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本当の父、その人は…
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私は、父を知らない。
会った記憶がない。
覚えてもいない。
父と名乗る人は、たまに本邸に帰ってきて、私に会わずに直ぐに愛人のいる別宅に帰った。
私は母や優しい公爵家の伯父一家と尽くしてくれる使用人らだけでも充分幸せだった。
でも不思議だったのは、私の誕生日は、いつも母の実家のクリーク公爵家にお泊まりをする。
「なぜ、毎年伯父様の家に泊まるの?」
「あら、嫌なの?公爵家では、貴女が来るのを楽しみにしているのに、プレゼントだって用意してくれているわ」
母は、いつもこう言って、誤魔化していた。
私は、薄々気がついていた。母がわざわざ誕生日、公爵家に泊まるのは、誰かに会うためだと…
(お母様には、父以外に好きな人が公爵家にいるのかしら?)
まだ幼い子供の私にも、公爵家に帰る時の母は、嬉しそうだった。
しかし、母の思い人に会った事は一度もなかった。
あれは、私が10歳の誕生日、何だか夜中に目が覚めた私は、母のいる部屋に向かった。
(灯りが点いているまだ、お母様も起きていらっしゃるのね。良かった)
私は、母の部屋の扉を少し開くと中から話し声が聞こえた。
「もう、ジョゼフィーネも10歳か。月日が流れるのは、早いものだな」
「そうね。あれからもう11年たつのね。私達が別れてから…」
「すまない、ヴィオレット。後少しだけ我慢してくれ。もうすぐ、君とジョゼフィーネを迎えに行ける。やっと家族が揃うんだ」
「ええ、その日を楽しみに待っているわ」
他愛のない会話をしているのに、何処か寂しいそうな母の額に、口付ける男の人の髪の色は、私と同じ銀色だった。
優しそうな仕種や声に私は、何となくこの男性が母の思い人なのではと思っていた。
ふと、部屋の灯りが揺らぐと扉が開いている事に気づいた母が
「あら、扉が開いているわ?」
「本当だね。閉めてくるよ」
そう言い、男性は扉迄やって来たので、私は、隣の自分の客間のベッドに飛び込んだ。
すると、母と男性が入って来て、私を覗き込んだ。私は、寝た振りをした。
「ふふ、可愛い寝顔だ。大きくなったね。ジョゼフィーネ、俺の小さなお姫様」
「あまり声を出すと起きてしまうわよウィス」
「毎年、誕生日に何を贈るか、迷うよ」
「あまり可笑しな物はやめてね。6歳の時なんか貴方から贈られた人形を見て、怖くて一人で寝れなかったんだから」
「うっ、セドリックにも注意された…す、すまないヴィー」
(そうなのね。あの呪いの人形は、この人がくれたのね。大切にしよう)
私は、あの不気味な呪いの人形が、その時初めて、宝物の一つになった。
すると、大きな手が私の頭を撫でながら、額に口付けを落とし、
「お休み、ジョゼフィーネ。よい夢を、元気でね」
優しい大きな手の持ち主を見たくて、私は薄目を開けた。
そこには、私と同じ銀色の髪と星を散りばめた様な金色の目があった。
ーーー母が亡くなった時、遺品からその男性と母が寄り添うように微笑んでいる絵を見つけたーーー
(ああ、やはりこの人が本当のお父様なのね)
今、私をきつく抱き締め涙しながら過去を語るこの人こそ、
本当の父、ウィストン・ダンドーラ侯爵その人なのだと
会った記憶がない。
覚えてもいない。
父と名乗る人は、たまに本邸に帰ってきて、私に会わずに直ぐに愛人のいる別宅に帰った。
私は母や優しい公爵家の伯父一家と尽くしてくれる使用人らだけでも充分幸せだった。
でも不思議だったのは、私の誕生日は、いつも母の実家のクリーク公爵家にお泊まりをする。
「なぜ、毎年伯父様の家に泊まるの?」
「あら、嫌なの?公爵家では、貴女が来るのを楽しみにしているのに、プレゼントだって用意してくれているわ」
母は、いつもこう言って、誤魔化していた。
私は、薄々気がついていた。母がわざわざ誕生日、公爵家に泊まるのは、誰かに会うためだと…
(お母様には、父以外に好きな人が公爵家にいるのかしら?)
まだ幼い子供の私にも、公爵家に帰る時の母は、嬉しそうだった。
しかし、母の思い人に会った事は一度もなかった。
あれは、私が10歳の誕生日、何だか夜中に目が覚めた私は、母のいる部屋に向かった。
(灯りが点いているまだ、お母様も起きていらっしゃるのね。良かった)
私は、母の部屋の扉を少し開くと中から話し声が聞こえた。
「もう、ジョゼフィーネも10歳か。月日が流れるのは、早いものだな」
「そうね。あれからもう11年たつのね。私達が別れてから…」
「すまない、ヴィオレット。後少しだけ我慢してくれ。もうすぐ、君とジョゼフィーネを迎えに行ける。やっと家族が揃うんだ」
「ええ、その日を楽しみに待っているわ」
他愛のない会話をしているのに、何処か寂しいそうな母の額に、口付ける男の人の髪の色は、私と同じ銀色だった。
優しそうな仕種や声に私は、何となくこの男性が母の思い人なのではと思っていた。
ふと、部屋の灯りが揺らぐと扉が開いている事に気づいた母が
「あら、扉が開いているわ?」
「本当だね。閉めてくるよ」
そう言い、男性は扉迄やって来たので、私は、隣の自分の客間のベッドに飛び込んだ。
すると、母と男性が入って来て、私を覗き込んだ。私は、寝た振りをした。
「ふふ、可愛い寝顔だ。大きくなったね。ジョゼフィーネ、俺の小さなお姫様」
「あまり声を出すと起きてしまうわよウィス」
「毎年、誕生日に何を贈るか、迷うよ」
「あまり可笑しな物はやめてね。6歳の時なんか貴方から贈られた人形を見て、怖くて一人で寝れなかったんだから」
「うっ、セドリックにも注意された…す、すまないヴィー」
(そうなのね。あの呪いの人形は、この人がくれたのね。大切にしよう)
私は、あの不気味な呪いの人形が、その時初めて、宝物の一つになった。
すると、大きな手が私の頭を撫でながら、額に口付けを落とし、
「お休み、ジョゼフィーネ。よい夢を、元気でね」
優しい大きな手の持ち主を見たくて、私は薄目を開けた。
そこには、私と同じ銀色の髪と星を散りばめた様な金色の目があった。
ーーー母が亡くなった時、遺品からその男性と母が寄り添うように微笑んでいる絵を見つけたーーー
(ああ、やはりこの人が本当のお父様なのね)
今、私をきつく抱き締め涙しながら過去を語るこの人こそ、
本当の父、ウィストン・ダンドーラ侯爵その人なのだと
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