24 / 57
24
しおりを挟む
※
都内のとあるテレビ局は一時騒然となった。映画館で隠し撮りされたという映像が匿名で送られてきたのだ。
データの入ったUSBと共に、手紙が添えられていた。そこには、映像に使用されている自体は本物である可能性が高いと書かれている。
テレビ局には、毎日のようにこのような眉唾ものが送られてくる。いちいち確認するのも面倒だが、万が一にもスクープにつながることも考えられるため、加藤圭吾はあくびを噛み締めながら、そのデータを開いた。
陰鬱な雰囲気のする映像が流れる。それだけでも不気味だが、写り込んでいるもの全て首吊り死体という何とも奇妙なものだった。
「なんだよこれ」
悪趣味などというかわいげのある言葉では片付けられない。異様な寒気が加藤を襲う。死体が本物であろうが無かろうが、このようなものが上映されていること自体が問題ではないか。これだけでもスクープになり得る。加藤はニュースで取り上げることに決め、社員を集めた。
集まった社員に先程の映像を見せる。当然ながら、気味が悪いという反応が返ってきた。
「明日、早朝のニュースで取り上げる」
真偽はどうでもよかった。ただ、奇妙な映像が送り付けられたため、視聴者に対して、この映像への情報提供を求めると言った形で放送しようと目論んでいる。それだけでもインパクトは十分だと考えた。
「裏どりは?」
「そんなもんはいらない。会社に妙なもんが送りつけられた、会社としても真偽はわからない。だからあなたの情報をお待ちしています、という感じで流すぞ」
もちろん、死体などはモザイク処理を施さなければならないが、首を吊った人間の映像が流れるだけの映画、という文言はそれだけで人の興味を惹きつけるに違いない。しかし、たとえモザイクがかかっていても、不快に感じる人もいるだろう。
「一応、モザイクはかけますが、クレーム来ますよ」
「クレームなんて来たらこっちのもんなんだよ」
「そうですか…」
「早朝の番組という事は、朝まるニュースのことですか? それなら始まるのが五時で終わるのが七時前ですから、少し早すぎる気がします」
その番組を担当している女性アナウンサーが言った。
「ああ、たしかに身支度を整えたり、朝ごはんの準備をしたり、何かをしながらとなると、ただテレビをつけているだけの状態になりかねませんね」
「たしかになあ」
「次の番組なら、ワイドショー色も朝まるニュースより、一段と強いですし、エンターテイメントとして捉えてもらいやすいんじゃないでしょうか。この映画私も見たことあるっていう軽いノリで情報提供する側も気軽にできると思います」
その番組のメイン司会である男性アナウンサーの一言に、加藤は頷いた。
都内のとあるテレビ局は一時騒然となった。映画館で隠し撮りされたという映像が匿名で送られてきたのだ。
データの入ったUSBと共に、手紙が添えられていた。そこには、映像に使用されている自体は本物である可能性が高いと書かれている。
テレビ局には、毎日のようにこのような眉唾ものが送られてくる。いちいち確認するのも面倒だが、万が一にもスクープにつながることも考えられるため、加藤圭吾はあくびを噛み締めながら、そのデータを開いた。
陰鬱な雰囲気のする映像が流れる。それだけでも不気味だが、写り込んでいるもの全て首吊り死体という何とも奇妙なものだった。
「なんだよこれ」
悪趣味などというかわいげのある言葉では片付けられない。異様な寒気が加藤を襲う。死体が本物であろうが無かろうが、このようなものが上映されていること自体が問題ではないか。これだけでもスクープになり得る。加藤はニュースで取り上げることに決め、社員を集めた。
集まった社員に先程の映像を見せる。当然ながら、気味が悪いという反応が返ってきた。
「明日、早朝のニュースで取り上げる」
真偽はどうでもよかった。ただ、奇妙な映像が送り付けられたため、視聴者に対して、この映像への情報提供を求めると言った形で放送しようと目論んでいる。それだけでもインパクトは十分だと考えた。
「裏どりは?」
「そんなもんはいらない。会社に妙なもんが送りつけられた、会社としても真偽はわからない。だからあなたの情報をお待ちしています、という感じで流すぞ」
もちろん、死体などはモザイク処理を施さなければならないが、首を吊った人間の映像が流れるだけの映画、という文言はそれだけで人の興味を惹きつけるに違いない。しかし、たとえモザイクがかかっていても、不快に感じる人もいるだろう。
「一応、モザイクはかけますが、クレーム来ますよ」
「クレームなんて来たらこっちのもんなんだよ」
「そうですか…」
「早朝の番組という事は、朝まるニュースのことですか? それなら始まるのが五時で終わるのが七時前ですから、少し早すぎる気がします」
その番組を担当している女性アナウンサーが言った。
「ああ、たしかに身支度を整えたり、朝ごはんの準備をしたり、何かをしながらとなると、ただテレビをつけているだけの状態になりかねませんね」
「たしかになあ」
「次の番組なら、ワイドショー色も朝まるニュースより、一段と強いですし、エンターテイメントとして捉えてもらいやすいんじゃないでしょうか。この映画私も見たことあるっていう軽いノリで情報提供する側も気軽にできると思います」
その番組のメイン司会である男性アナウンサーの一言に、加藤は頷いた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
魔女の虚像
睦月
ミステリー
大学生の星井優は、ある日下北沢で小さな出版社を経営しているという女性に声をかけられる。
彼女に頼まれて、星井は13年前に裕福な一家が焼死した事件を調べることに。
事件の起こった村で、当時働いていたというメイドの日記を入手する星井だが、そこで知ったのは思いもかけない事実だった。
●エブリスタにも掲載しています

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夜の動物園の異変 ~見えない来園者~
メイナ
ミステリー
夜の動物園で起こる不可解な事件。
飼育員・えまは「動物の声を聞く力」を持っていた。
ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた——
「そこに、"何か"がいる……。」
科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。
これは幽霊なのか、それとも——?
どんでん返し
井浦
ミステリー
「1話完結」~最後の1行で衝撃が走る短編集~
ようやく子どもに恵まれた主人公は、家族でキャンプに来ていた。そこで偶然遭遇したのは、彼が閑職に追いやったかつての部下だった。なぜかファミリー用のテントに1人で宿泊する部下に違和感を覚えるが…
(「薪」より)
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

消えた弟
ぷりん
ミステリー
田舎で育った年の離れた兄弟2人。父親と母親と4人で仲良く暮らしていたが、ある日弟が行方不明に。しかし父親は何故か警察を嫌い頼ろうとしない。
大事な弟を探そうと、1人で孤軍奮闘していた兄はある不可思議な点に気付き始める。
果たして消えた弟はどこへ行ったのか。

魔法使いが死んだ夜
ねこしゃけ日和
ミステリー
一時は科学に押されて存在感が低下した魔法だが、昨今の技術革新により再び脚光を浴びることになった。
そんな中、ネルコ王国の王が六人の優秀な魔法使いを招待する。彼らは国に貢献されるアイテムを所持していた。
晩餐会の前日。招かれた古城で六人の内最も有名な魔法使い、シモンが部屋の外で死体として発見される。
死んだシモンの部屋はドアも窓も鍵が閉められており、その鍵は室内にあった。
この謎を解くため、国は不老不死と呼ばれる魔法使い、シャロンが呼ばれた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる