自殺のメソッド〜首吊シネマ〜

咲良ゆず季

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 都内のとあるテレビ局は一時騒然となった。映画館で隠し撮りされたという映像が匿名で送られてきたのだ。
 データの入ったUSBと共に、手紙が添えられていた。そこには、映像に使用されている自体は本物である可能性が高いと書かれている。
 テレビ局には、毎日のようにこのような眉唾ものが送られてくる。いちいち確認するのも面倒だが、万が一にもスクープにつながることも考えられるため、加藤圭吾はあくびを噛み締めながら、そのデータを開いた。
 陰鬱な雰囲気のする映像が流れる。それだけでも不気味だが、写り込んでいるもの全て首吊り死体という何とも奇妙なものだった。
「なんだよこれ」
 悪趣味などというかわいげのある言葉では片付けられない。異様な寒気が加藤を襲う。死体が本物であろうが無かろうが、このようなものが上映されていること自体が問題ではないか。これだけでもスクープになり得る。加藤はニュースで取り上げることに決め、社員を集めた。
 集まった社員に先程の映像を見せる。当然ながら、気味が悪いという反応が返ってきた。
「明日、早朝のニュースで取り上げる」
 真偽はどうでもよかった。ただ、奇妙な映像が送り付けられたため、視聴者に対して、この映像への情報提供を求めると言った形で放送しようと目論んでいる。それだけでもインパクトは十分だと考えた。
「裏どりは?」
「そんなもんはいらない。会社に妙なもんが送りつけられた、会社としても真偽はわからない。だからあなたの情報をお待ちしています、という感じで流すぞ」
 もちろん、死体などはモザイク処理を施さなければならないが、首を吊った人間の映像が流れるだけの映画、という文言はそれだけで人の興味を惹きつけるに違いない。しかし、たとえモザイクがかかっていても、不快に感じる人もいるだろう。
「一応、モザイクはかけますが、クレーム来ますよ」
「クレームなんて来たらこっちのもんなんだよ」
「そうですか…」
「早朝の番組という事は、朝まるニュースのことですか? それなら始まるのが五時で終わるのが七時前ですから、少し早すぎる気がします」
 その番組を担当している女性アナウンサーが言った。
「ああ、たしかに身支度を整えたり、朝ごはんの準備をしたり、何かをしながらとなると、ただテレビをつけているだけの状態になりかねませんね」
「たしかになあ」
「次の番組なら、ワイドショー色も朝まるニュースより、一段と強いですし、エンターテイメントとして捉えてもらいやすいんじゃないでしょうか。この映画私も見たことあるっていう軽いノリで情報提供する側も気軽にできると思います」
 その番組のメイン司会である男性アナウンサーの一言に、加藤は頷いた。
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