【完結】旦那様、溺愛するのは程々にお願いします♥️仮面の令嬢が辺境伯に嫁いで、幸せになるまで

春野オカリナ

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最後の審判

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 王宮での建国記念パーティーは2日間あり、一日目は国内の貴族らで行い。

 2日目は国交のある諸外国を招いて行う。

 その為、2日目は伯爵家以上の貴族しか招待されない。
 
 だが、今年は辺境伯が不在で会場に集まった貴族から不安の声が上がっていた。

 それもそのはず、辺境伯は国にとっては重要な場所

 次の辺境伯が誰かを探りあっていた。

 ラッパの吹き鳴らす音と共に王族が入場する。

 皆が注目したのは、その中にウィストン・ダンドーラとエスコートされている若い女性。

 「ねえ、あの方はどなた?」

 「見たことがない」

 「お美しい方ね」

 「月の女神の様だ」

 口々に彼女を褒め称える言葉が出ている。

 「静粛に、『ビクトリア女王』からお言葉を賜ります」

 その場にいた貴族は国王の隣の老女に目をやる。

 「皆にこの場で宣言する。ここにいるウィストン・ダンドーラは妾の第二王子の息子である。その隣にいるのはウィストンの娘だ。これにより大公家を復興させる」

 どよめきが会場に起こる中

 「お待ち下さい。いきなりそのような事を言われましても、そのウィストン・ダンドーラ侯爵が陛下のお孫様だと言う確たる証拠はおありですかな」

 「ふははは、そうくると思っていたぞ。これをみるが良い」

 女王は、ある物を三つ持ってこさせた。

 それは【血液鑑定装置】

 貴族の血統を調べるための魔導具

 女王と侯爵は小指を針で刺し、血を滴らせた。

 血は混じり合い魔導具の色が白く光った。

 お互いが血縁者である証拠である。

 次にジョゼフィーネと侯爵が同じ様に小指を刺す。

 やはり同じ反応がある。

 会場にいた貴族全員が証人となり、鑑定の結果は親族であると証明された。

 しかし、ハウエル侯爵はまだ納得がいかないようだったが、異論は赦されない状況。

 そして新しいアルバトロス大公と令嬢の誕生の瞬間だった。

 それぞれが乾杯用にグラスを手にした瞬間、それは起こる。

 侍女の一人がグラスをハウエル侯爵から滑らせ、侯爵は指を切った。

 そして、風が会場に巻き上がり、見ると黒い髪の美しい男の姿がある。

 ディル・アン・グレイ

 皆がこの若い魔術師を見ている。

 彼は侍女の持っている血とビクトリア女王の血を鑑定魔導具に入れた途端、真っ黒に染まった。

 鑑定は他人だと示され、全員がその場に佇んでいる。

 「こ、これは何かの間違いだ…こんなはずはない」

 ハウエル侯爵は知らなかった。

 自分がビクトリア女王と血が繋がっていない事を

 これはビクトリア女王の夫が仕掛けた事だった。

 死んだ本当の義弟の血とハウエル前侯爵の血を入れ換えたのだ。

 こんな事は国王以外では出来ない事

 その事実が今明らかにされた。

 「ハウエル侯爵よ。数々の罪を償う時がきたな。王族殺しの罪は断頭台行きだ。侯爵家は断絶。領地はアルバトロス大公家が所有するものとする。一族は男女共に死罪。例え子供であっても例外はない」
 
 女王の冷たい言葉が会場に木霊する。

 侯爵は青い顔を白くさせながらその場に倒れ込んだ。
 
 (嗚呼、夫が謝りたいと言っていたのはこの事だったのか)

 女王は静かに涙を流した。

 もっと早く知っていれば、子供を失わずにすんだ事をひたすら後悔していたのだった。

 そして、国王の命で騎士らに牢に入れられた。

 最後に

 「皆に残念な知らせがある。第三王子デュランだが、実は余の子供ではない。側妃と親衛隊との子供なのだ。これにより王籍から外し、平民とする。そして、当日疑いをかけられたモーリスの名誉を回復させる」

 会場中のざわめきの中

 「ありがとうございます。国王陛下の寛大な処置に感謝し、辺境にて静かに暮らします」

 第三王子デュランはこの事を前もって、ジョゼフィーネ宛に手紙をしたためていた。

 皆が冷たい目で彼を見ている。

 会場を出た後、デュランに声をかけたのは、他でもないエルリックだった。

 「なあ、あんた本当にこれで良かったのかよ」
 
 「嗚呼、僕は本当の王子ではないからね。いつかは明かさなければならない真実だよ」

 「でも、ジョゼフィーネを陰ながら守っていたのも事実だろう」

 「君の様な大きな力はないから、義妹から嫌がらせを受けない様にした位だよ。大したことじゃない」

 「その大したことが出来ない人間の方が多いんだけどな。まあ、辺境はいい所だ。心配しなくても安心して暮らせるよ」

 「ありがとう、君もジョゼフィーネ嬢を大切にしてあげて」

 「言われなくてもそうするよ」

 「…そうだね。君となら」

 デュランは静かに王宮の門迄歩いていく。

 門には辺境行きの馬車が待っていた。
 
 ふと後ろを振り替えると兄達が見送っている。

 表情は月の逆行で見えなかったが、そのシルエットは何処か寂しそうに感じた。

 「兄上、いえ王太子殿下、第二王子殿下、今までお世話になりました。僕は遠い地から貴殿方の治世の平穏を祈ります」

 静かに頭を下げて馬車に乗った。

 彼を乗せて馬車は辺境へと走り去る。

 

 

 







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