12 / 18
3 不明で不快なそれぞれの思惑
3-4 真守の舞台裏
しおりを挟む
御神は、前田千恵に「問題なし」と太鼓判を押して帰宅を許可した。
前田は、ずっとぼんやりしたまま――うまく、モノが考えられないんです、と訴えていた。
大きな心の葛藤を終わらせたとき、人は様々な反応を見せる。
眠くなる人もいれば、トイレにこもる人がいる。
ココロの中で、全てが組み変わっていく反動だ。
記憶が、性格が、言動が、新しいココロに適応しようと配置を変える。
前田のココロもきっと大きく変動しているに違いない。
真守は、丁寧にストレッチをして自分の身体を確かめた。
動かない部分はない。
装置での強制退出と、そのあとの昏睡から引きずるものはない。
スマホで簡易記憶をつけた。
真守は、装置での冒険をうっとりと反芻する。
毎回、こんな死にそうな目に合うのは嫌だ、と思うのに家に帰ると宝物になっていた。
この宝物は他人と共有することが難しい。
個人名と悩みさえ言わなければ、装置で起こったことを話すことを禁じられていない。
ただし、真守の語彙力では表現できない。
「棒人間に洪水された」と言われて誰が理解してくれるだろう。
同級生が、職場の人間関係や、同じことの繰り返しの年月に焦りを感じる中、真守はどんどん冒険にのめり込む。
何が出てくるか分からない世界に備えて日々準備することさえ愛しい。
真守は、風呂上がりに鏡で自分の身体をチェックした。
力こぶを作って確認する。
「おまえが頼りだからな」
と筋肉に話しかけ続けた。
前田は、ずっとぼんやりしたまま――うまく、モノが考えられないんです、と訴えていた。
大きな心の葛藤を終わらせたとき、人は様々な反応を見せる。
眠くなる人もいれば、トイレにこもる人がいる。
ココロの中で、全てが組み変わっていく反動だ。
記憶が、性格が、言動が、新しいココロに適応しようと配置を変える。
前田のココロもきっと大きく変動しているに違いない。
真守は、丁寧にストレッチをして自分の身体を確かめた。
動かない部分はない。
装置での強制退出と、そのあとの昏睡から引きずるものはない。
スマホで簡易記憶をつけた。
真守は、装置での冒険をうっとりと反芻する。
毎回、こんな死にそうな目に合うのは嫌だ、と思うのに家に帰ると宝物になっていた。
この宝物は他人と共有することが難しい。
個人名と悩みさえ言わなければ、装置で起こったことを話すことを禁じられていない。
ただし、真守の語彙力では表現できない。
「棒人間に洪水された」と言われて誰が理解してくれるだろう。
同級生が、職場の人間関係や、同じことの繰り返しの年月に焦りを感じる中、真守はどんどん冒険にのめり込む。
何が出てくるか分からない世界に備えて日々準備することさえ愛しい。
真守は、風呂上がりに鏡で自分の身体をチェックした。
力こぶを作って確認する。
「おまえが頼りだからな」
と筋肉に話しかけ続けた。
0
毎週月曜日朝5時に更新します。
読むカウンセリング御神玲香シリーズ
1話完結型。
どこから読んでも大丈夫なように作ってあります。
1 試運転 ~保護者会問題~
2 先生からの暴言 ~乗り越え方問題~
3 生きるは義務 我慢は正義
読むカウンセリング御神玲香シリーズ
1話完結型。
どこから読んでも大丈夫なように作ってあります。
1 試運転 ~保護者会問題~
2 先生からの暴言 ~乗り越え方問題~
3 生きるは義務 我慢は正義
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。
※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる