26 / 61
狙われたのは…
しおりを挟む
友人達の話を聞けば聞く程、俺は混乱していた。
(何故俺に毒を…)
思い当たる事はあるが、それを口に出すのは憚られた。何故なら、これは王家の重大な秘密だからだ。
「はっきり言った方がわかるだろう」
ルドルフは、言い切った。
「今回、首謀者には手を出せない。王にもだ。下手をすれば、こちらが潰される」
「やっぱり、あの人だと思いました」
「それと狙われたのは、ヴィオレットも同じだ」
そのセドリックの言葉に俺は反応した。
「何故?ヴィオレットが…」
「君の子を身籠っているからさ。堕胎薬を嗅がされた」
「嗅がされた?」
アンドレの言葉に俺は動揺した。
「薬を飲ます事が出来ないから、嗅がしたんだ」
セドリックの言葉の意味は、理解できた。クリーク公爵家は、毒や薬の知識が豊富だ。口にするものには、最善の注意を払っているからだ。
(でも、どうやってあの慎重なヴィオレットに嗅がすことが出来る)
「やったのはロバート・アンサンブルだ。彼とは学園時代からの旧友だ。だから警戒心を解いたのだろう」
「本人は、堕胎薬だと思ってない。何故なら媚薬だからな!」
「えっ、媚薬を嗅がしたのか」
「そうだ!」
吐き捨てる様な声で、苦渋の表情をして、セドリックが言った。
「まあ、妊娠初期に媚薬を嗅がされたら、子が流れるからね」
アンドレが付け加えるように言った。
「子供は、無事なのか?ヴィオレットは」
「落ち着け、ヴィオレットも子供も今のところ大丈夫だ」
ルドルフの言葉で、俺は安堵した。
「だが、社交界でかなり醜聞となった。未婚のヴィオレットがアンサンブル侯爵令息と一夜をあかしたとな。実際は、何もなかったが、噂好きの宮廷雀達は、面白可笑しく騒ぐだろう」
「だから、ヴィオレットはアンサンブル侯爵家に嫁ぐ事になった」
セドリックは、横を向いて俺と目を合わさないで告げた。その顔には、親友に残酷な事を告げる苦悩が見てとれた。
「何故だ!俺の子だぞ!何故そうなる」
唸る俺をルドルフが諭すように言った。
「だからだ。今の俺たちには、あの人に対抗できるだけの力がない。今は我慢しろ。お前が自重していれば、ヴィオレットには、危害が及ばなかったんだ。お前の身勝手で浅はかな行動のせいでこうなったんだ」
「だったら、俺を殺せば良かったんだ。あの時に、そうすればヴィオレットに出会わなかった。愛したりしなかった。生まれて来なければ良かったんだよ。俺は、なあそうだろう。従兄弟殿!」
遂に、俺は自分で最大の禁句を口にした。それは、俺がダンドーラ公爵の実の子ではないと言うことだった。
「そんな風に言わないてくれ。父達も助けたくてした事だ。自分に何も価値がない様な言い方はよせ」
ルドルフは、悲しそうに呟いた。
「はっきり言うけど、僕らは知ってるよ。ウィストン」
アンドレの言葉にセドリックも頷く。
「知っていたのか。なら言ってくれたら良かったのに。俺は誰も巻き込みたくなかった」
俺は、生まれた時からの罪人
【禁断の子供】だった。
(何故俺に毒を…)
思い当たる事はあるが、それを口に出すのは憚られた。何故なら、これは王家の重大な秘密だからだ。
「はっきり言った方がわかるだろう」
ルドルフは、言い切った。
「今回、首謀者には手を出せない。王にもだ。下手をすれば、こちらが潰される」
「やっぱり、あの人だと思いました」
「それと狙われたのは、ヴィオレットも同じだ」
そのセドリックの言葉に俺は反応した。
「何故?ヴィオレットが…」
「君の子を身籠っているからさ。堕胎薬を嗅がされた」
「嗅がされた?」
アンドレの言葉に俺は動揺した。
「薬を飲ます事が出来ないから、嗅がしたんだ」
セドリックの言葉の意味は、理解できた。クリーク公爵家は、毒や薬の知識が豊富だ。口にするものには、最善の注意を払っているからだ。
(でも、どうやってあの慎重なヴィオレットに嗅がすことが出来る)
「やったのはロバート・アンサンブルだ。彼とは学園時代からの旧友だ。だから警戒心を解いたのだろう」
「本人は、堕胎薬だと思ってない。何故なら媚薬だからな!」
「えっ、媚薬を嗅がしたのか」
「そうだ!」
吐き捨てる様な声で、苦渋の表情をして、セドリックが言った。
「まあ、妊娠初期に媚薬を嗅がされたら、子が流れるからね」
アンドレが付け加えるように言った。
「子供は、無事なのか?ヴィオレットは」
「落ち着け、ヴィオレットも子供も今のところ大丈夫だ」
ルドルフの言葉で、俺は安堵した。
「だが、社交界でかなり醜聞となった。未婚のヴィオレットがアンサンブル侯爵令息と一夜をあかしたとな。実際は、何もなかったが、噂好きの宮廷雀達は、面白可笑しく騒ぐだろう」
「だから、ヴィオレットはアンサンブル侯爵家に嫁ぐ事になった」
セドリックは、横を向いて俺と目を合わさないで告げた。その顔には、親友に残酷な事を告げる苦悩が見てとれた。
「何故だ!俺の子だぞ!何故そうなる」
唸る俺をルドルフが諭すように言った。
「だからだ。今の俺たちには、あの人に対抗できるだけの力がない。今は我慢しろ。お前が自重していれば、ヴィオレットには、危害が及ばなかったんだ。お前の身勝手で浅はかな行動のせいでこうなったんだ」
「だったら、俺を殺せば良かったんだ。あの時に、そうすればヴィオレットに出会わなかった。愛したりしなかった。生まれて来なければ良かったんだよ。俺は、なあそうだろう。従兄弟殿!」
遂に、俺は自分で最大の禁句を口にした。それは、俺がダンドーラ公爵の実の子ではないと言うことだった。
「そんな風に言わないてくれ。父達も助けたくてした事だ。自分に何も価値がない様な言い方はよせ」
ルドルフは、悲しそうに呟いた。
「はっきり言うけど、僕らは知ってるよ。ウィストン」
アンドレの言葉にセドリックも頷く。
「知っていたのか。なら言ってくれたら良かったのに。俺は誰も巻き込みたくなかった」
俺は、生まれた時からの罪人
【禁断の子供】だった。
1
お気に入りに追加
1,143
あなたにおすすめの小説

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
不器用騎士様は記憶喪失の婚約者を逃がさない
かべうち右近
恋愛
「あなたみたいな人と、婚約したくなかった……!」
婚約者ヴィルヘルミーナにそう言われたルドガー。しかし、ツンツンなヴィルヘルミーナはそれからすぐに事故で記憶を失い、それまでとは打って変わって素直な可愛らしい令嬢に生まれ変わっていたーー。
もともとルドガーとヴィルヘルミーナは、顔を合わせればたびたび口喧嘩をする幼馴染同士だった。
ずっと好きな女などいないと思い込んでいたルドガーは、女性に人気で付き合いも広い。そんな彼は、悪友に指摘されて、ヴィルヘルミーナが好きなのだとやっと気付いた。
想いに気づいたとたんに、何の幸運か、親の意向によりとんとん拍子にヴィルヘルミーナとルドガーの婚約がまとまったものの、女たらしのルドガーに対してヴィルヘルミーナはツンツンだったのだ。
記憶を失ったヴィルヘルミーナには悪いが、今度こそ彼女を口説き落して円満結婚を目指し、ルドガーは彼女にアプローチを始める。しかし、元女誑しの不器用騎士は息を吸うようにステップをすっ飛ばしたアプローチばかりしてしまい…?
不器用騎士×元ツンデレ・今素直令嬢のラブコメです。
12/11追記
書籍版の配信に伴い、WEB連載版は取り下げております。
たくさんお読みいただきありがとうございました!
最愛から2番目の恋
Mimi
恋愛
カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。
彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。
以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。
そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。
王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……
彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。
その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……
※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります
ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません
ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる