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第一章
暴かれた真実
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これは、ベアトリーチェとレオンハルトが会う前日の話です。
※ベンジャミン視点
王宮から急な召喚状が届き、不安が一瞬過ぎった。
王からは、妻子を伴ってと明記されている。
公の妻子と言えば、リリエンヌとベアトリーチェの事を指してるが、俺の本当の妻はエレナとジュリアだ。
嫌な予感はしたが、俺は一人で行くことにした。
王宮に着くと来賓客用の応接室に通された。侍従が俺の訪問を知らせると、国王が入室の許可を出す。
中に入ると、二人の見知らぬ男達が国王の正面に座っている。
国王は、二人に何やら目くばせをした後、俺に向かって、
「どうして、妻子と連れてこなかった?文面を読まなかったのか?」
「いえ…妻は自宅で静養中ですし、む…娘の方も何かと問題が…」
苦しい言い訳だと理解しているが、俺には他に答える術がない。
「余が命じたのは、公爵の血の繋がった本当の娘と妻を連れてくように命じたはずだ」
「な…何が仰りたのかわかりません。つ…妻は屋敷におりますし、む…娘は一月前のお茶会に参加して、陛下もご覧になったはず…」
「そうだ。身代わりの令嬢と偽りの公爵夫人には会った事はある。しかし、郊外の屋敷に隠している本物の夫人と令嬢には会った事はない。王家をいつまでも騙しておけると思っていたのか。愚か者め」
ガラスの様な目の所為か、何時もよりも無機質で冷たく感じた。
陛下の叱責が部屋中に響く。
いつ、知られた。誰か喋ったのか?
二人の男の一人が口を開いた。
「初めまして、義兄上とお呼びしましょうか?チェスター公爵。私の妹と姪をお返し願いたい。叔父から金銭のやり取りで妹を強引に連れ去った事は知っていましたが、我が国の事情で直ぐには迎えに行けませんでしたので、そこは申し訳なく思っています。おかげで、我がオーウェスト家は今や帝国の侯爵となりましたので、お借りした金銭をお返しいたします。どうか御受取り下さい」
そう言って、男は金額の入っていない小切手を差し出した。リリエンヌとベアトリーチェを言い値で引き取ろうと言う魂胆なのだろう。
しかし、それでも俺は偽物の娘を手放すわけにはいかない。あれを手放せば、王家に我が子を差し出さなければならなくなる。
そんな事は出来ない。俺には…大切に育てた娘を王家に渡したくなかった。
「そんな物はいらない。ベアトリーチェはわたしの娘です。偽りを陛下に言うな」
「証拠ならある。貴殿の娘でないというな。これで証明できる」
隣にかけていた黒髪の男が魔道具を陛下に見せた。
「最近、見つかった。昔の神殿で使われていた物で、血縁者の鑑定を行える魔道具だ」
「どうやって使うのだ」
「この水盆に鑑定したい双方の血か体液を垂らすと血縁者なら水が翠に変化し、他人なら変化がない」
「誰かレイノルドを連れてきなさい」
国王に命じられた侍従は王太子殿下を呼びに部屋を出て行った。
暫くすると王太子殿下が陛下の命で、自分の指を針で刺し、陛下もまた同じように針で自分の指を刺した。双方の血が水盆に落ちる。
滴が落ちると同時に水盆の水にも変化が出始めた。
──翠色に光る水盆…。
次にリリエンヌの兄エドモンドが従僕から「リリエンヌ様の物です」と言われて赤色の小瓶を受け取った。
渡した従僕の顔に見覚えがある。
「この者の顔に見覚えがあるだろう。妹の侍女エリッサの弟のエリックだよ。エリッサに頼んでリリエンヌとベアトリーチェの血を取るように指示したんだ」
新しい水に換えた水盆にエドモンドは血を垂らし、そして妹リリエンヌの血を垂らした。
同じように翠色に光った。
リリエンヌの血とベアトリーチェの血も同じように光る。
こうして、次々と誰が血縁者なのかを調べていく。
フェリクス大公が、
「ここで面白い実験をしてみましょうか」
「それはどういったものだ。危険はないのだろうな」
「大丈夫です。こちらの用紙をご覧ください」
フェリクス大公が陛下に見せた紙は神殿への出生届だ。
そこには生まれたばかりのベアトリーチェの血判が押してある。
だが、それは……。
血判部分を水盆に入れると、黒く変色していた血が滲み出る。フェリクス大公は自分の血を数滴、垂らしたが変化がない。
「どういう事だ。血が古いから反応しないのか」
「いえ、陛下。魔道具にも異常はありません。そして、この出生届も…」
そう言って、今度は本物のベアトリーチェの血を垂らし、自分の血を垂らすと水盆の水は翠に変化した。
「一体…。どういった仕組みなのだ」
「陛下、結論を出すのは今しばらくお待ちください」
「さあ、貴殿の番だ」
「そうだな。公爵、試せ」
陛下の言葉には逆らえない。俺は震える手で自分の指を刺し、血を水盆に垂らした。
先に浸していた出生届の血と混ざりあう様に、水は翠色に変化した。
次に本物のベアトリーチェの血を垂らした水盆に俺の血を垂らしても変化はない。
「おお…これは。何故なのだ。大公」
「陛下、このベアトリーチェの血が本物なのはおわかりでしょう。ですが、この出生届は偽物です。つまり、私の娘…リリエンヌの産んだベアトリーチェは、公爵とは血が繋がっていないし、またこの国に出生届を出してもいない偽者なのです」
「そ…そんなはずはない。もう一度…」
何度試しても俺とベアトリーチェの血は反応しなかった。
「どうしてなんだ。違う。何かの間違いだ」
どんどん追い詰められて、焦っていく俺は水盆の水を零した。
「これで、証拠は揃ったな。公爵どういう事か説明せよ」
「陛下…これには訳が…」
「訳なんてないだろう。調べはついている。貴殿がフロンティアで精霊師の家系の令嬢を探していたということと、故意にリリエンヌの叔父に近付いた事もわかっている。借金まみれの彼が肩代わりしてくれる男と取引して姪を公爵に売り渡したという事実も」
「ち…違います。陛下…これには事情が」
「事情なんてないだろう。他人の子を身籠っているリリエンヌに子供を産ませる事が目的だったんだから、初めから自分の娘の身代わりを探していたんだろう?
我が国フロンティアでは、性別が判別できる魔道具もあるからな。
それに娘が生まれてくることは、俺もリリエンヌの手紙で知っていた。
迎えに来るのが遅れたのは、国の情勢が不穏になると隣国はこぞって、境界を封鎖したからだ。
その所為で、国交を回復するのに10年もかかったがな」
俺にとっては好都合だった。王太子の婚約者を選定するまでの時間を稼げたからな。だが…。
あれ程、厳密に長い年月をかけた計画は、なにもかも水の泡になってしまった。
※ベンジャミン視点
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王からは、妻子を伴ってと明記されている。
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国王は、二人に何やら目くばせをした後、俺に向かって、
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苦しい言い訳だと理解しているが、俺には他に答える術がない。
「余が命じたのは、公爵の血の繋がった本当の娘と妻を連れてくように命じたはずだ」
「な…何が仰りたのかわかりません。つ…妻は屋敷におりますし、む…娘は一月前のお茶会に参加して、陛下もご覧になったはず…」
「そうだ。身代わりの令嬢と偽りの公爵夫人には会った事はある。しかし、郊外の屋敷に隠している本物の夫人と令嬢には会った事はない。王家をいつまでも騙しておけると思っていたのか。愚か者め」
ガラスの様な目の所為か、何時もよりも無機質で冷たく感じた。
陛下の叱責が部屋中に響く。
いつ、知られた。誰か喋ったのか?
二人の男の一人が口を開いた。
「初めまして、義兄上とお呼びしましょうか?チェスター公爵。私の妹と姪をお返し願いたい。叔父から金銭のやり取りで妹を強引に連れ去った事は知っていましたが、我が国の事情で直ぐには迎えに行けませんでしたので、そこは申し訳なく思っています。おかげで、我がオーウェスト家は今や帝国の侯爵となりましたので、お借りした金銭をお返しいたします。どうか御受取り下さい」
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しかし、それでも俺は偽物の娘を手放すわけにはいかない。あれを手放せば、王家に我が子を差し出さなければならなくなる。
そんな事は出来ない。俺には…大切に育てた娘を王家に渡したくなかった。
「そんな物はいらない。ベアトリーチェはわたしの娘です。偽りを陛下に言うな」
「証拠ならある。貴殿の娘でないというな。これで証明できる」
隣にかけていた黒髪の男が魔道具を陛下に見せた。
「最近、見つかった。昔の神殿で使われていた物で、血縁者の鑑定を行える魔道具だ」
「どうやって使うのだ」
「この水盆に鑑定したい双方の血か体液を垂らすと血縁者なら水が翠に変化し、他人なら変化がない」
「誰かレイノルドを連れてきなさい」
国王に命じられた侍従は王太子殿下を呼びに部屋を出て行った。
暫くすると王太子殿下が陛下の命で、自分の指を針で刺し、陛下もまた同じように針で自分の指を刺した。双方の血が水盆に落ちる。
滴が落ちると同時に水盆の水にも変化が出始めた。
──翠色に光る水盆…。
次にリリエンヌの兄エドモンドが従僕から「リリエンヌ様の物です」と言われて赤色の小瓶を受け取った。
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新しい水に換えた水盆にエドモンドは血を垂らし、そして妹リリエンヌの血を垂らした。
同じように翠色に光った。
リリエンヌの血とベアトリーチェの血も同じように光る。
こうして、次々と誰が血縁者なのかを調べていく。
フェリクス大公が、
「ここで面白い実験をしてみましょうか」
「それはどういったものだ。危険はないのだろうな」
「大丈夫です。こちらの用紙をご覧ください」
フェリクス大公が陛下に見せた紙は神殿への出生届だ。
そこには生まれたばかりのベアトリーチェの血判が押してある。
だが、それは……。
血判部分を水盆に入れると、黒く変色していた血が滲み出る。フェリクス大公は自分の血を数滴、垂らしたが変化がない。
「どういう事だ。血が古いから反応しないのか」
「いえ、陛下。魔道具にも異常はありません。そして、この出生届も…」
そう言って、今度は本物のベアトリーチェの血を垂らし、自分の血を垂らすと水盆の水は翠に変化した。
「一体…。どういった仕組みなのだ」
「陛下、結論を出すのは今しばらくお待ちください」
「さあ、貴殿の番だ」
「そうだな。公爵、試せ」
陛下の言葉には逆らえない。俺は震える手で自分の指を刺し、血を水盆に垂らした。
先に浸していた出生届の血と混ざりあう様に、水は翠色に変化した。
次に本物のベアトリーチェの血を垂らした水盆に俺の血を垂らしても変化はない。
「おお…これは。何故なのだ。大公」
「陛下、このベアトリーチェの血が本物なのはおわかりでしょう。ですが、この出生届は偽物です。つまり、私の娘…リリエンヌの産んだベアトリーチェは、公爵とは血が繋がっていないし、またこの国に出生届を出してもいない偽者なのです」
「そ…そんなはずはない。もう一度…」
何度試しても俺とベアトリーチェの血は反応しなかった。
「どうしてなんだ。違う。何かの間違いだ」
どんどん追い詰められて、焦っていく俺は水盆の水を零した。
「これで、証拠は揃ったな。公爵どういう事か説明せよ」
「陛下…これには訳が…」
「訳なんてないだろう。調べはついている。貴殿がフロンティアで精霊師の家系の令嬢を探していたということと、故意にリリエンヌの叔父に近付いた事もわかっている。借金まみれの彼が肩代わりしてくれる男と取引して姪を公爵に売り渡したという事実も」
「ち…違います。陛下…これには事情が」
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それに娘が生まれてくることは、俺もリリエンヌの手紙で知っていた。
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