自殺のメソッド〜首吊シネマ〜

咲良ゆず季

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 宮本は、日課になりつつある首吊りシネマを見に、今日もやってきた。
 出がけに、どこに行くのか、と尋ねる後輩を煙にまくのに苦労はしたが、どうにか抜け出してきた。振り返ると、佐藤も諦めたように苦味のかかった笑顔を浮かべで自分を見送っていた。
 どこに座ろうかと辺りを見渡す。いつもなら適当な椅子に座っていたが、今回は違った。
 見つけた、と嬉々とその瞳に姿を写したのは、紛れもなく赤坂だった。その隣には誰もいない。気づかれないように隣の椅子にそっと腰を下ろす。
 隣の男は気づかずに、真剣にその視線をスクリーンに向けていた。何が彼をそうさせるのか。握っていた写真らしきものにはその要因が写っているのだろう。
 いったい、彼は何をどこまで知っているのか。この普通ではない場所で出会えた唯一の希望だ。
       
 首吊シネマという、題字を掲げるスクリーンから、陽気な音楽が流れてくる。この映画は本物の死体を使っているから注意してね、とうさぎの可愛らしいキャラクターが注意を促している。その言葉に観客からは歓声があがる。
(人の死を何だと思ってるんだよ)
 湧き出る怒りのような悔しさに、赤坂は唇を噛んだ。血の味が口の中を満たす。
 音楽が鳴り止むと、場面が変わった。夜中の学校が映し出される。
「あれ?」
 昨日見たものとは内容が違う。
 映像はどんどんと進んでいく。夜中の学校で撮影されているのか、カメラを持った何者かが、廊下を歩いているようだ。独特なひんやりとした空気を画面越しに感じ体を震わせる。
 教室につながる扉が開かれた瞬間、懐中電灯の明かりが室内を照らした。薄暗い中、ちっぽけな光の先が映し出される。
 ありえない場所に足が浮いている。だんだんと慣れてくる目は、教室の梁から垂れるロープで首を吊った女子高生の死体を映し出した。
「ひっ! すごい臨場感」
 後ろからそんな声がした。四方からそのような声が聞こえてくる。驚きで悲鳴のように息を飲むような音が聞こえてくるが、二言目には、感動の言葉を発している。
 赤坂は、そんな声に憤りを感じる余裕さえなかった。呆然と画面を見つめている。
「昨日と違う…」
 今日の首吊りシネマは、まるで本当の映画のようにストーリー性を持たせており、話が進んでいっているかのようだ。セリフはなかったが台本や演出があるのではないかと、感じさせる。昨日は、ただ淡々と死体が映っていただけだった。
「毎日違うのか」
「そうだよ」
「えっ?」
 横から声がして、慌てて振り返える。男がニヤリと笑いながら自分を見ていた。
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