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25.子供って嫌い
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魔王様はこの先で待機と言っていたけれど、先客が居るみたいね。
「おやまあ、シエルキューテじゃないかい。まだ生きてたんだね。」
「そっちこそ、もう死んでいるかと思っていたわよ。バーラ。」
メデューサのバーラも魔王様に呼ばれたのね。
「他には居ないのかしら。」
「主力はあんたとあたし以外にはもう殆ど居ないだろう。勇者と戦って頭でも打ったのかい。」
そうだったわね。
『集まったようだな。三人組はこの先に居る。魔術師が一人と剣士が二人だ。
魔術師が司令塔兼回復役だ。上手く分裂させて一人ずつ狩れ。』
杜撰な作戦だわ。分裂させると一口に言われても、その一口が困難なのよね。
『こっちは小僧の世話で忙しい。シエルキューテにバーラ、あとは任せるぞ。』
「はい、魔王様。」
「おう!」
まともな戦力はこの単細胞メデューサと私だけなのね。予備にレミィは控えているけれど、正直あまり期待出来ないのよね。
実質的な三体二…全く、骨が折れるわね。
「シエルキューテ、あたしが先に行かせてもらうよ!」
「ええ、好きにしなさい。」
数的不利に、勇者の家名持ち、…そろそろ死ぬのかしら。
◇□◇□◇□◇
ダンジョン入口。
あーめんどくさい。久々に走って息が上がったし疲れた…。なんで私がこんなクソガキくんのお守りをしなきゃいけないのよ…。
「ねえミーネ姉ちゃん。なんで付いてきたの? やっぱりパパをやっつけた魔物を見てみたいの?」
「はぁ…君達クソガキくんのお守りよ。学園の寮を抜け出したって聞いたからわざわざ駆け付けてあげたのよ。」
それを言われて、クソガキAことベル・A・シーリスはムスッと顔を顰める。
「子供扱いするんじゃないよ! 俺はちゃんと強いんだからな!」
続けてクソガキBことルビ・シーリスもレスバに加勢する。
「そーだそーだ。ミーネ姉ちゃんの力を借りなくても魔物くらい倒せるし。」
こっちだって好きで来てる訳じゃないわよ! じゃんけんで負けたの。
勉強しようと思ってたのに、こんなつまらない事に巻き込まれるなんてとんだ災難よ。
「はいはい。で、君達は帰るの? 進むの?」
「「進むよ!!」」
二人揃ってそんなことを…、ってもう行ってるし。
…めんどくさいな。このまま帰ろうかな…。いや流石に置いて帰ると危ないか。じゃん負けなんだし、ちゃんとついて行くか…。
「ねえミーネ姉ちゃん。あれって敵かな?」
敵…ああ、あの大きな蟻ね。これが魔物というやつなのかもね。
「ミーネ姉ちゃんは手を出しちゃダメだかんね!」
「はいはい。わかりましたよー。」
…ふーん。危なかったら手を貸そうと思ったけど、口だけじゃないのね。案外戦えてるわ。
剣に関してはよく分からないのだけど、素人目から見てもなかなかいい線いってそう。二人ともこれで十四歳なら大したものかも。
「大丈夫そうだし、やっぱり帰ろうかな…。」
でも一応保護者だし、ちゃんと帰るまで面倒見るか…。
「ミーネ姉ちゃん。何ボーッとしてるのさ。置いてくからね!」
「はいはい。今行きますよー。」
今度からは暇潰し兼勉強用の本を持ってこようかな。この二人なら大丈夫そうだし。
「痛!」
「え、ちょっとベルくん? 大丈夫?」
ほんの少し目を離した隙に、ベルくんの足に二の腕くらい大きな魔物の牙が刺さっていた。
魔物は絶命しているようだけど、牙が深くまで刺さって抜けないみたいね。
「ど、どどうしよう。ズキズキ痛むし、血が止まんないよミーネ姉ちゃん。」
「ただの軽傷よ。とりあえず、牙を抜くからルビくん抑えてて。」
そう言うと、ルビくんは足をギュッと抑える。
うんうん。ちゃんと抑えられてそうね。
「じゃあ、抜いてあげるからちゃんと我慢しなさいよ。」
「うん。ミーネ姉ちゃん、優しく抜いてよ。」
ちょっと待った。今のやり取りなんか卑猥だな。…何言ってんだ私。
「せーので抜くからね。せーの!」
「え、ちょっと待…ッ痛!」
うわ。出血酷いな…。ルビくんちゃんと抑えて無いな。
「ルビくんもっと力込めて抑えなさい。」
よしよし、まずは傷口を洗うかな。その後は菌とか付いてたら大変だし消毒でもしてやるか。
「《水玉》。」
「痛いよ! もっと優しくしてよ。」
無視無視、さて次は消毒だけど…、そんな魔術教わってないなぁ。まあいっか。
「《蝕毒》。」
「ぅぐっ、ぐるじいぃ。」
ふう。ベルくんごと毒に侵したけど、牙についてた菌とかはこれで消毒されたかな。…多分。
さてと、早く解毒しないとベルくんも死ぬから急がないとね。
「え! 死ぬの!」
ルビくんがそう反応した。
ああ、そういえば先天的なもので心を読めるんだったな。完全に忘れてたわ。
「ほったらかしたらの話だから大丈夫大丈夫。《回復》。」
「なんか、よくわかんないけどポカポカする。」
よしよし、終わりだな。
「さあ、クソガキくん達。これでわかったでしょう。ここは危ないからさっさと帰──」
「ミーネ姉ちゃん! 頭イカれてるんじゃないか!」
「そーだそーだ。いくら消毒の為とは言え、やりすぎだよ!」
な! 折角助けてあげたのに…。
「うっさい。助かったんだから良いでしょ!」
…って、もう先に行ってるし。というか私から逃げてるし。
あー、なんかすっごいめんどくさい。このまま帰ろうかな…。
やっぱり子供って嫌いだわ。
「おやまあ、シエルキューテじゃないかい。まだ生きてたんだね。」
「そっちこそ、もう死んでいるかと思っていたわよ。バーラ。」
メデューサのバーラも魔王様に呼ばれたのね。
「他には居ないのかしら。」
「主力はあんたとあたし以外にはもう殆ど居ないだろう。勇者と戦って頭でも打ったのかい。」
そうだったわね。
『集まったようだな。三人組はこの先に居る。魔術師が一人と剣士が二人だ。
魔術師が司令塔兼回復役だ。上手く分裂させて一人ずつ狩れ。』
杜撰な作戦だわ。分裂させると一口に言われても、その一口が困難なのよね。
『こっちは小僧の世話で忙しい。シエルキューテにバーラ、あとは任せるぞ。』
「はい、魔王様。」
「おう!」
まともな戦力はこの単細胞メデューサと私だけなのね。予備にレミィは控えているけれど、正直あまり期待出来ないのよね。
実質的な三体二…全く、骨が折れるわね。
「シエルキューテ、あたしが先に行かせてもらうよ!」
「ええ、好きにしなさい。」
数的不利に、勇者の家名持ち、…そろそろ死ぬのかしら。
◇□◇□◇□◇
ダンジョン入口。
あーめんどくさい。久々に走って息が上がったし疲れた…。なんで私がこんなクソガキくんのお守りをしなきゃいけないのよ…。
「ねえミーネ姉ちゃん。なんで付いてきたの? やっぱりパパをやっつけた魔物を見てみたいの?」
「はぁ…君達クソガキくんのお守りよ。学園の寮を抜け出したって聞いたからわざわざ駆け付けてあげたのよ。」
それを言われて、クソガキAことベル・A・シーリスはムスッと顔を顰める。
「子供扱いするんじゃないよ! 俺はちゃんと強いんだからな!」
続けてクソガキBことルビ・シーリスもレスバに加勢する。
「そーだそーだ。ミーネ姉ちゃんの力を借りなくても魔物くらい倒せるし。」
こっちだって好きで来てる訳じゃないわよ! じゃんけんで負けたの。
勉強しようと思ってたのに、こんなつまらない事に巻き込まれるなんてとんだ災難よ。
「はいはい。で、君達は帰るの? 進むの?」
「「進むよ!!」」
二人揃ってそんなことを…、ってもう行ってるし。
…めんどくさいな。このまま帰ろうかな…。いや流石に置いて帰ると危ないか。じゃん負けなんだし、ちゃんとついて行くか…。
「ねえミーネ姉ちゃん。あれって敵かな?」
敵…ああ、あの大きな蟻ね。これが魔物というやつなのかもね。
「ミーネ姉ちゃんは手を出しちゃダメだかんね!」
「はいはい。わかりましたよー。」
…ふーん。危なかったら手を貸そうと思ったけど、口だけじゃないのね。案外戦えてるわ。
剣に関してはよく分からないのだけど、素人目から見てもなかなかいい線いってそう。二人ともこれで十四歳なら大したものかも。
「大丈夫そうだし、やっぱり帰ろうかな…。」
でも一応保護者だし、ちゃんと帰るまで面倒見るか…。
「ミーネ姉ちゃん。何ボーッとしてるのさ。置いてくからね!」
「はいはい。今行きますよー。」
今度からは暇潰し兼勉強用の本を持ってこようかな。この二人なら大丈夫そうだし。
「痛!」
「え、ちょっとベルくん? 大丈夫?」
ほんの少し目を離した隙に、ベルくんの足に二の腕くらい大きな魔物の牙が刺さっていた。
魔物は絶命しているようだけど、牙が深くまで刺さって抜けないみたいね。
「ど、どどうしよう。ズキズキ痛むし、血が止まんないよミーネ姉ちゃん。」
「ただの軽傷よ。とりあえず、牙を抜くからルビくん抑えてて。」
そう言うと、ルビくんは足をギュッと抑える。
うんうん。ちゃんと抑えられてそうね。
「じゃあ、抜いてあげるからちゃんと我慢しなさいよ。」
「うん。ミーネ姉ちゃん、優しく抜いてよ。」
ちょっと待った。今のやり取りなんか卑猥だな。…何言ってんだ私。
「せーので抜くからね。せーの!」
「え、ちょっと待…ッ痛!」
うわ。出血酷いな…。ルビくんちゃんと抑えて無いな。
「ルビくんもっと力込めて抑えなさい。」
よしよし、まずは傷口を洗うかな。その後は菌とか付いてたら大変だし消毒でもしてやるか。
「《水玉》。」
「痛いよ! もっと優しくしてよ。」
無視無視、さて次は消毒だけど…、そんな魔術教わってないなぁ。まあいっか。
「《蝕毒》。」
「ぅぐっ、ぐるじいぃ。」
ふう。ベルくんごと毒に侵したけど、牙についてた菌とかはこれで消毒されたかな。…多分。
さてと、早く解毒しないとベルくんも死ぬから急がないとね。
「え! 死ぬの!」
ルビくんがそう反応した。
ああ、そういえば先天的なもので心を読めるんだったな。完全に忘れてたわ。
「ほったらかしたらの話だから大丈夫大丈夫。《回復》。」
「なんか、よくわかんないけどポカポカする。」
よしよし、終わりだな。
「さあ、クソガキくん達。これでわかったでしょう。ここは危ないからさっさと帰──」
「ミーネ姉ちゃん! 頭イカれてるんじゃないか!」
「そーだそーだ。いくら消毒の為とは言え、やりすぎだよ!」
な! 折角助けてあげたのに…。
「うっさい。助かったんだから良いでしょ!」
…って、もう先に行ってるし。というか私から逃げてるし。
あー、なんかすっごいめんどくさい。このまま帰ろうかな…。
やっぱり子供って嫌いだわ。
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