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第三部
58※ 海月×有
しおりを挟むあれから海月は5回ほど射精した。夏を隷属して魔力が減った俺のキャパシティは既に満タンで、これ以上海月から吸い取っても意味がない。魅了を止めたのだが、海月は俺から離れないし、性器を抜こうとしない。あまりにも自慢げに春樹や夏の話をされてカチンときてしまい、ちょっと意地悪するだけのつもりだったのだが、やりすぎたようだ。
「……――と、言うわけで、お前は逃げた方が良いと思うが、家のものに連絡はつかんのか?」
「はぁっ、わ、るい子で、すいませ、っん!」
「おい海月? 聞いているのか?」
「あぁっ! んあぁあっ! 好きっ! 好きですっっっ!」
「ん、わかったから、んぁっ……くそ、身体の調子が……」
悪魔になった海月相手だと、身体の相性は極端に悪くなる。既にちょっと気分が悪く、慌てて自分に快感増幅をかけてやり過ごす。自分に快感増幅をかけると、触られるだけでゾワゾワする程度の不快感で済んだ。羽根持ちとのセックスは初めてだが、できるだけしたくない。こんなこと思うのは生まれて初めてだ。
「んん、腹がタプタプになってきたからもう終わりだ」
「あぁっ! もっとっ! もっと注がせてくださいアルファリア様ぁっ!」
「……ちょっと酔ってきたから早めに終わらせてくれ」
「はいいいいぃいいいいぃッッッ!!」
海月はすっかり精神が壊れて俺に腰を振るだけの玩具みたいになっていた。魅了は最初こそかけたけれど、今はもうかけていない。それなのに海月は狂ったように俺に魔力を注ぎ続けていた。羽根が沢山抜けて、床に積もっていく。何か変な病気を発症したんじゃないかと不安に思った。
「?」
部屋に急に明かりが差し、俺は頭だけを扉に向ける。その先には青筋をこめかみに浮かべながらブチ切れるイウディネが立っていた。
「我が君、また貴方は勝手なことを……!!!」
「ディ、ディネ……」
「んは、あっ、っはぁ、あは、出るっ、ひぃッッ!!!!」
海月は涎と涙を垂らしながら俺の奥へと射精する。さすがにもう出るものがないのか、俺をぎゅっと抱きしめると、胸を舐めてきた。怖い。
「ロマリュイッ!? 貴様ぁっ……!!!」
「ガハッッッ!?」
イウディネは目を見開くと、俺に縋り付く海月を引っぺがして蹴りを入れた。ドゴゥ! と出てはいけない音がした後、海月は壁にぶち当たって崩れ落ちる。俺は口を押さえて海月を眺める。これ死んでやいないか?
「ロマリュイ、貴様こんなところに……性懲りもなく我が君の前をうろついていたのか!?」
「ディ、ディネ、こいつと知り合いなのか?」
「……同窓です。羽持ち一族のベロア家の二番目。気狂いとまで言われた天才で、この体の製作者です」
ベロア家! それは大物だ。魔界でもトップ3に入る貴族である。しかしそんな貴族の子息が人間界に厄介払いされるなんてどういう経緯があったのだろうか。
「ん!? 待て、ディネはこの身体の製作者を知っていたのか!?」
「えぇ、王弟殿下から名前は聞けませんでしたが、調べること自体は止められていませんでしたし」
「……」
「言ってません、でしたね」
俺が非難めいた視線を向けるとイウディネは目を逸らす。俺に内緒ばかりだったことを悪いとは思っていたんだな。
仲間はずれは嫌だと頬を膨らませてみたが、イウディネは全裸のままの俺を眺めて舌を打った。こんな乱暴な態度のイウディネを俺は初めて見た。思わず肩がビクリと跳ねてしまった。
「……それで、どうしてこのようなことを?」
「ひぅっ!」
イウディネは机に座る俺を押し倒すと、後孔を弄り始める。ぐちょぐちょと精液が中から掻き出され、太腿を白濁が垂れていく。
「んぁっ、ちが、違うのだ。叔父上がっ、あいつを処分するかもしれないからっ……ぁ、んぁっ!」
「それでこんなことをする必要性がどこに?」
「逃がそうと思っただけなんだ。だけどこいつ話をきいてくれなくて、でも抱かせたら話を聞いてくれると言っていたから……んんんっ!!」
イウディネの指が増え、俺の中から全ての精液を吐き出させようとする。無理だと足をばたつかせても、イウディネは汚らわしいと必死に俺の中を掻き回し続けた。腸壁をついでとばかりに擦られると、我慢できず一回射精してしまう。やっとそこで浄化魔法をかけてくれた。最初から魔法をかけてくれればいいのに! 酷い!
「アルファリア様……」
「ん?」
「アルファリアさま……アルファリアさまぁ……」
ロマリュイは俺の名前を迷子のように何度も呼び、机から投げ出された俺の足に体を寄せてくる。俺を見つめる左右色の違う瞳は涙を流し続けていた。はらはらと落ちていく涙が美しい。俺に必死に縋って甘える様子に首を傾げる。
「見るな。我が君が減ります」
「んげっ!?」
「ディ、ディネ……」
イウディネは容赦なく海月の頭を足で踏みつけている。お好きな方には堪らないかもしれないが、多分海月はそういう悪魔ではない気がする。
「ディネ? まさかお前はイウディネか?」
「フン」
「何だ。ディネディネもきていたのかぁ。相変わらず不機嫌を顔に書きなぐったみたいな表情をしているな。顔の筋肉が器用で羨ましい限りだ」
「き、さ、まぁっ」
険悪! 主にイウディネが!
そして何なんだディネディネって!?
俺は恐る恐るイウディネの表情を伺うが、死体に湧いた蛆虫を見るような顔をしていた。
「ほらほら、アルファリア様がびっくりしているよ。アルファリア様どうぞ気になさらないでくださいねぇ、自分達は大親友なだけですよぉ!」
「何が大親友だ!? 貴様が私に何度汚い手で嫌がらせをしたか忘れたのか!?」
「100を越えてからは忘れちゃったかなぁ! そんなに怒らないでよディネディネ~! 君が戦闘能力も持ってるっていうからダークウルフの群れの中に放りこんで様子みたり、自分が開発した媚薬がどれくらい効くか、致死量ギリギリを試そうとしただけジャン!」
「このキ○ガイめ!!!」
イウディネの怒鳴り声にロマリュイは笑っている。先生をしている時とギャップがあるがこれが本来のロマリュイなのだろうか……。
「大体この世の不幸と幸せは同価値なんだよ~? イウディネがアルファリア様の教育係になった幸福分、不幸がなければわりに合わないジャン! ねぇ~! アルファリア様もそう思うでしょう?」
「う、うん?」
急に話を振られ、俺は首を傾げる。
「自分はイウディネと成績も変わらなかった上に家柄の分ハンデもある! なのに羽根持ちだからってアルファリア様の教育係にはなれなかった! なんたる不幸! その分の幸福が無いとやっていけない! もしくは幸せなイウディネにそれ以上の不幸がなければ釣り合わない!!」
「私がアルファリア様の教育係になってから何度襲ったか覚えているのか!?」
「さぁ? どうしたのディネディネ、生理? 別に自分はディネディネのことちーっとも性的な目で見てないんだよ? ただ間接的にアルファリア様を摂取したかっただけジャン」
「絶対に犯すだけですまないだろうが!! 犯すだけならなぜ30人も雇った!?」
ディネはどうやら俺の城から帰る時に30人の猛者に輪姦されかけたらしい。それは何て羨ましいシチュエーションだ。生憎イウディネは犯される前に一番強い悪魔を魅了して全て倒してしまったらしい。むむ、残念。
「ロマリュイ、お前は俺の教育係になりたかったのか?」
「えぇ、勿論!」
「なぜだ? 言ってはなんだが、俺は王族でもかなり地位が低いぞ?」
「うーん。自分は貴方様のために生まれたんだってアルファリア様が言ってくれたから?」
「……俺が?」
そんなことを言った覚えはない。そもそも俺の城に貴族なんて殆ど来なかった。数名の使用人と身内、イウディネだけが俺の世界だった。
「そんなこと言った覚えはないのだが……」
「言いましたよぉ~! 自分の夢の中で!」
「は?」
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「自分が貴方を一目見たあの日から毎日夢で自分を口説いてくれたの忘れたんですか!?」
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