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第二部
29※ 春樹×有
しおりを挟む「本当は抱かれたいんだけどっ、ふふ、今日はこれで我慢するね」
「あっ、春樹、机が壊れるぞっ」
「大丈夫だよ」
春樹は俺の首筋に唇を落としながら腰を動かす。俺も春樹も上だけは着たままで、下は全て脱いでしまった。
「春樹ッ、ぁっ、気持ち良いかっ……?」
「うん、気持ち良いっ、有くんっ、好きだよっ、っはぁっ」
春樹が激しく動くと、下にいる俺と一緒にガタガタとデスクが揺れ、乗っていたボールペンも、紙も、床へと落ちてしまう。俺の太腿には春樹の猛った性器が挟み込まれ、太腿を摺り上げるたび先走りを溢していた。
「んぁ、あっ、春樹っ……ひっ! 耳っ、が、ぁあっ!」
「ふふ、有くんの耳美味しいよ」
春樹の舌が耳に侵入し、ジュルジュルと唾液を吸うような音がする。やたらと大きく聞こえるその水音に、腰が震えるほど感じてしまう。頭蓋骨に直接響くような音から逃れようと頭を触れば、春樹の舌は俺の耳を追い立てる。
決して舐められるのは嫌ではない。むしろ好きだ。俺の耳は嬲られれば達してしまうほど敏感だった。ただ俺はこうすれば男が喜ぶと知っている。男は逃げれば追ってしまう生き物だ。春樹も俺の耳を執拗に責め立て、喘ぐ俺を楽しんでいた。
「っは、んぁ、もっと、もっとくれっ! はるきぃ……!」
もっと気持ちよくなりたい。春樹の性器と自分の性器を擦れるように手で握り込むと、春樹が腰のスピードを上げた。すぐイクのは勿体無い、と時折腰は止まり、俺がやだやだと強請ると再び動き出す。荒い呼吸と性交の音だけが支配する空間は数分のようにも一時間のようにも感じられた。
「ぁあッッ!!!」
「っはぁ、あ、んっっッ――――!」
ビクビク、と腰を震わせてほぼ同時に射精する。春樹と俺の性器から溢れた精液は俺の手を真っ白に染め、持ち上げてスンと鼻を鳴らせば精液特有のツンと生臭い匂いがした。俺の大好きな匂いだ。指の間に垂れた精液も残さず全て舐め上げる。
「入れたいなぁ」
「あっ、春樹、汐がきてしまうぞ」
「わかってるけど、ここ、そういえばまだ一度も入れてもらえてなかった」
春樹が俺の足を持ち上げ、尻の窄まりを指で撫でる。足を閉じようとすると挿し込まれ、春樹の性器が押し付けられた。これはちとまずい。行為自体はしたくして仕方ないくらいだが、相手が調子の悪い春樹だというのがかなりまずい。
(もう30分は経ってしまうな……)
汐はもうすぐ戻ってくるはずだ。春樹はところかまわず盛っていたと汐に暴露されたばっかりなのに、なぜ同じことを繰り返すのか。怒られても気にしていないのだとしたら、鋼どころかオリハルコンでできたメンタルだ。大変好ましい。
「ひ、っ、はるっ!?」
「ふふ、すごいね、有くんのここ、柔らかい」
俺が思案している間にまだ拡げもしていないそこに春樹の熱い性器が侵入しようとする。本気で挿入されるとは思わなかったので、驚きすぎて声が裏返ってしまった。慣らされていない場所に性器を突き立てられてもそこに快感はない。痛みで涙しかでなかった。
「春樹っ! 駄目だっ! あっ! うぁっ!」
「すごい、静海くんもそんな余裕の無い声が出るんだね……」
「あ、当たり前だろうが! やめろ! 抜け!」
悪魔の身体の時なら、慣らされなくても難なく雄を受け入れられるのに、人間の身体ではそうはいかないらしく、俺は『痛い!』と足をばたつかせ、身体を捻って春樹と向き合った。
「うっ、くっ、ぅ……!」
「入れちゃった。痛い?」
「い、たいにきまってるだろうっ!」
「あはは、慣らしてないもんね」
「ひっ、あ、ま、待ってっ! 動くなっ! ほ、本当に痛いんだッ……!」
性交に慣れた俺の身体は春樹の亀頭を何とか飲み込んだようだ。少し腰を動かされるだけで身体が引き裂かれるような激痛を感じ、俺は春樹の胸を手で押し返す。しかし春樹は穏やかに笑ったまま、少しずつ少しずつ俺の中に性器を埋め込んでいこうとする。
「春樹っ、あ、だめっ、だめだっ!」
「何が? 汐ならきっと空気をよんでくれるよ?」
「やめ、てくれっ! あ、ぁ、ああ! 壊れるっ! 一旦抜けっ!」
「有くん処女じゃないでしょ? でもすごい、中がきつくて初めてみたい。可愛いなぁ」
色んなことがバレているが、大事なのは処女ではなく、痛すぎてそれどころじゃないということだ。身体の力を抜こうと息を吐いても、春樹は無理矢理俺の中を犯そうとする。痛い! 痛い! と何度も叫んだが、春樹は何を焦っているのか俺を犯そうとする動きを止めない。
春樹は抜いてくれる気配が全くないので、俺は痛みに耐えられる気がせず、快感増幅を自分にかけた。身体が敏感になって、少しずつ痛みが消え、快楽だけが身体を支配する。そこでようやっと呼吸ができた。知らず知らずのうちに息を止めていたらしい。
「あれ、もしかしてネコNGだった?」
「NGではないが、同意を得ろ!」
「そういうプレイ嫌いじゃなさそうだけど?」
快感増幅のせいで俺の性器は臨戦態勢になっている。そして実際そういうプレイも嫌いじゃない。しかし先程までの青い顔の春樹を見ているので、どうにも乗り気になれなかった。
俺は色欲の悪魔。高位淫魔よりもさらに上位の存在で、精気を人間から得ることができる生き物だ。精気を得る方法は主に体液だが、身体を繋げて吸収することもできる。その場合、タチならコントロールしやすいが、ネコだと昂ぶりすぎて相手から大量の精気を奪うこともありえる。
つまり、今の春樹相手に俺がネコをするということは、春樹を腹上死への道に誘うことと同義である。困る! 俺は楽しくセックスがしたいだけで、魂など要らんのだ! ましてお気に入りの春樹だ! 生きていてくれた方が1000000倍楽しめるというものである。
「とにかく、今はやめておかないか? これ以上は、春樹の身体に悪い」
「……」
春樹は腰を進めるのを止めて黙り込んだ。俺の中には春樹の性器が既に半分ほど入っている。現金なもので、快感増幅をかけた身体は先程まであんなに拒絶していた春樹の性器を飲み込みたいと思い始めていた。半ばまで埋まった春樹の性器に指を絡めてみると、少し質量が増す。あぁ、これでゴリゴリ中を擦られたらどれほど気持ちが良いだろうか……。
「有くんは、僕と一緒にいたい?」
春樹の質問に、勿論と俺は頷く。
「君がそう言うなら、入院はしなくても、もっと病院に行く回数を増やすよ……早く治さなきゃね……」
治るかどうかは神様しかわからないけど、と口にする春樹の顔は諦めが滲んでいる。あまりにも悲しいその表情に胸がジクリと痛んだ。
(回復は……まだだな……)
隷属すれば春樹を元気にしてやれるというのに、それができないことが歯痒かった。
チャリ、と金属の擦れる音がして俺は手首を見る。金色の腕輪は残り二本。魔力の回復はまだ見込めていない。
「ごめんね、こんな身体で……」
「馬鹿を言うな、なぜ春樹が謝る必要がある?」
「ありがとう……ほら、有くんももうちょっと頑張って」
「ん、あっ、ああっ!」
ズン、と突き上げられ、顎を上げて咽喉を反らす。『全部入った』と春樹の声が聞こえたので、春樹の性器が俺の中に完全に収まったらしい。接合部がジンジンと熱をもっている。
「は、るきぃ……」
「ん、偉い偉い。動くね」
「ひ、あっ! ぁ、んん、あ!」
熱い春樹の性器が中を擦り上げていく。ネコだと唾液を垂らしてよがる春樹が今は男の顔をしていて堪らない。もっと、と強請りたくなる唇を噛み締める。我慢をしながらのセックスは難しいが、できなくはない。快感増幅を無理矢理解除すれば、ジンジンと下半身が痛み出す。痛いほうがまだ制御できる。諸刃の剣ではあるが……。
「あぁ、こうやって、ずっと君とつながっていられたらいいのに……」
頬が冷たい、と見上げれば春樹の頬から涙と汗が零れ落ちていた。俺に顔を見られまいと抱きつき、再び腰を動かし始める春樹に合わせるように俺も腰を動かす。お互い無理をさせまいとゆっくり肌を合わせたこのセックスは、至高の快楽とは程遠かった。
けれど、春樹の精気がじわじわと俺を満たしていくこの感覚は、涙が出るほど気持ち良かった。
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