【完結】旦那様、溺愛するのは程々にお願いします♥️仮面の令嬢が辺境伯に嫁いで、幸せになるまで

春野オカリナ

文字の大きさ
上 下
2 / 61

仮面が外れました

しおりを挟む
 私の名前は、ジョゼフィーネ・アンサンブル元侯爵令嬢です。ここサンタナ辺境伯爵領に来て、3ヶ月になります。

 昨日、結婚式をして、初夜を旦那様と過ごしました。朝まで放して貰えなかったので、今、昼頃になってしまっています。

(大変です。寝坊をするなんて、妻失格です)

 呼び鈴で侍女達が私の世話をしに入ったのですが、何故か皆、見事に固まってしまっています。

(どうしたのでしょう?)

「あの、どちら様でしょうか?」

(おかしな事を聞きますね?ここは夫婦の寝室です。妻の私が分からないのかしら?きっと目が悪いのね)

「あのう、奥様でいらっしゃいますか?仮面がないのでわからないのですが」

侍女頭のシーラが尋ねてきました。

「えっ、鏡を持ってきて下さい」

私は、鏡に映る自分の顔を見ました。最後に見たのは3年前の15才の時でした。

(そう、確かにこんな顔でしたね。3年も見てなかったから忘れそうでしたわ)

「仮面がとれたのですね。驚かせましたね。改めまして、私がジョゼフィーネ・アンサンブルです。これからも宜しくね」

私が頭をさげると慌てて侍女達が止めました。

(別にこれくらい問題ありませんのにね)

 直ぐ様、理解した様に身支度を手伝ってくれました。皆様とても優秀ですわ。

 さて、お腹も空いたので何か口にしましょう。

(旦那様は、いらっしゃるかしら)

食堂に行くと旦那様がいました。さっきから使用人達も振り返って見られたけど、私の顔が変なのかしら?後で、旦那様に確認しないとね。

(あら、旦那様がいましたわ。おや、真っ赤になって固まっていらっしゃいますね。何かのご病気かしら。後で、お医者様をお呼びしないと)

「遅くなって申し訳なありません。全身何故か痛いので、お食事の後、少しお話があるのですがお時間を頂けないでしょうか」

 私の言葉に周りから「クスクス」と小さな笑い声が聞こえますね。でも旦那様は、まだ固まっていますし、全身茹で蛸みたいになってますね。しかも、魚の様に口をパクパクさせていますわ。

(やはり、ご病気かしら?早く、お医者様を呼ばなくては)

「モーリスさん、旦那様がご病気見たいなので、お医者様をお願いします」

 その言葉に、食堂にいた全員が一斉に吹き出した。

(一体、何がそんなに可笑しいのかしら?私は旦那様の心配をしているだけなのに)

 首を傾げて、不思議に思っていると

「奥様、旦那様はご病気ではありません」

その言葉にまた、皆様はお腹を抱えて笑い出しました。

「なっ、モーリス私より先にジョゼフィーネと話すな」

「何を子供じみた事を仰有っているのです。私は家令ですので、必然、会話はありますよ。指示を仰がなくてはいけませんしね」

 初老の家令・モーリスが答えた。

「とりあえず、食事にしよう。体は大丈夫か?」

 私をエスコートして、座るよう促したんですが、ここですか?

(えっ、ここに座るんですか?旦那様、は…恥ずかし過ぎます)

 私を横抱きにし膝の上に乗せ、昼食を食べる事になってしまった。勿論、「あーん」と口を開けさせられました。

(皆が生暖かい視線で見ている。何の拷問ですか)

 せっかくの美味しい食事がきちんと味わえません。

『ジョゼフィーネは、可愛いね』

 時々、旦那様は私に耳打ちします。近いんですけど、恥ずかしいので、やめて下さい。心臓がドキドキします。私も何かの病気でしょうか?

 こんなやり取りで、新婚生活が始まりました。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

不器用騎士様は記憶喪失の婚約者を逃がさない

かべうち右近
恋愛
「あなたみたいな人と、婚約したくなかった……!」 婚約者ヴィルヘルミーナにそう言われたルドガー。しかし、ツンツンなヴィルヘルミーナはそれからすぐに事故で記憶を失い、それまでとは打って変わって素直な可愛らしい令嬢に生まれ変わっていたーー。 もともとルドガーとヴィルヘルミーナは、顔を合わせればたびたび口喧嘩をする幼馴染同士だった。 ずっと好きな女などいないと思い込んでいたルドガーは、女性に人気で付き合いも広い。そんな彼は、悪友に指摘されて、ヴィルヘルミーナが好きなのだとやっと気付いた。 想いに気づいたとたんに、何の幸運か、親の意向によりとんとん拍子にヴィルヘルミーナとルドガーの婚約がまとまったものの、女たらしのルドガーに対してヴィルヘルミーナはツンツンだったのだ。 記憶を失ったヴィルヘルミーナには悪いが、今度こそ彼女を口説き落して円満結婚を目指し、ルドガーは彼女にアプローチを始める。しかし、元女誑しの不器用騎士は息を吸うようにステップをすっ飛ばしたアプローチばかりしてしまい…? 不器用騎士×元ツンデレ・今素直令嬢のラブコメです。 12/11追記 書籍版の配信に伴い、WEB連載版は取り下げております。 たくさんお読みいただきありがとうございました!

最愛から2番目の恋

Mimi
恋愛
 カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。  彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。  以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。  そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。  王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……  彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。  その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……  ※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります  ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません  ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります

処理中です...