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18.実家
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ダンジョンの出入口に到着した。
前もここに来たが、あの時はフードだけだったので素早く抜けた。
しかし、今は顔を覆い隠している為、魔物だとバレる可能性はほぼ無い。
あとはお金だな…。加工のしやすい需要のある素材ならば少なくても高値で取引出来るはずだ。
だから魔物の死骸を持って来た。急所に一突きで目立った外傷が少ない死骸だ。
『カリム君。殺すのは嫌なのでは?』
「人はね。何でもかんでも殺して傷付く程僕はセンチメンタルじゃない。道端の虫を踏んで悲しむ奴が居るのか?」
『都合のいい解釈だな。偶然殺すのと意図的に殺すのは全くもって別物だぞ。』
「前者でも後者でも変わらんよ。虫は無視だ。」
『流石はアルマの血筋だね。屑も引き継いでるらしい。』
「鬱陶しいぞ。捨てていいか?」
『いいよ。カリム君が困るだけだ。』
…。
少し考えて、捨てるのはやめといた。一時の感情で魔王を捨てるのは勿体無い気がする。
とりあえず、この死骸を売ろう。
「いらっしゃい。あんたは大丈夫だったんだね。」
「大丈夫って何がだ?」
「さっきね。勇者様が瀕死で転移して来たんだよ。なんとか一命を取り留めたけど寝たきりの状態だとか。」
寝たきりか。王女を殺すなら早めに動いた方がいいかもな。
「その話は興味深いが、今はこいつを売りたいんだ。」
「ほう。こいつはなかなか上等ですね。」
「で、いくらだ?」
「ざっと金貨2,3枚かと、いや状態がいいから3,4枚か?」
「ふざけるな。この質の相場は10枚は下らない筈だろ。」
それを聞いた受付人は舌打ちをして、露骨に態度を変えた。
「なんだよ。知ってんのかいあんた。まあいい12枚だ。」
「いや20枚だ。状態が良いんだろ?」
「あーはいはい。負けだ負けだ。後がつっかえてるから20枚でいいよ。」
と言って、渡してきたのは18枚だった。
ぼったくられているが、まあ金が欲しくなればまたダンジョンに入ればいいだろう。
それよりも今は行きたい場所があった。
僕の家だ。
叔父はどうしているだろうか? そんな疑問き答えたのは腐敗臭だった。
家の扉を開けると、その臭いは更に数段強まった。
そしてリビングには、叔母さんと、叔父さんが居た。
『ふーん。殺されてるね。』
「叔父さんは自殺か。」
『結構落ち着いてるんだね。悲しくないの?』
「…愚問過ぎるだろ、それ。」
僕は庭へと出て、大きめのスコップのようなものを作って穴を掘る。
『何をしてる。』
「墓を作ってる。」
『そんな事をしてなんの意味がある。』
「もうすぐ冬だ。屋内とは言えこのままじゃ二人が凍える。」
『もう冷たくなってるだろ。』
「冷たいのはお前だよ。」
二人を穴へと寝かせて土を被せる。叔父さんには昔から好きだった酒を持たせた。
そして、そこらに落ちていた岩をちょうどいい大きさに砕いて、丁寧に文字を刻んだ。「Bella , Hardy」と。
「ちょっと家の中を掃除するよ。叔父さんと叔母さんが可哀想だ。」
『ボロ屋は掃除してもボロ屋だぞ。』
指輪を無視して掃除を始める。
バケツを持ち街へと降りて井戸から水を汲み家へと戻る。床に固まった血を濡れた雑巾で拭き取る。
水が汚れれば捨てて、また街へと降りて水を汲んで戻って、汚れたら捨てて、また汲んで。それを何度も、何度も繰り返した。
『もう日が昇るぞ。』
遂には終わらなかった。
血はまだ元の半分以上も残っている。
「日に当たったらどうなる。」
『即死じゃないがいずれ死ぬ。少しづつ弱ってく感じだ。服を着てても無駄だぞ。大人しくこの家で寝てろ。』
そう言われて、叔父さんの揺り椅子に腰をかけた。
誰も居ない暗い空っぽのリビングを見ていると、急に喪失感に襲われて涙が溢れてくる。
『どうした? 水を汲みに行け無いからって目から出すなよ。』
「この揺り椅子は叔父さんの物なんだ。」
『急になんだよ。』
「子供の頃、叔父さんの膝の上で、叔父さんと一緒に揺れていた。」
『だからなんだよ。』
「…お前に話しても無駄そうだ。ただ一つだけ言うなら…。」
『言うなら?』
「第二王女だけは殺さなきゃダメだ。改めてそう思った。」
『そりゃいい心掛けだ。その為にはレベルが必要だな!』
「何故そこまでレベル上げさせようとする? 僕の身体が目的か?」
『いいや、勇者を殺して欲しいだけさ。』
今日、散々話して気が付いた。僕はこいつが嫌いだ。いちいち嫌味ったらしくうざったい。
「本当にそれだけか?」
『…いや、もう一つある。前に力は有限と言ったろ?』
「あー。言ってたな。」
『レベルだけ上げてダンジョンに潜らなくなった奴が居るんだよ。そいつらから力を取り立てたい。』
「つまりはどういう事だ。」
『レベル持ちを殺せ。私は力が回収出来て、お前はレベルが上げられる。win-winの関係ってやつさ。』
「だから、殺しはやらねぇよ。相手が賊とかなら別だがな。」
指輪は不気味に返事をし、頭のゾワゾワは消える。
そして、夜が明けて僕は眠りについた。
前もここに来たが、あの時はフードだけだったので素早く抜けた。
しかし、今は顔を覆い隠している為、魔物だとバレる可能性はほぼ無い。
あとはお金だな…。加工のしやすい需要のある素材ならば少なくても高値で取引出来るはずだ。
だから魔物の死骸を持って来た。急所に一突きで目立った外傷が少ない死骸だ。
『カリム君。殺すのは嫌なのでは?』
「人はね。何でもかんでも殺して傷付く程僕はセンチメンタルじゃない。道端の虫を踏んで悲しむ奴が居るのか?」
『都合のいい解釈だな。偶然殺すのと意図的に殺すのは全くもって別物だぞ。』
「前者でも後者でも変わらんよ。虫は無視だ。」
『流石はアルマの血筋だね。屑も引き継いでるらしい。』
「鬱陶しいぞ。捨てていいか?」
『いいよ。カリム君が困るだけだ。』
…。
少し考えて、捨てるのはやめといた。一時の感情で魔王を捨てるのは勿体無い気がする。
とりあえず、この死骸を売ろう。
「いらっしゃい。あんたは大丈夫だったんだね。」
「大丈夫って何がだ?」
「さっきね。勇者様が瀕死で転移して来たんだよ。なんとか一命を取り留めたけど寝たきりの状態だとか。」
寝たきりか。王女を殺すなら早めに動いた方がいいかもな。
「その話は興味深いが、今はこいつを売りたいんだ。」
「ほう。こいつはなかなか上等ですね。」
「で、いくらだ?」
「ざっと金貨2,3枚かと、いや状態がいいから3,4枚か?」
「ふざけるな。この質の相場は10枚は下らない筈だろ。」
それを聞いた受付人は舌打ちをして、露骨に態度を変えた。
「なんだよ。知ってんのかいあんた。まあいい12枚だ。」
「いや20枚だ。状態が良いんだろ?」
「あーはいはい。負けだ負けだ。後がつっかえてるから20枚でいいよ。」
と言って、渡してきたのは18枚だった。
ぼったくられているが、まあ金が欲しくなればまたダンジョンに入ればいいだろう。
それよりも今は行きたい場所があった。
僕の家だ。
叔父はどうしているだろうか? そんな疑問き答えたのは腐敗臭だった。
家の扉を開けると、その臭いは更に数段強まった。
そしてリビングには、叔母さんと、叔父さんが居た。
『ふーん。殺されてるね。』
「叔父さんは自殺か。」
『結構落ち着いてるんだね。悲しくないの?』
「…愚問過ぎるだろ、それ。」
僕は庭へと出て、大きめのスコップのようなものを作って穴を掘る。
『何をしてる。』
「墓を作ってる。」
『そんな事をしてなんの意味がある。』
「もうすぐ冬だ。屋内とは言えこのままじゃ二人が凍える。」
『もう冷たくなってるだろ。』
「冷たいのはお前だよ。」
二人を穴へと寝かせて土を被せる。叔父さんには昔から好きだった酒を持たせた。
そして、そこらに落ちていた岩をちょうどいい大きさに砕いて、丁寧に文字を刻んだ。「Bella , Hardy」と。
「ちょっと家の中を掃除するよ。叔父さんと叔母さんが可哀想だ。」
『ボロ屋は掃除してもボロ屋だぞ。』
指輪を無視して掃除を始める。
バケツを持ち街へと降りて井戸から水を汲み家へと戻る。床に固まった血を濡れた雑巾で拭き取る。
水が汚れれば捨てて、また街へと降りて水を汲んで戻って、汚れたら捨てて、また汲んで。それを何度も、何度も繰り返した。
『もう日が昇るぞ。』
遂には終わらなかった。
血はまだ元の半分以上も残っている。
「日に当たったらどうなる。」
『即死じゃないがいずれ死ぬ。少しづつ弱ってく感じだ。服を着てても無駄だぞ。大人しくこの家で寝てろ。』
そう言われて、叔父さんの揺り椅子に腰をかけた。
誰も居ない暗い空っぽのリビングを見ていると、急に喪失感に襲われて涙が溢れてくる。
『どうした? 水を汲みに行け無いからって目から出すなよ。』
「この揺り椅子は叔父さんの物なんだ。」
『急になんだよ。』
「子供の頃、叔父さんの膝の上で、叔父さんと一緒に揺れていた。」
『だからなんだよ。』
「…お前に話しても無駄そうだ。ただ一つだけ言うなら…。」
『言うなら?』
「第二王女だけは殺さなきゃダメだ。改めてそう思った。」
『そりゃいい心掛けだ。その為にはレベルが必要だな!』
「何故そこまでレベル上げさせようとする? 僕の身体が目的か?」
『いいや、勇者を殺して欲しいだけさ。』
今日、散々話して気が付いた。僕はこいつが嫌いだ。いちいち嫌味ったらしくうざったい。
「本当にそれだけか?」
『…いや、もう一つある。前に力は有限と言ったろ?』
「あー。言ってたな。」
『レベルだけ上げてダンジョンに潜らなくなった奴が居るんだよ。そいつらから力を取り立てたい。』
「つまりはどういう事だ。」
『レベル持ちを殺せ。私は力が回収出来て、お前はレベルが上げられる。win-winの関係ってやつさ。』
「だから、殺しはやらねぇよ。相手が賊とかなら別だがな。」
指輪は不気味に返事をし、頭のゾワゾワは消える。
そして、夜が明けて僕は眠りについた。
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