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宮本が殺害された。首吊りで発見されたがあれは殺人だ。後輩の佐藤は、きっとあの映画のせいだと、拳を握りしめた。
自分に何か起きたときのためにと、宮本から、映画館の住所や、彼が気にかけていた青年の特徴が書かれたものを渡されていた。
「…いってみるか」
テレビでもあの映画のことを報道していたから、きっとその彼も来るだろう。映画館で張っていればきっと会えるに違いない。
GORAKUのサイトを見て、上映時間を調べた。終わった頃を見計らうことにし、映画館に向かった。映画を見る気にはなれなかった。
さびれているその場所は、本当に繁盛しているのかと思わされるほどに、朽ちかけた映画館だ。映画館の看板だけが残された廃屋だと言われても違和感はない。
しかし、首吊りシネマ上映中と書かれた真新しい幟が風に煽られてはためいている。いまだに営業をしている証だ。
佐藤は腕時計を見る。
「終わった頃だな」
まばらに出ていく観客たち。散り散りに思い思いの道を歩いていく。正気を感じない無気力な人間しかいない。しかし、そんな中でも、宮本は一人の青年の瞳に希望を感じたのだ。宮本が何を彼に感じたかはわからない。だがきっと、彼が宮本の事件を解決してくれる唯一の光に違いない。
宮本が残したメモを頼りに、その特徴に当てはまる男が出てくるのを待つ。じっとその場で視線だけを動かしていた。
「いくら待っても、あいつは来ないよ」
「え?」
振り返ると、にこやかに笑う一人の男が立っている。
「き、きみは?」
「あんたが待ってる人間の友達」
「そ、そうなのか?」
「でも、あいつはもういないから」
人差し指を空に向ける。それは、この世にはいないことを示していた。
「きみは何を知ってるんだ?」
「俺は何も知らない。すべては、あいつが悪いんだから…あいつのせいなんだ。あんたもこれ以上関わるな」
先ほどまでの人好きのする笑顔とは一変し、その瞳は険しく佐藤を睨みつけた。
佐藤は何も言えないまま、横切る青年の後ろ姿をただ見つめた。
「…大丈夫。もうこの映画も終わるから」
振り返った青年が見せたのは、意外にも涙だった。
「どういう意味だ?」
「……そういう意味だよ」
再び空を見上げる。
清々しいほどの笑顔を浮かべている。もしかすると、彼も死ぬつもりなのかもしれない。
なんと声をかけようかと、思案していると、青年の方が口を開いた。
「明日までだから」
それだけを言うと、今度は本当にその場から立ち去った。
ただ一人、佐藤はしばしその場で立ち尽くしていた。
宮本が殺害された。首吊りで発見されたがあれは殺人だ。後輩の佐藤は、きっとあの映画のせいだと、拳を握りしめた。
自分に何か起きたときのためにと、宮本から、映画館の住所や、彼が気にかけていた青年の特徴が書かれたものを渡されていた。
「…いってみるか」
テレビでもあの映画のことを報道していたから、きっとその彼も来るだろう。映画館で張っていればきっと会えるに違いない。
GORAKUのサイトを見て、上映時間を調べた。終わった頃を見計らうことにし、映画館に向かった。映画を見る気にはなれなかった。
さびれているその場所は、本当に繁盛しているのかと思わされるほどに、朽ちかけた映画館だ。映画館の看板だけが残された廃屋だと言われても違和感はない。
しかし、首吊りシネマ上映中と書かれた真新しい幟が風に煽られてはためいている。いまだに営業をしている証だ。
佐藤は腕時計を見る。
「終わった頃だな」
まばらに出ていく観客たち。散り散りに思い思いの道を歩いていく。正気を感じない無気力な人間しかいない。しかし、そんな中でも、宮本は一人の青年の瞳に希望を感じたのだ。宮本が何を彼に感じたかはわからない。だがきっと、彼が宮本の事件を解決してくれる唯一の光に違いない。
宮本が残したメモを頼りに、その特徴に当てはまる男が出てくるのを待つ。じっとその場で視線だけを動かしていた。
「いくら待っても、あいつは来ないよ」
「え?」
振り返ると、にこやかに笑う一人の男が立っている。
「き、きみは?」
「あんたが待ってる人間の友達」
「そ、そうなのか?」
「でも、あいつはもういないから」
人差し指を空に向ける。それは、この世にはいないことを示していた。
「きみは何を知ってるんだ?」
「俺は何も知らない。すべては、あいつが悪いんだから…あいつのせいなんだ。あんたもこれ以上関わるな」
先ほどまでの人好きのする笑顔とは一変し、その瞳は険しく佐藤を睨みつけた。
佐藤は何も言えないまま、横切る青年の後ろ姿をただ見つめた。
「…大丈夫。もうこの映画も終わるから」
振り返った青年が見せたのは、意外にも涙だった。
「どういう意味だ?」
「……そういう意味だよ」
再び空を見上げる。
清々しいほどの笑顔を浮かべている。もしかすると、彼も死ぬつもりなのかもしれない。
なんと声をかけようかと、思案していると、青年の方が口を開いた。
「明日までだから」
それだけを言うと、今度は本当にその場から立ち去った。
ただ一人、佐藤はしばしその場で立ち尽くしていた。
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