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3 不明で不快なそれぞれの思惑

3-4 真守の舞台裏

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御神は、前田千恵に「問題なし」と太鼓判を押して帰宅を許可した。
前田は、ずっとぼんやりしたまま――うまく、モノが考えられないんです、と訴えていた。
大きな心の葛藤を終わらせたとき、人は様々な反応を見せる。
眠くなる人もいれば、トイレにこもる人がいる。
ココロの中で、全てが組み変わっていく反動だ。
記憶が、性格が、言動が、新しいココロに適応しようと配置を変える。
前田のココロもきっと大きく変動しているに違いない。


真守は、丁寧にストレッチをして自分の身体を確かめた。
動かない部分はない。
装置での強制退出と、そのあとの昏睡から引きずるものはない。
スマホで簡易記憶をつけた。

真守は、装置での冒険をうっとりと反芻する。
毎回、こんな死にそうな目に合うのは嫌だ、と思うのに家に帰ると宝物になっていた。

この宝物は他人と共有することが難しい。

個人名と悩みさえ言わなければ、装置で起こったことを話すことを禁じられていない。
ただし、真守の語彙力では表現できない。
「棒人間に洪水された」と言われて誰が理解してくれるだろう。

同級生が、職場の人間関係や、同じことの繰り返しの年月に焦りを感じる中、真守はどんどん冒険にのめり込む。

何が出てくるか分からない世界に備えて日々準備することさえ愛しい。

真守は、風呂上がりに鏡で自分の身体をチェックした。
力こぶを作って確認する。
「おまえが頼りだからな」
と筋肉に話しかけ続けた。
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