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特別な呼び名
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静寂が駆け抜けるなかジョゼフィーネは、ふと思った。
「あのエルリック様?ここは何処でしょう、何だか別世界の様な…」
そう、ここには侍女も護衛もいない。最初は、曾祖母が内密な話をするために席を外させているのかと思ったが、不自然な程の静寂さ、風もなく、木漏れ日の位置も変わっていない。何の変化もないのだ。まるで時が止まったかの様な空間。
「ああ、ここは絵画の中の世界だよ」
その言葉にダンドーラ侯爵、クリーク公爵とジョゼフィーネは驚いた。だが、曾祖母は何の反応も示さなかった。当たり前の光景を楽しんでいる様にも見えた。
「爺さんが婆さんに息抜きさせるために作った秘密の場所だよ」
「秘密の場所?」
「ある国に物に空間魔法を作る魔法使いがいるんだ。爺さんがその人に頼んで作ったもらった物だよ。他にも王宮には、婆さんの安全のための仕掛けがあちこちにあるよ。その一つが『秘密の花園』だよ」
『秘密の花園』と呼ばれる場所は、かつて『ビクトリア女王』が子供達を密かに育てた場所である。腹心の侍女や護衛騎士しか立ち入れない不思議な場所だ。
だが、今はない。エドワードが亡くなって空間は、閉ざされたのだ。
「先程から、陛下に対して不敬な言葉を次々と」
横から口を出したのは、クリーク公爵だった。
「婆さんは、婆さんだよ。だって、爺さんの唯一だから、婆さんが望んだらこんなところにはいないさ。爺さんから聞いてないのか?」
「何をじゃ?グレ…エドワードとはただの主従関係で何もない」
「今、爺さんの呼び方を間違えたよね」
「…」
そのエルリックの言葉に皆、女王の表情が変わるのを見た。
「どういうことですか?エルリック様」
「つまり、爺さんは婆さんに自分の真名を教えてたんだよ。特別な人にしか教えない本当の名前をね。だから、爺さんの唯一なんだよ」
「そんな話をしている場合では、ないだろう」
『ビクトリア女王』は、話の矛先を折ろうとしたが、エルリックはそうさせなかった。
「大事な話だよ。ジョゼフィーネにも関係しているし、ダンドーラ侯爵にも関わっているからな」
エルリックは、真剣な顔をしている。
「それは解ったが何故、ジョゼフィーネに本当の姿を見せない?ここへ来る時は本来の姿で来ると約束したはずであろう」
(本来の姿?)
「俺は、あの姿は好きじゃない」
「子供みたいな事をぬかすな。いい年をした大人が」
『ビクトリア女王』とエルリックのやりとりは、まるで本当の孫と祖母の様だとジョゼフィーネは感じていた。
「私もエルリック様の本当の姿がみたいです」
と口に出すと「ジョゼフィーネが言うなら」渋々ながら、変身術を解いていった。
其処に現れた姿に
「「お、お前…ディル・アン・グレイか?」」
ダンドーラ侯爵とクリーク公爵が揃って声を上げた。
【ディル・アン・グレイ】
それは、史上最年少の魔導調査官として知られる『黒の魔導師』と呼ばれる人の名前だった。
(どうやら、私の夫には、まだまだ秘密が多そうね)
ジョゼフィーネは、心の中で呟いた。
「あのエルリック様?ここは何処でしょう、何だか別世界の様な…」
そう、ここには侍女も護衛もいない。最初は、曾祖母が内密な話をするために席を外させているのかと思ったが、不自然な程の静寂さ、風もなく、木漏れ日の位置も変わっていない。何の変化もないのだ。まるで時が止まったかの様な空間。
「ああ、ここは絵画の中の世界だよ」
その言葉にダンドーラ侯爵、クリーク公爵とジョゼフィーネは驚いた。だが、曾祖母は何の反応も示さなかった。当たり前の光景を楽しんでいる様にも見えた。
「爺さんが婆さんに息抜きさせるために作った秘密の場所だよ」
「秘密の場所?」
「ある国に物に空間魔法を作る魔法使いがいるんだ。爺さんがその人に頼んで作ったもらった物だよ。他にも王宮には、婆さんの安全のための仕掛けがあちこちにあるよ。その一つが『秘密の花園』だよ」
『秘密の花園』と呼ばれる場所は、かつて『ビクトリア女王』が子供達を密かに育てた場所である。腹心の侍女や護衛騎士しか立ち入れない不思議な場所だ。
だが、今はない。エドワードが亡くなって空間は、閉ざされたのだ。
「先程から、陛下に対して不敬な言葉を次々と」
横から口を出したのは、クリーク公爵だった。
「婆さんは、婆さんだよ。だって、爺さんの唯一だから、婆さんが望んだらこんなところにはいないさ。爺さんから聞いてないのか?」
「何をじゃ?グレ…エドワードとはただの主従関係で何もない」
「今、爺さんの呼び方を間違えたよね」
「…」
そのエルリックの言葉に皆、女王の表情が変わるのを見た。
「どういうことですか?エルリック様」
「つまり、爺さんは婆さんに自分の真名を教えてたんだよ。特別な人にしか教えない本当の名前をね。だから、爺さんの唯一なんだよ」
「そんな話をしている場合では、ないだろう」
『ビクトリア女王』は、話の矛先を折ろうとしたが、エルリックはそうさせなかった。
「大事な話だよ。ジョゼフィーネにも関係しているし、ダンドーラ侯爵にも関わっているからな」
エルリックは、真剣な顔をしている。
「それは解ったが何故、ジョゼフィーネに本当の姿を見せない?ここへ来る時は本来の姿で来ると約束したはずであろう」
(本来の姿?)
「俺は、あの姿は好きじゃない」
「子供みたいな事をぬかすな。いい年をした大人が」
『ビクトリア女王』とエルリックのやりとりは、まるで本当の孫と祖母の様だとジョゼフィーネは感じていた。
「私もエルリック様の本当の姿がみたいです」
と口に出すと「ジョゼフィーネが言うなら」渋々ながら、変身術を解いていった。
其処に現れた姿に
「「お、お前…ディル・アン・グレイか?」」
ダンドーラ侯爵とクリーク公爵が揃って声を上げた。
【ディル・アン・グレイ】
それは、史上最年少の魔導調査官として知られる『黒の魔導師』と呼ばれる人の名前だった。
(どうやら、私の夫には、まだまだ秘密が多そうね)
ジョゼフィーネは、心の中で呟いた。
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