【完結】旦那様、溺愛するのは程々にお願いします♥️仮面の令嬢が辺境伯に嫁いで、幸せになるまで

春野オカリナ

文字の大きさ
上 下
27 / 61

王家の秘密

しおりを挟む
 俺は、物心ついた時から何処か家の中で居心地の悪さを感じていた。それが何かは、弟達が生まれた時にわかった。

 両親の俺に対する接し方と弟達では、違っていた。よそよそしい態度や距離を置かれた。無条件に愛される弟や妹が羨ましかった。

 だが、そんな事は当たり前だ。俺は両親の実の子では無いのだから…

 あれは、18歳の学園を卒業した日、両親から自分の出生の秘密を聞かされた。

 「今から話すことは他言無用だ。決して約束を違えてはいけない。お前の命に関わることになるからだ」

 父ダンドーラ公爵は、俺に釘を刺した。

 「お前の本当の両親は、今は亡きアルバトロス大公閣下だ」

 「えっ、亡くなられた王弟殿下ですか?じゃあ母親は、誰なんです」

 「母親は、市勢で育った王女アマーリエ様だ。二人は叔母と甥の間柄だ。お前は、王家の禁断の子供なのだ」

 「俺は生まれて来てはいけなかったのですか?」

 「違います。そんな事はありません」

 俺の言葉に母は、勢いよく否定した。


ーーーそれから、父に呼ばれた乳母が真実を語った。

 真の父 アントニオ・アルバトロス大公

 真の母 アマーリエ

 アントニオ大公は、現国王陛下の同母弟だった。

 先王の王妃は『ビクトリア女王』と呼ばれる程の女傑なのだ。
 
 『ビクトリア女王』とは、実在した第十代女王でその治世は、王国の基盤を作り、女性差別や職業の安定等、国に貢献した名君として知られている。没後、優れた王妃等に贈られる尊称なのだ。

 確かに先王の王妃マーガレット・ハウエル元伯爵令嬢は、沈着冷静にして、先見の明があり、国道や水道の整備、女性の学業の向上等、王の右腕として国に貢献した。

 先々王の時代に無謀な戦争や度重なる飢饉で国力は低下の一途を辿っていた。そこで伯爵家の出ながら、その知性を買われ王妃として彼女を選定した。

 だが、そんな彼女にも唯一の欠点があった。嫁いだ時は、良かった夫婦仲も時と共に移ろい、先王は、多くの女に手を出したのだ。政務に忙しかった彼女もそれに関しては黙認していた。しかし、側妃や愛人から子が生まれる事はなかった。例え生まれても成人まで生きた者は、彼女の二人の王子と王女の三人だけだった。

ーーー子を身籠ったら、『ビクトリア女王』から逃げなくてはいけないーーー

 誠密やかに囁かれていた噂話だった。

 それは、現実で彼女は王が生理的欲求で女と交わることは黙認したが、子を産むことは許していなかった。

 長年、為政者として君臨していた彼女の矜持が許さなかった。

 苦労して傾きかけた国を我が子に譲りたい気持ちは理解はできるかもしれない。

 彼女は、やり過ぎた。王も彼女の暴挙に拍車をかけるように女と関係を持ち続けた。その結果、王宮のメイドの一人を孕ませ、放置した。メイドは『ビクトリア女王』の悋気に触れるのを畏れて、市勢へ身を隠した。

 王はメイドに王族の証を渡してあった。無事生まれればそれなりの待遇を考えていたようだが、それも徒労に終わった。

 メイドは女の子を出産して亡くなった。

 その女の子がアマーリエであった。

 アマーリエは、孤児院で育ち、子供のいない裕福な商家に引き取られた。

 そして、学園でアントニオと恋に落ちた。

 二人が自分達の定めに気がついた時には、既にアマーリエのお腹には、ウィストンが宿っていた。

 『ビクトリア女王』が夫の不貞の子供を見逃すはすがなかった。実の我が子ですら、兄王の妨げになると葬ったのだから。

 表向きには、病死だが余りにも突然の若い死に多くの人間が疑問を持ったが、逆らうものは誰もいなかった。

 恋人の死と殺されるかも知れない恐怖と心労でアマーリエは、衰弱していった。

 父王は、ある二つの公爵家に使いを出し、生まれてくる子の身の安全を頼んだ。死を前にした王には、妻の凶行を抑える力など無かった。

 二つの公爵家は、同じ時期に懐妊中の妻がいた。だから、実子として育てるよう頼んだ。

 クリーク公爵の子は無事生まれたが、ダンドーラ公爵の子は死産だった。ウィストンは、死んだ子と取り換えられた。

 夫人には、ウィストンが五歳の時に真実を明かした。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

処理中です...