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2 棒人間の静かなる攻撃
2-3 棒人間の叫び
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真守は夢中になって聞いていたが、話が途切れた瞬間に横を見ると御神がだれていた。
この人はカウンセラーのくせに人の話を聞くことがあまり好きではないのだ。
自分が会話の中心になっていないとその傾向はひどくなる。
こんなに熱のこもった話にだれてしまう御神に軽蔑の目を向けると、御神がにらみ返してきた。
目線で前を向くように促してくる。
「お前が聞いておけ、任せた」ということらしい。
「死にたいだけやったのに、私何してるんやろってなっとんよ」
棒人間の顔らしき部分が折れ曲がる。
うなだれたのだろう。
「今死んだら、子供のときよりずっと分かってもらえん。
どんなにがんばって遺書を書いても、みんな、なんで?ってなるやん
なんで、こんなに恵まれて、こんなにいい人に囲まれとるのに
生きるのが苦しいんやろ。
申し訳ない」
棒人間は、体から横に生えた指のない腕で顔を覆った。
泣いているのだろうが、目がないから涙は出ていないようだった。
御神が立ち上がった。
「死にましょう」
棒人間が顔を上げる。
キョトンとしているようだった。
「理由なんて要りません。
死にたい。
死んでみる。
それでいいんです。
まずは計画を立てましょう。
あなたのことはなんと呼べばいいですか?」
「ポワちゃん」
泣いていた割に冷静な口調で返答がきた。
もう何がなんだか情緒がぐちゃぐちゃなのかもしれない。
「外の千恵さんは、死にたい気持ちを封印しているのでここでやりましょう。
この世界で、どの死に方が一番合っているのか検証しましょう」
「理由なくてええん?」
その言葉が終わるか終わらないかのタイミングで地響きがし始めた。
ポワの質問に答える余裕は失われた。
地面が上下に揺れる。
真守は、御神が凝視する方向に目線を向けて血の気が引いた。
「佐保さん! 緊急脱出!」
御神の叫ぶ声が号令となって真守は走り出した。
壁が迫ってくる。
壁のような高さで水が押し寄せてきていたのだ。
「あの白いところへ!」
進行方向の空と地面が溶けて無機質な白が広がる。
御神の誘導するその白は、無意識の世界に降りたときの感覚に似ている。
佐保が世界を壊して強制的に現実に引き戻そうとしているのかもしれない。
あの白まで辿りつけば助かるハズ。
後ろからは水が小山となって迫ってくる。
白に追いつくと、世界は暗闇になった。
この人はカウンセラーのくせに人の話を聞くことがあまり好きではないのだ。
自分が会話の中心になっていないとその傾向はひどくなる。
こんなに熱のこもった話にだれてしまう御神に軽蔑の目を向けると、御神がにらみ返してきた。
目線で前を向くように促してくる。
「お前が聞いておけ、任せた」ということらしい。
「死にたいだけやったのに、私何してるんやろってなっとんよ」
棒人間の顔らしき部分が折れ曲がる。
うなだれたのだろう。
「今死んだら、子供のときよりずっと分かってもらえん。
どんなにがんばって遺書を書いても、みんな、なんで?ってなるやん
なんで、こんなに恵まれて、こんなにいい人に囲まれとるのに
生きるのが苦しいんやろ。
申し訳ない」
棒人間は、体から横に生えた指のない腕で顔を覆った。
泣いているのだろうが、目がないから涙は出ていないようだった。
御神が立ち上がった。
「死にましょう」
棒人間が顔を上げる。
キョトンとしているようだった。
「理由なんて要りません。
死にたい。
死んでみる。
それでいいんです。
まずは計画を立てましょう。
あなたのことはなんと呼べばいいですか?」
「ポワちゃん」
泣いていた割に冷静な口調で返答がきた。
もう何がなんだか情緒がぐちゃぐちゃなのかもしれない。
「外の千恵さんは、死にたい気持ちを封印しているのでここでやりましょう。
この世界で、どの死に方が一番合っているのか検証しましょう」
「理由なくてええん?」
その言葉が終わるか終わらないかのタイミングで地響きがし始めた。
ポワの質問に答える余裕は失われた。
地面が上下に揺れる。
真守は、御神が凝視する方向に目線を向けて血の気が引いた。
「佐保さん! 緊急脱出!」
御神の叫ぶ声が号令となって真守は走り出した。
壁が迫ってくる。
壁のような高さで水が押し寄せてきていたのだ。
「あの白いところへ!」
進行方向の空と地面が溶けて無機質な白が広がる。
御神の誘導するその白は、無意識の世界に降りたときの感覚に似ている。
佐保が世界を壊して強制的に現実に引き戻そうとしているのかもしれない。
あの白まで辿りつけば助かるハズ。
後ろからは水が小山となって迫ってくる。
白に追いつくと、世界は暗闇になった。
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