49 / 61
君の中にも
しおりを挟む
小さな小瓶を揺らしながら、俺はそれをクリーク公爵に渡した。
「この薬の開発には随分前からやってた。これはクリーク公爵家の為にヴィオレットが行っていた事だ」
「道理で、ジョゼフィーネを寸なり宿せたはずた。普通では考えられない」
「どういう事ですか?伯父様」
「それは…クリーク公爵家の人間は子供を授かるのが難しいのだよ」
「えっ、じゃあお母様は」
「この薬を自分で試していたんだよ。まだ改良途中の試作品をね。そして君を身籠った」
「何故?そんなことをしなくてはいけないのですか?」
「それはね。ジョゼフィーネ、クリーク公爵家の宿命だよ。毒の公爵家と呼ばれているのは知っているだろう?長年の毒の影響で子供が出来にくい体質になっているんだ。私も何とか二人だった。しかもなかなか出来なくて、妻には辛い思いをさせてしまった」
「私もそうなのですね」
「こればかりは仕方の無いことだ。王家に使える身として公爵家は存在するのだから、王族を守る為には必要な事だよ」
「でもジョーは、大丈夫だよ。初夜に俺の魔力石を飲んだだろう。覚えていない?」
ジョゼフィーネは、首を傾げた。
「ほら、こういうの」
俺は、小さな丸い石を見せた。
「あっ、これがそうにですか?」
「そう、これをジョーに飲ませると俺を制御出来るし、俺と交われば俺の魔力に反応して子供も出来る。だから安心して、子供を早く作らなくても暫くは、ジョーを堪能したいから、俺としては今のままでいいかな」
「…」
真っ赤になって俯くジョーの旋毛に唇を落とした。
「話を戻すけど、この妊娠薬と媚薬に共通点があるんだよ。同じ東洋の薬草が使われていて薬草の量によって用途が変わるんだ。つまり毒薬も作れる。殺すのは卵と種だけどね。人を殺せる程の毒ではない。でも妊婦が飲むと流産のショックで死亡する場合もある。ダンドーラ侯爵に使われたのは別の薬草も入っていた。ヴィオレットに使われたのは流産を引き起こす程の強い物だった」
「じゃあ、ヴィオレットはどうやって飲まされたんだ?」
「彼女は飲んだんじゃなくて吸ったんだよ。彼女の部屋に花瓶があった。侍女に扮したあの女が予め用意した花を花瓶に生けたんだろう。花瓶から薬品の臭いが微かにした。花は別の侍女が処分した」
「やっぱり、カーミラ・アンサンブルがやったのか?」
「ああ、もう既に証拠も証人もいるよ。それにアンサンブル侯爵はもう手遅れだ。この媚薬を長く服用すれば麻薬と同じで廃人になる」
「まさか、これをあの男に使っていたのか」
「そうだよ。カーミラが侯爵に飲ませていた。目撃者の話だとカーミラの事をヴィオレットと呼んでいたと」
「そんな…」
ジョゼフィーネは、顔を青くしていた。
他の者も誰も声を出せなかった。幻覚症状を引き起こす程の媚薬を愛する男に飲ませ続ける女の心情に寒気を感じた。
果たしてそれ程まで、あの男が欲しかったのだろうか?
「この薬の開発には随分前からやってた。これはクリーク公爵家の為にヴィオレットが行っていた事だ」
「道理で、ジョゼフィーネを寸なり宿せたはずた。普通では考えられない」
「どういう事ですか?伯父様」
「それは…クリーク公爵家の人間は子供を授かるのが難しいのだよ」
「えっ、じゃあお母様は」
「この薬を自分で試していたんだよ。まだ改良途中の試作品をね。そして君を身籠った」
「何故?そんなことをしなくてはいけないのですか?」
「それはね。ジョゼフィーネ、クリーク公爵家の宿命だよ。毒の公爵家と呼ばれているのは知っているだろう?長年の毒の影響で子供が出来にくい体質になっているんだ。私も何とか二人だった。しかもなかなか出来なくて、妻には辛い思いをさせてしまった」
「私もそうなのですね」
「こればかりは仕方の無いことだ。王家に使える身として公爵家は存在するのだから、王族を守る為には必要な事だよ」
「でもジョーは、大丈夫だよ。初夜に俺の魔力石を飲んだだろう。覚えていない?」
ジョゼフィーネは、首を傾げた。
「ほら、こういうの」
俺は、小さな丸い石を見せた。
「あっ、これがそうにですか?」
「そう、これをジョーに飲ませると俺を制御出来るし、俺と交われば俺の魔力に反応して子供も出来る。だから安心して、子供を早く作らなくても暫くは、ジョーを堪能したいから、俺としては今のままでいいかな」
「…」
真っ赤になって俯くジョーの旋毛に唇を落とした。
「話を戻すけど、この妊娠薬と媚薬に共通点があるんだよ。同じ東洋の薬草が使われていて薬草の量によって用途が変わるんだ。つまり毒薬も作れる。殺すのは卵と種だけどね。人を殺せる程の毒ではない。でも妊婦が飲むと流産のショックで死亡する場合もある。ダンドーラ侯爵に使われたのは別の薬草も入っていた。ヴィオレットに使われたのは流産を引き起こす程の強い物だった」
「じゃあ、ヴィオレットはどうやって飲まされたんだ?」
「彼女は飲んだんじゃなくて吸ったんだよ。彼女の部屋に花瓶があった。侍女に扮したあの女が予め用意した花を花瓶に生けたんだろう。花瓶から薬品の臭いが微かにした。花は別の侍女が処分した」
「やっぱり、カーミラ・アンサンブルがやったのか?」
「ああ、もう既に証拠も証人もいるよ。それにアンサンブル侯爵はもう手遅れだ。この媚薬を長く服用すれば麻薬と同じで廃人になる」
「まさか、これをあの男に使っていたのか」
「そうだよ。カーミラが侯爵に飲ませていた。目撃者の話だとカーミラの事をヴィオレットと呼んでいたと」
「そんな…」
ジョゼフィーネは、顔を青くしていた。
他の者も誰も声を出せなかった。幻覚症状を引き起こす程の媚薬を愛する男に飲ませ続ける女の心情に寒気を感じた。
果たしてそれ程まで、あの男が欲しかったのだろうか?
2
お気に入りに追加
1,143
あなたにおすすめの小説

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる