15 / 48
第一章
※ 僕の名は…
しおりを挟む
楽しそうに笑っている君がいる。
その隣には僕の大切な唯一の家族…妹のフェリシアがいた。
人見知りが激しい妹が初対面で懐いた少女──。
ベアトリーチェ・チェスター公爵令嬢。
銀色の髪に翠の瞳が美しい少女。
彼女の笑顔を見ているとこっちも幸せな気持ちになっていく。
僕の人生は虚無に満ちていた。
生まれた時から僕の前にはいつもあいつがいた。
僕より数刻早く生まれただけで、宝石眼を持っていただけで、生まれた時から全てを持っていたあいつ。
大っ嫌いなあいつの名前はレイノルド・アルカイドだった。
僕の本当の名前は、ウィルウッド・アルカイド。
この国の第二王子として生まれた僕は、兄レイノルドの影として生きる宿命を持っている。
兄レイノルドが誕生した日、光の精霊が現れて、祝福を与えたのだ。
父ジルベスターは歓喜した。
それもそのはずだ。レイノルドの母は第一妃エリノア様。
実家は王家を長く支えてきた功臣ベルローズ公爵家。
しかも、父の長年の想い人であり、唯一の人だった。
父は妃を迎えるにあたり、慣例を無視してエリノア様だけを妻に迎えるつもりだと宣言した。
だが、頭の固い老臣たちはそれをよしとはしなかった。派閥同士を巻き込んで、結局、父は折れた。それが大きな間違いだったと気付いた時には、全ての事が遅かった。
第二妃マリウェザー様はハウエル侯爵家の三女で、騎士を目指していたこともあり、性格や行動は男性のようだった。
そして、第三妃となった僕の母オパールはブリジット伯爵家の次女だった。伯爵が侍女に産ませた婚外子。そのことが母の最大のコンプレックスだったのだろう。
母は、王妃という地位に拘った。
同じ時期に懐妊したエリノア様に酷い嫉妬心をむき出しにして、彼女をどうやって排除しようかと企んでいたほどだ。
その心を父に知られてしまい。エリノア様への接近禁止を命じられた。
それでも母は、父の愛を求めてやまなかった。
どれほど、父に冷遇されてもいつかきっと自分を愛してくれると信じていたのだ。
母が父の何に魅かれるのかは分からなかったが、異常な執着心が何れ自分に向けられようとは、この時は思ってもいなかった。
エリノア様が先に兄レイノルドを産み落とすと、暫く経って僕が生まれた。父はエリノア様に付きっきりで、母の元には、生まれた僕の名前を書いた紙切れと母への労いの言葉だけを侍従が伝えてきた。
母は狂ったように慟哭し、どうして自分の所に夫が来ないのかと暴れた。そして、狂ったようにエリノア様に呪いの言葉を吐いた。
「あの女が憎い…あの女さえいなければ、愛されていたのはわたくしだったのに」
生まれた時にはガラスのような宝石眼があった。しかし、それは偽物。本物の宝石眼を持つ兄レイノルドとは比べ物にならない、ちっぽけなものだった。
兄には多くの期待を寄せられいるのに、僕は彼の代わりになれるよう努力を強要されるだけのスペア。
それでも、まだ妹フェリシアに比べればまだましだった。
妹はまがい物の宝石眼すら持っていなかったことで、母オパールから見放されていた。
そんな妹が憐れに思えて、僕は妹の境遇の改善を母に訴え続けたが、母は一顧だにしなかった。
あれは僕が4才の年だった。
その年の冬は、性質の悪い流行病が国中を覆った。
当然、身体の弱いフェリシアもその病にかかったが、「治療して欲しい」という乳母の懇願を母は無視した。
深夜に急に僕の所に乳母が助けを求めてきた。
腕に抱き抱えているフェリシアは虫の息。兄レイノルドも癒しの魔法を使えても4才では限度がある。
途方に暮れている僕の前にそれは突如現れた。
光に包まれた女性の姿をした精霊は、僕に契約を持ちかけた。契約すれば癒しの魔法でフェリシアを助ける事ができる。僕に断るという選択はない。
こうして、光の精霊と契約した僕の両目には、契約紋が刻まれ、正真正銘の宝石眼となった。
そして、消え入りそうなフェリシアを癒しの魔法で治療した。
光の精霊に頼んで、乳母の記憶を改ざんし、新薬をフェリシアに与えたことにしたのだ。
僕は精霊と契約したことを誰にも話さなかった。でも、僕の目が真の宝石眼になった事で、母の野望に火が付いた事だけは確かだった。
最初の悲劇は兄と僕の5才の誕生日にそれは起きた。
その隣には僕の大切な唯一の家族…妹のフェリシアがいた。
人見知りが激しい妹が初対面で懐いた少女──。
ベアトリーチェ・チェスター公爵令嬢。
銀色の髪に翠の瞳が美しい少女。
彼女の笑顔を見ているとこっちも幸せな気持ちになっていく。
僕の人生は虚無に満ちていた。
生まれた時から僕の前にはいつもあいつがいた。
僕より数刻早く生まれただけで、宝石眼を持っていただけで、生まれた時から全てを持っていたあいつ。
大っ嫌いなあいつの名前はレイノルド・アルカイドだった。
僕の本当の名前は、ウィルウッド・アルカイド。
この国の第二王子として生まれた僕は、兄レイノルドの影として生きる宿命を持っている。
兄レイノルドが誕生した日、光の精霊が現れて、祝福を与えたのだ。
父ジルベスターは歓喜した。
それもそのはずだ。レイノルドの母は第一妃エリノア様。
実家は王家を長く支えてきた功臣ベルローズ公爵家。
しかも、父の長年の想い人であり、唯一の人だった。
父は妃を迎えるにあたり、慣例を無視してエリノア様だけを妻に迎えるつもりだと宣言した。
だが、頭の固い老臣たちはそれをよしとはしなかった。派閥同士を巻き込んで、結局、父は折れた。それが大きな間違いだったと気付いた時には、全ての事が遅かった。
第二妃マリウェザー様はハウエル侯爵家の三女で、騎士を目指していたこともあり、性格や行動は男性のようだった。
そして、第三妃となった僕の母オパールはブリジット伯爵家の次女だった。伯爵が侍女に産ませた婚外子。そのことが母の最大のコンプレックスだったのだろう。
母は、王妃という地位に拘った。
同じ時期に懐妊したエリノア様に酷い嫉妬心をむき出しにして、彼女をどうやって排除しようかと企んでいたほどだ。
その心を父に知られてしまい。エリノア様への接近禁止を命じられた。
それでも母は、父の愛を求めてやまなかった。
どれほど、父に冷遇されてもいつかきっと自分を愛してくれると信じていたのだ。
母が父の何に魅かれるのかは分からなかったが、異常な執着心が何れ自分に向けられようとは、この時は思ってもいなかった。
エリノア様が先に兄レイノルドを産み落とすと、暫く経って僕が生まれた。父はエリノア様に付きっきりで、母の元には、生まれた僕の名前を書いた紙切れと母への労いの言葉だけを侍従が伝えてきた。
母は狂ったように慟哭し、どうして自分の所に夫が来ないのかと暴れた。そして、狂ったようにエリノア様に呪いの言葉を吐いた。
「あの女が憎い…あの女さえいなければ、愛されていたのはわたくしだったのに」
生まれた時にはガラスのような宝石眼があった。しかし、それは偽物。本物の宝石眼を持つ兄レイノルドとは比べ物にならない、ちっぽけなものだった。
兄には多くの期待を寄せられいるのに、僕は彼の代わりになれるよう努力を強要されるだけのスペア。
それでも、まだ妹フェリシアに比べればまだましだった。
妹はまがい物の宝石眼すら持っていなかったことで、母オパールから見放されていた。
そんな妹が憐れに思えて、僕は妹の境遇の改善を母に訴え続けたが、母は一顧だにしなかった。
あれは僕が4才の年だった。
その年の冬は、性質の悪い流行病が国中を覆った。
当然、身体の弱いフェリシアもその病にかかったが、「治療して欲しい」という乳母の懇願を母は無視した。
深夜に急に僕の所に乳母が助けを求めてきた。
腕に抱き抱えているフェリシアは虫の息。兄レイノルドも癒しの魔法を使えても4才では限度がある。
途方に暮れている僕の前にそれは突如現れた。
光に包まれた女性の姿をした精霊は、僕に契約を持ちかけた。契約すれば癒しの魔法でフェリシアを助ける事ができる。僕に断るという選択はない。
こうして、光の精霊と契約した僕の両目には、契約紋が刻まれ、正真正銘の宝石眼となった。
そして、消え入りそうなフェリシアを癒しの魔法で治療した。
光の精霊に頼んで、乳母の記憶を改ざんし、新薬をフェリシアに与えたことにしたのだ。
僕は精霊と契約したことを誰にも話さなかった。でも、僕の目が真の宝石眼になった事で、母の野望に火が付いた事だけは確かだった。
最初の悲劇は兄と僕の5才の誕生日にそれは起きた。
5
お気に入りに追加
3,944
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
婚約者は妹をご所望のようです…
春野オカリナ
恋愛
レスティーナ・サトラー公爵令嬢は、婚約者である王太子クロイツェルに嫌われている。
彼女は、特殊な家族に育てられた為、愛情に飢えていた。
自身の歪んだ愛情を婚約者に向けた為、クロイツェルに嫌がられていた。
だが、クロイツェルは公爵家に訪問する時は上機嫌なのだ。
その訳は、彼はレスティーナではなく彼女の妹マリアンヌに会う為にやって来ていた。
仲睦まじい様子の二人を見せつけられながら、レスティーナは考えた。
そんなに妹がいいのなら婚約を解消しよう──。
レスティーナはクロイツェルと無事、婚約解消したのだが……。
気が付くと、何故か10才まで時間が撒き戻ってしまっていた。
元王妃は時間をさかのぼったため、今度は愛してもらえる様に、(殿下は論外)頑張るらしい。
あはははは
恋愛
本日わたくし、ユリア アーベントロートは、処刑されるそうです。
願わくは、来世は愛されて生きてみたいですね。
王妃になるために生まれ、王妃になるための血を吐くような教育にも耐えた、ユリアの真意はなんであっただろう。
わあああぁ 人々の歓声が上がる。そして王は言った。
「皆の者、悪女 ユリア アーベントロートは、処刑された!」
誰も知らない。知っていても誰も理解しない。しようとしない。彼女、ユリアの最後の言葉を。
「わたくしはただ、愛されたかっただけなのです。愛されたいと、思うことは、罪なのですか?愛されているのを見て、うらやましいと思うことは、いけないのですか?」
彼女が求めていたのは、権力でも地位でもなかった。彼女が本当に欲しかったのは、愛だった。
前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる