30 / 51
30.純情な心の少年(大嘘)
しおりを挟む
ゆっくりと目が覚める。
ここは、何処だろうか。屋根のある空洞のようだが、ダンジョンとは何処と無く雰囲気が違う。
立ち上がり、少し覗けば深い青色の空が見え、外には植物が生い茂っている。森の中の洞穴か。
「カリム。」
そう呼び声がした。シエルキューテの声だ。
「もう、傷は平気なのね。」
傷…? そう言えば、砕けていた足は治っているし、まだ少し痺れはあるが体調も悪くない。というか、今まで気絶していたのか。
「あの後、何が? それ以前に、何故僕は追われて?」
「まずはそこからなのね。カリムが追われた理由は、簡潔に言うと魔王様に見限られたからよ。器としても駒としても不十分だと判断されてね。」
あいつ、やっぱり乗っ取る気だったのか…気色悪い程に催促してたもんな…。
「カリムが気絶してからはとにかく地上を目指したわ。
入口付近にはかなりの人集りだったから、軽く蹴散らしてパニックを引き起こしたの。そのままどさくさに紛れて森に逃げ込んだのよ。
貴方の傷は、その時に攫った人の血を飲ませて治したの。」
人の血…か。今まで避けてきたけど、知らない内に飲んでしまったのか。
「まだそんな事を言ってるのね。」
「そんな事って…。肉が好きで野菜が嫌いだとかの好き嫌いのレベルじゃないんだ。僕と同種の血だぞ。」
「人間なんて、その同種で殺し合い血を流し合う生き物でしょ。本当、綺麗に育てられたのね。」
「そういう正論パンチはもういいよ。そんな理詰めで殺せるようになれば苦労なんて無いんだ。」
「苦労ね…。分かってるじゃない。今回の件、カリムが余計なことをしなければ何も無かったのよ。」
「ああ、ほんのちょっぴし後悔はしてるよ。ただ反省なんかこれっぽっちもしてないね。最善手とは言えなくても、間違ったことなんてしてないんだからな。」
深々と溜め息を吐くシエルキューテ。
「人殺しの台詞とは思えないわね…。もうすぐ夜明けよ。日差しに気を付けて。」
そんなに時間が経っていたのか。日差しが出れば移動が出来なくなるが…、大丈夫なのだろうか?
「追っ手は居ないのか?」
「居ない訳無いでしょ、多分そこらを彷徨いているわよ。まあ、出来る限りのカモフラージュはしたわ、あとは運任せよ。」
運って…不安要素の塊…。
「大丈夫よ。この奥を少し掘って地下に別の空洞を作ったの。隠れ家ってやつね。」
「奥…って言う程の奥行き無いでしょ、ここの洞穴の何処を掘ったんです。」
「そこの岩の裏よ。そこに入口があるわ。」
入口? …確かにある。けど…、ただの穴に見えるな。
「入口を大きく作ればその分目立つのよ。とにかく、この穴の先にある隠れ家は広めに作ったわ。私が先に行くから着いて来なさい。」
そう言い、身をかがめて穴をくぐっていく。が、上半身が穴の中へ入った辺りからモゾモゾとつっかえ出す。
「あれ…、さっきは通れたのだけど…。ちょっとカリム、押してくれない?」
……あれ、これ壁尻じゃね?
いやいや待て待て、ただ単に穴に頭を突っ込んで、身動きが取れなくなっているだけだ…。
…やっぱ壁尻じゃん。
「ちょっと、何変な妄想してるの。」
…そうだよな。こんな状況下で巫山戯るなんて、馬鹿か僕は。さっさと押し込もう。
「ちょっと! どこ触ってんの。バカリム、触らずに押しなさい。」
「はぁ? 人の服を問答無用でひん剥く淫乱女の癖して、何を今更生娘みたいな事言ってんだよ。てか、触らずに押せとか無茶な事言うな。」
「…そう、分かったわ。」
モゾモゾとシエルキューテが蠢く。今度は穴から頭を引き抜いて戻り出た。
「カリム、貴方が先に行きなさい。」
そうなるのか。まぁ別にいいが。
先程のシエルキューテのように頭から穴の中へと入る。
すると、シエルキューテ同様に上半身が通過した辺りで僕もつっかえた。しかし、シエルキューテの時とは違い、つっかえている身体の部位は明白だった。
「ちょっとカリム…。何よそれ…。」
「いやぁ…。ここ数日間色んな人に囲まれててね。プライベートで抜くタイミングとかが無くて、物凄く溜まってんだよ…。」
そんな時期にあんなものを見せられたら誰だってこう固くなる…と思う。僕は悪くない。僕は悪くない。
「そう、私のせいなのね…。なら私が何とかするわ。」
…あれ、これって…そういう展開か…?
「出来るだけ、痛くならないよう優しくするから…。」
あ、これそういう展開のやつだ。心做しか声も艶めかしい、多分期待していいやつだ。
「…じゃあ、この突起物を斬るわね。」
「いやおい待てよお前。それは違うだろ。」
「…一応聞くけど、何がかしら。」
「あの流れで斬り落としに来るのはおかしいだろ。…いや、どの流れでも斬り落としに来んなよ。」
「良いじゃないの、どうせ治るんだから。」
そんな会話をしながらも、着々とズボンは取り外されていく。今は丁度下半身を露出させられた所だ。
「何一つ良くねぇよ。ってかやめろ! 純情な心の少年を虐めるな。」
「…分かったわ。じゃあ、せーので押すわね。」
「え、いやちょっと待て、今押されたら聖剣が大変な──」
「せー、の!」
その瞬間、僕の身体は大きく前進し、ついで股間の辺りで何かが折れた。
ここは、何処だろうか。屋根のある空洞のようだが、ダンジョンとは何処と無く雰囲気が違う。
立ち上がり、少し覗けば深い青色の空が見え、外には植物が生い茂っている。森の中の洞穴か。
「カリム。」
そう呼び声がした。シエルキューテの声だ。
「もう、傷は平気なのね。」
傷…? そう言えば、砕けていた足は治っているし、まだ少し痺れはあるが体調も悪くない。というか、今まで気絶していたのか。
「あの後、何が? それ以前に、何故僕は追われて?」
「まずはそこからなのね。カリムが追われた理由は、簡潔に言うと魔王様に見限られたからよ。器としても駒としても不十分だと判断されてね。」
あいつ、やっぱり乗っ取る気だったのか…気色悪い程に催促してたもんな…。
「カリムが気絶してからはとにかく地上を目指したわ。
入口付近にはかなりの人集りだったから、軽く蹴散らしてパニックを引き起こしたの。そのままどさくさに紛れて森に逃げ込んだのよ。
貴方の傷は、その時に攫った人の血を飲ませて治したの。」
人の血…か。今まで避けてきたけど、知らない内に飲んでしまったのか。
「まだそんな事を言ってるのね。」
「そんな事って…。肉が好きで野菜が嫌いだとかの好き嫌いのレベルじゃないんだ。僕と同種の血だぞ。」
「人間なんて、その同種で殺し合い血を流し合う生き物でしょ。本当、綺麗に育てられたのね。」
「そういう正論パンチはもういいよ。そんな理詰めで殺せるようになれば苦労なんて無いんだ。」
「苦労ね…。分かってるじゃない。今回の件、カリムが余計なことをしなければ何も無かったのよ。」
「ああ、ほんのちょっぴし後悔はしてるよ。ただ反省なんかこれっぽっちもしてないね。最善手とは言えなくても、間違ったことなんてしてないんだからな。」
深々と溜め息を吐くシエルキューテ。
「人殺しの台詞とは思えないわね…。もうすぐ夜明けよ。日差しに気を付けて。」
そんなに時間が経っていたのか。日差しが出れば移動が出来なくなるが…、大丈夫なのだろうか?
「追っ手は居ないのか?」
「居ない訳無いでしょ、多分そこらを彷徨いているわよ。まあ、出来る限りのカモフラージュはしたわ、あとは運任せよ。」
運って…不安要素の塊…。
「大丈夫よ。この奥を少し掘って地下に別の空洞を作ったの。隠れ家ってやつね。」
「奥…って言う程の奥行き無いでしょ、ここの洞穴の何処を掘ったんです。」
「そこの岩の裏よ。そこに入口があるわ。」
入口? …確かにある。けど…、ただの穴に見えるな。
「入口を大きく作ればその分目立つのよ。とにかく、この穴の先にある隠れ家は広めに作ったわ。私が先に行くから着いて来なさい。」
そう言い、身をかがめて穴をくぐっていく。が、上半身が穴の中へ入った辺りからモゾモゾとつっかえ出す。
「あれ…、さっきは通れたのだけど…。ちょっとカリム、押してくれない?」
……あれ、これ壁尻じゃね?
いやいや待て待て、ただ単に穴に頭を突っ込んで、身動きが取れなくなっているだけだ…。
…やっぱ壁尻じゃん。
「ちょっと、何変な妄想してるの。」
…そうだよな。こんな状況下で巫山戯るなんて、馬鹿か僕は。さっさと押し込もう。
「ちょっと! どこ触ってんの。バカリム、触らずに押しなさい。」
「はぁ? 人の服を問答無用でひん剥く淫乱女の癖して、何を今更生娘みたいな事言ってんだよ。てか、触らずに押せとか無茶な事言うな。」
「…そう、分かったわ。」
モゾモゾとシエルキューテが蠢く。今度は穴から頭を引き抜いて戻り出た。
「カリム、貴方が先に行きなさい。」
そうなるのか。まぁ別にいいが。
先程のシエルキューテのように頭から穴の中へと入る。
すると、シエルキューテ同様に上半身が通過した辺りで僕もつっかえた。しかし、シエルキューテの時とは違い、つっかえている身体の部位は明白だった。
「ちょっとカリム…。何よそれ…。」
「いやぁ…。ここ数日間色んな人に囲まれててね。プライベートで抜くタイミングとかが無くて、物凄く溜まってんだよ…。」
そんな時期にあんなものを見せられたら誰だってこう固くなる…と思う。僕は悪くない。僕は悪くない。
「そう、私のせいなのね…。なら私が何とかするわ。」
…あれ、これって…そういう展開か…?
「出来るだけ、痛くならないよう優しくするから…。」
あ、これそういう展開のやつだ。心做しか声も艶めかしい、多分期待していいやつだ。
「…じゃあ、この突起物を斬るわね。」
「いやおい待てよお前。それは違うだろ。」
「…一応聞くけど、何がかしら。」
「あの流れで斬り落としに来るのはおかしいだろ。…いや、どの流れでも斬り落としに来んなよ。」
「良いじゃないの、どうせ治るんだから。」
そんな会話をしながらも、着々とズボンは取り外されていく。今は丁度下半身を露出させられた所だ。
「何一つ良くねぇよ。ってかやめろ! 純情な心の少年を虐めるな。」
「…分かったわ。じゃあ、せーので押すわね。」
「え、いやちょっと待て、今押されたら聖剣が大変な──」
「せー、の!」
その瞬間、僕の身体は大きく前進し、ついで股間の辺りで何かが折れた。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。
男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)
@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」
このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。
「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。
男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。
「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。
青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。
ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。
「カクヨム」さんが先行投稿になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる