆が静まり返った。
「…っ。」
この場でケントを許したい皐月の感情と、今まで辛い思いをさせられたリリアの感情が行き来してリリアは言葉が出ない。
皆が黙っているとリタさん、セリさんとその夫ジル、ラジオの執事が施設に入室した。
「お取り込み中ですかー?たまたまシェルター待機組の皆さんとそこで出会いまして~。ラジオ様全て終わったのですねー。さすが我が主いー。あれ?ダンさん何だか以前と変わりましたねー。おっとー、それは精霊の刻印じゃないですかー。」
執事の力の抜ける声かけに皆一斉に力が抜けた。
「あら、ラジオ様の執事、おかえり。あんた相変わらずだね。こっちはちょいとアルバ家のお坊ちゃんの件でお取り込み中だよ。」マーガレットがニヤリと笑いながら説明する。
「おやおやー。このお方がリリア様のお兄様であられますかー。この重々しい空気はさては処刑などなど話し合っていたのでしょうかー。」
「君、もう少し口を慎まないか。国王もおられる場だ。」ラジオが執事を静止する。
「ラジオ様、丁度良いじゃない。このお坊ちゃんも処刑を望んでるんだ。一思いにケリをつけてやろうじゃないか。」
「あ!思い出した!この子あの偉そうな執事と一緒にあたしのこと根掘り葉掘り調べようとしたリリちゃんのお兄さんだ。セリちゃんを屋敷に閉じ込めて嫌がらせしたり、メイド使って攻撃してきた奴だ。流石に妊婦に攻撃した時はあたしも屋敷ごと吹っ飛ばしそうなくらい腹が立ったよ。」リタさんが色々思い出したことを話す。
「ああ、罪深い若者さ。ラジオ様の執事ならあの能力で苦しまずに首を切り落とすのも訳ないだろ?」
「ちょっと、マーガレットさん!何を言い出すのですか!?彼にそんな事させません!」ラジオが取り乱す。
しかし、マーガレットの瞳がじっとラジオを見る。その色は何か考えがあるようだ。
ラジオはマーガレットを信じた。
ラジオは意見を変える。
「でも、まあ、この場で手を下すのなら彼が一番適任ですね。身分と言い、精神力と技術で言えば彼しかいない。国王もアルバ家当主も異論はないようですし。」
国王は何も言わない。ただじっと成り行きを見ている。
ケントの父は震えている。
数々の修羅場をくぐっているが息子の処刑などこれまで考えたこともなかった。
国王が容認しているのなら一介の貴族である自身は異論を唱えられない。もし、ケントが処刑されるのであれば自身も後を追う覚悟だった。妻や息子、娘への罪は重たすぎる。
領地はリリアに任せれば良い。今のリリアならなんの問題もないだろう。
そこまで考えていた。
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