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2 棒人間の静かなる攻撃
2-1 深層心理の世界
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透明なカプセルのカバーの中で、真守の意識は移行する。
仮想現実の世界で無から有になる。
法律と労災が成立しないどころか、命の保証もない世界。
人権とは何か、命の保証があるということはどれぐらい恵まれているか……
そんなことを最近真面目に考えるようになった。
この世界は、実験段階なのだ。
この世界でうっかり死んでしまえば、植物状態になってしまうかもしれない。
そんな真守を守ってくれる制度はほぼないに等しい。
そんな現実が分かってくるにつれ、この現実から仮想現実世界へ移行する時間が一番恐怖を感じるようになった。
手が震え、涙がにじむ。
恐怖を奥歯で噛み潰して手を握りこむ。
過酷な条件であろうと「肉の盾」としてこの仕事を続けることはとても楽しかった。
御神にその気持ちを正直に言ったことはないが、多分気づいているだろう。
社会でやっていく自信を無くして引きこもっていた自分が、どんどん強化されていく手ごたえは何物にも代えがたい。
暗闇の中に自分の姿だけが浮かび上がる。
つねったり、声を出してみたり、腕をなめてみたり、
五感をチェックして全てが完全に移行したことを確認する。
佐保へ連絡する。
地面を感じた。
公園の広場だろうか。
むき出しの地面が広がる。
遠くに黒い鉄の棒で構成されたベンチが見えた。
ベンチの後ろは柵の向こうに木が植えられており、その上には空が広がる。
御神がそのベンチの近くに佇んでいた。
真守は警戒しながら近寄る。
何がきっかけで攻撃に転じるかは分からない。
今日はどんな攻撃が来るのかと考えると緊張で息が荒くなった。
仮想現実の世界で無から有になる。
法律と労災が成立しないどころか、命の保証もない世界。
人権とは何か、命の保証があるということはどれぐらい恵まれているか……
そんなことを最近真面目に考えるようになった。
この世界は、実験段階なのだ。
この世界でうっかり死んでしまえば、植物状態になってしまうかもしれない。
そんな真守を守ってくれる制度はほぼないに等しい。
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恐怖を奥歯で噛み潰して手を握りこむ。
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