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30.純情な心の少年(大嘘)

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 ゆっくりと目が覚める。

 ここは、何処だろうか。屋根のある空洞のようだが、ダンジョンとは何処と無く雰囲気が違う。
 立ち上がり、少し覗けば深い青色の空が見え、外には植物が生い茂っている。森の中の洞穴か。

「カリム。」

 そう呼び声がした。シエルキューテの声だ。

「もう、傷は平気なのね。」

 傷…? そう言えば、砕けていた足は治っているし、まだ少し痺れはあるが体調も悪くない。というか、今まで気絶していたのか。

「あの後、何が? それ以前に、何故僕は追われて?」

「まずはそこからなのね。カリムが追われた理由は、簡潔に言うと魔王様に見限られたからよ。器としても駒としても不十分だと判断されてね。」

 あいつ、やっぱり乗っ取る気だったのか…気色悪い程に催促してたもんな…。

「カリムが気絶してからはとにかく地上を目指したわ。
 入口付近にはかなりの人集りだったから、軽く蹴散らしてパニックを引き起こしたの。そのままどさくさに紛れて森に逃げ込んだのよ。
 貴方の傷は、その時に攫った人の血を飲ませて治したの。」

 人の血…か。今まで避けてきたけど、知らない内に飲んでしまったのか。

「まだそんな事を言ってるのね。」

「そんな事って…。肉が好きで野菜が嫌いだとかの好き嫌いのレベルじゃないんだ。僕と同種の血だぞ。」

「人間なんて、その同種で殺し合い血を流し合う生き物でしょ。本当、綺麗に育てられたのね。」

「そういう正論パンチはもういいよ。そんな理詰めで殺せるようになれば苦労なんて無いんだ。」

「苦労ね…。分かってるじゃない。今回の件、カリムが余計なことをしなければ何も無かったのよ。」

「ああ、ほんのちょっぴし後悔はしてるよ。ただ反省なんかこれっぽっちもしてないね。最善手とは言えなくても、間違ったことなんてしてないんだからな。」

 深々と溜め息を吐くシエルキューテ。

「人殺しの台詞とは思えないわね…。もうすぐ夜明けよ。日差しに気を付けて。」

 そんなに時間が経っていたのか。日差しが出れば移動が出来なくなるが…、大丈夫なのだろうか?

「追っ手は居ないのか?」

「居ない訳無いでしょ、多分そこらを彷徨いているわよ。まあ、出来る限りのカモフラージュはしたわ、あとは運任せよ。」

 運って…不安要素の塊…。

「大丈夫よ。この奥を少し掘って地下に別の空洞を作ったの。隠れ家ってやつね。」

「奥…って言う程の奥行き無いでしょ、ここの洞穴の何処を掘ったんです。」

「そこの岩の裏よ。そこに入口があるわ。」

 入口? …確かにある。けど…、ただの穴に見えるな。

「入口を大きく作ればその分目立つのよ。とにかく、この穴の先にある隠れ家は広めに作ったわ。私が先に行くから着いて来なさい。」

 そう言い、身をかがめて穴をくぐっていく。が、上半身が穴の中へ入った辺りからモゾモゾとつっかえ出す。

「あれ…、さっきは通れたのだけど…。ちょっとカリム、押してくれない?」

 ……あれ、これ壁尻じゃね?

 いやいや待て待て、ただ単に穴に頭を突っ込んで、身動きが取れなくなっているだけだ…。

 …やっぱ壁尻じゃん。

「ちょっと、何変な妄想してるの。」

 …そうだよな。こんな状況下で巫山戯るなんて、馬鹿か僕は。さっさと押し込もう。

「ちょっと! どこ触ってんの。バカリム、触らずに押しなさい。」

「はぁ? 人の服を問答無用でひん剥く淫乱女の癖して、何を今更生娘みたいな事言ってんだよ。てか、触らずに押せとか無茶な事言うな。」

「…そう、分かったわ。」

 モゾモゾとシエルキューテが蠢く。今度は穴から頭を引き抜いて戻り出た。

「カリム、貴方が先に行きなさい。」

 そうなるのか。まぁ別にいいが。
 先程のシエルキューテのように頭から穴の中へと入る。
 すると、シエルキューテ同様に上半身が通過した辺りで僕もつっかえた。しかし、シエルキューテの時とは違い、つっかえている身体の部位は明白だった。

「ちょっとカリム…。何よそれ…。」

「いやぁ…。ここ数日間色んな人に囲まれててね。プライベートで抜くタイミングとかが無くて、物凄く溜まってんだよ…。」

 そんな時期にあんなものを見せられたら誰だってこう固くなる…と思う。僕は悪くない。僕は悪くない。

「そう、私のせいなのね…。なら私が何とかするわ。」

 …あれ、これって…そういう展開か…?

「出来るだけ、痛くならないよう優しくするから…。」

 あ、これそういう展開のやつだ。心做しか声も艶めかしい、多分期待していいやつだ。

「…じゃあ、この突起物を斬るわね。」

「いやおい待てよお前。それは違うだろ。」

「…一応聞くけど、何がかしら。」

「あの流れで斬り落としに来るのはおかしいだろ。…いや、どの流れでも斬り落としに来んなよ。」

「良いじゃないの、どうせ治るんだから。」

 そんな会話をしながらも、着々とズボンは取り外されていく。今は丁度下半身を露出させられた所だ。

「何一つ良くねぇよ。ってかやめろ! 純情な心の少年を虐めるな。」

「…分かったわ。じゃあ、せーので押すわね。」

「え、いやちょっと待て、今押されたら聖剣が大変な──」

「せー、の!」

 その瞬間、僕の身体は大きく前進し、ついで股間の辺りで何かが折れた。
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