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第一章
※ 終焉そして新たな未来へ
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ベアトリーチェの遺体は、数日たっているにも拘らず腐敗が進んでいない。
僕は、王宮に帰るとすぐに王宮魔術師が作った王族専用の棺にベアトリーチェの遺体を保管した。
特別に腐敗しない様に常に一定の温度で保管できる棺。
僕はベアトリーチェを王宮の礼拝堂に安置した。
父は、僕の婚姻を見届けると、長年の病気が再発して、寝込む様になっていった。僕は忙殺される執務に追われながら、毎日ベアトリーチェに会いに行く。
母付きの侍女に命じて、微量な毒薬を少しづつ母の食事に混ぜさせた成果が、今になって現れた。
僕が夫婦の寝室に来ない事を不審に思ったルシーラは、遂に僕が隠していたベアトリーチェを見つけて焼き払おうとした。
その時には、いやもっと前から僕は狂っていたのだろう。
僕は、ルシーラを部屋から出さない様にした。
だってそうだろう。僕の大切なベアトリーチェを焼き払おうなんて…。僕が死んだとき一緒に墓に入るんだ。彼女が死んだ時、僕はそう考えていた。
次第に理性を失いつつある僕の治世は荒れて行って、私利私欲に走る官僚や貴族が横行していく。
過大な税に苦しむ国民が反乱を起こすのは時間の問題だった。
初めは小さな火だったが、やがてそれは各地で不満を持った人々で膨れ上がり、大火となって王都に押し寄せてきた。
僕が礼拝堂にいると、逃げ惑う人々の声が聞こえてくる。
暫くすると王宮は静まり返った。
静かだ…何も聞こえないな。
僕は何かを待っていた。そう僕の人生を終わらせる何かを…。
「どうした。僕を殺さないのか?」
「俺には関係がない。俺の欲し物は別にある」
「ここには何もない。あるのは国王の僕だけだ」
「違う。そんな物よりも俺にとっては何よりも必要なものだ。やっと見つけた」
部屋に入って来た男は僕には見向きもしないで、ベアトリーチェの棺の方に向かう。
「やめろ!!それに触れるな!!汚い手で触るな!!!」
僕の制止を無視して、男は棺の蓋を開けた。
もう死んでから随分と経っているのに、あの時のままの姿で入っているベアトリーチェを見て、男は笑った。
「やっと会えたな。ベアトリーチェ。俺の…俺だけの…俺の為に選ばれた女だった。どうして、気付かなかった。あの時、どうして俺の手を取らなかった。そしたら、お前の運命も俺の運命も何もかも違っていただろう」
「な…何を言っている。彼女は僕の婚約者だった。初めから僕のものだったんだ」
「本当に…彼女は『レイノルド』の婚約者で、お前の婚約者でなかった。違うか。お前は所詮本物が帰って来るまでの身代わりに過ぎない者だった」
「な…どうして…それを知っているんだ。姿を見せろ!!」
僕が振り上げた剣先が男の覆面を剥いだ。
「お…お前。ウィル・アルバーナか」
「ああ、そう言えばそう名乗っていたな。分からないか。まあ、俺も変わったからな」
じっと見つめるその瞳は、何処までも仄暗い灰色の瞳が礼拝堂に灯る灯りに揺られて、時々青く見えた。
黒い髪の境目までも分からない程、黒いシミが広がっている。
だが、ウィルの口元には確かにそれはあった。
何処かで同じものを見た。僕は思い出した。 兄『レイノルド』と同じ位置の黒子が…。
それに、フェリシアが死んだ時もあんな模様が出ていた。
ウィルの身体からは呪いの霧が這い出ようと蠢いていた。まるで生き物様に…。
「お…お前は一体誰なんだ!いえーーー」
本当は答えなんか出ている。目の前の男が誰なのか。ずっと待っていた。この国に帰って来て僕を自由にしてくれるその人物を…。
「俺が本物のレイノルドだと言えば分かるのか。やっと帰って来れた。もっと早くに帰りたかったが、呪いの解けていない姿では帰れなかった。すまない……」
その謝罪は誰に向けて言ったのかは分からない。
だが、僕に向けての言葉でない事だけは分かる。きっとベアトリーチェに向けてだろう。誰に対して謝っているんだ。お前が本当に謝らなければならないのは僕にだ。
僕に見向きもしないで、ベアトリーチェを抱きかかえて連れて行こうとしている彼の背中に剣を突き刺した。
殆ど同時だったんだろう。振り返って、彼は持っていた短剣で僕の喉を掻き切った。
鮮血が飛び散った祭壇。
瀕死のはずなのに、ベアトリーチェに何かを呟きながら、彼は僕を残して去って行った。
「ま…って……かの…じょ……おいていけ」
血塗れの手で、手探りで這う様に僕は出口に向かって進んだ。
反乱軍の誰かが火を放ったのだろう。周りは炎に包まれていた。
その時、大きな光の火柱が紫蘭宮から上がって、瞬く間に消えてなくなった。
僕は王宮のベランダから、何かを掴もうと手を出した。
体は宙を舞って下に落ちていく。
不思議と恐怖は感じなかった。自分がこうなることを望んでいたように…。
そして、落ちていく感覚はあるのに、目の前に別の光景が浮かんでいた。
これは幻だろうか、いや僕は幸せな夢を見ているんだ。
異国の制服を着て、僕とベアトリーチェ、フェリシアそれに兄レイノルドの姿が…。
ああ…楽しそうに笑っている未来が見える。
ドスンッと鈍い音と共に僕の身体は地面に落ちた。
歓喜の声が上がって、
「暴君が倒れたぞーーー」
という誰かの叫びが響き渡る。
僕は還るんだ…。あの幸せな未来に向けて。
僕達は還っていく……。
どうか、今度は絶対に……。
僕は願い事をして静かに目を閉じた。
僕は、王宮に帰るとすぐに王宮魔術師が作った王族専用の棺にベアトリーチェの遺体を保管した。
特別に腐敗しない様に常に一定の温度で保管できる棺。
僕はベアトリーチェを王宮の礼拝堂に安置した。
父は、僕の婚姻を見届けると、長年の病気が再発して、寝込む様になっていった。僕は忙殺される執務に追われながら、毎日ベアトリーチェに会いに行く。
母付きの侍女に命じて、微量な毒薬を少しづつ母の食事に混ぜさせた成果が、今になって現れた。
僕が夫婦の寝室に来ない事を不審に思ったルシーラは、遂に僕が隠していたベアトリーチェを見つけて焼き払おうとした。
その時には、いやもっと前から僕は狂っていたのだろう。
僕は、ルシーラを部屋から出さない様にした。
だってそうだろう。僕の大切なベアトリーチェを焼き払おうなんて…。僕が死んだとき一緒に墓に入るんだ。彼女が死んだ時、僕はそう考えていた。
次第に理性を失いつつある僕の治世は荒れて行って、私利私欲に走る官僚や貴族が横行していく。
過大な税に苦しむ国民が反乱を起こすのは時間の問題だった。
初めは小さな火だったが、やがてそれは各地で不満を持った人々で膨れ上がり、大火となって王都に押し寄せてきた。
僕が礼拝堂にいると、逃げ惑う人々の声が聞こえてくる。
暫くすると王宮は静まり返った。
静かだ…何も聞こえないな。
僕は何かを待っていた。そう僕の人生を終わらせる何かを…。
「どうした。僕を殺さないのか?」
「俺には関係がない。俺の欲し物は別にある」
「ここには何もない。あるのは国王の僕だけだ」
「違う。そんな物よりも俺にとっては何よりも必要なものだ。やっと見つけた」
部屋に入って来た男は僕には見向きもしないで、ベアトリーチェの棺の方に向かう。
「やめろ!!それに触れるな!!汚い手で触るな!!!」
僕の制止を無視して、男は棺の蓋を開けた。
もう死んでから随分と経っているのに、あの時のままの姿で入っているベアトリーチェを見て、男は笑った。
「やっと会えたな。ベアトリーチェ。俺の…俺だけの…俺の為に選ばれた女だった。どうして、気付かなかった。あの時、どうして俺の手を取らなかった。そしたら、お前の運命も俺の運命も何もかも違っていただろう」
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「本当に…彼女は『レイノルド』の婚約者で、お前の婚約者でなかった。違うか。お前は所詮本物が帰って来るまでの身代わりに過ぎない者だった」
「な…どうして…それを知っているんだ。姿を見せろ!!」
僕が振り上げた剣先が男の覆面を剥いだ。
「お…お前。ウィル・アルバーナか」
「ああ、そう言えばそう名乗っていたな。分からないか。まあ、俺も変わったからな」
じっと見つめるその瞳は、何処までも仄暗い灰色の瞳が礼拝堂に灯る灯りに揺られて、時々青く見えた。
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「お…お前は一体誰なんだ!いえーーー」
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「俺が本物のレイノルドだと言えば分かるのか。やっと帰って来れた。もっと早くに帰りたかったが、呪いの解けていない姿では帰れなかった。すまない……」
その謝罪は誰に向けて言ったのかは分からない。
だが、僕に向けての言葉でない事だけは分かる。きっとベアトリーチェに向けてだろう。誰に対して謝っているんだ。お前が本当に謝らなければならないのは僕にだ。
僕に見向きもしないで、ベアトリーチェを抱きかかえて連れて行こうとしている彼の背中に剣を突き刺した。
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その時、大きな光の火柱が紫蘭宮から上がって、瞬く間に消えてなくなった。
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そして、落ちていく感覚はあるのに、目の前に別の光景が浮かんでいた。
これは幻だろうか、いや僕は幸せな夢を見ているんだ。
異国の制服を着て、僕とベアトリーチェ、フェリシアそれに兄レイノルドの姿が…。
ああ…楽しそうに笑っている未来が見える。
ドスンッと鈍い音と共に僕の身体は地面に落ちた。
歓喜の声が上がって、
「暴君が倒れたぞーーー」
という誰かの叫びが響き渡る。
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僕達は還っていく……。
どうか、今度は絶対に……。
僕は願い事をして静かに目を閉じた。
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