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第一章
契約
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「フェリシア王女様。残念ですがわたしは実はこの国の者ではなかったのです。ですから、この国から出て行って自分の本当の国に帰らなくてはならなくなりました」
「またあえる?あしたならだいじょうぶ」
「いいえ、お会いすることは難しいかもしれません」
「どうして、シアが悪い子だからベティは嫌いになったの?いい子にするからおともだちでいて…」
大きな灰色の瞳を潤ませて、必死でベアトリーチェに懇願してくるフェリシア。その姿にベアトリーチェはかつての自分の姿を思い起こさせる。
レイノルドにしがみ付いて、執着していた頃の醜い自分の姿を…。
ぐすんぐすんと泣いている幼子のようなフェリシアを抱きしめながら、どうか彼女に幸せが訪れる様に祈る事しかできないベアトリーチェは、無力な自分が歯痒くてならない。
すると、ベアトリーチェの意図を読んだかのように、闇の精霊が忙しげにフェリシアの周りを飛び回り、彼女のふわふわの綿毛の様な金色の髪を引っ張っている。
悪戯をしてはダメよ!
とベアトリーチェは心の中で精霊を叱った。
しかし、精霊はベアトリーチェを気にすることなく、まだ髪を引っ張っている。暫くすると、フェリシアの後ろから、黒い髪と黒い瞳を持つ褐色の肌を持った少年が立っていた。
その少年の周りをベアトリーチェの精霊が飛び廻る。
さっきまで泣いていたフェリシアは、現れた少年に向かって、
「ダメよ。出てきちゃ…」
声に出したことを拙いと思ったのか、慌ててフェリシアはその手で口を塞いだ。
じっと、少年を見ているベアトリーチェにフェリシアは、
「ベティ…ベティにも見えるの。わたしも時々見えるんだよ。でも他の人には見えないから、言っちゃダメだと思ってた」
「どうしてですか?」
「まえにじじょの前でこの子にはなしかけたら、おかしな子だと思われたの。だからきらわれるから、だまっていたの。でもベティも見えるんだ。いっしょだね。へへへっ」
屈託ない笑顔で事情を話すフェリシアに、何かを話かけている少年。
「闇の精霊だな。契約をしたがっている」
不意にベアトリーチェの後ろからレオンハルトが声を掛けた。
「闇の精霊ですか?」
「そうだ。どうやら王女が生まれた時から一緒だったらしい。しかし、王女に頼んでも理解してもらえなかったようだ。今までずっと傍で見守っていたと言っている」
「なら、どうやって契約をするんです」
「単純な話だ。名前を付けてやればいいだけだ」
レオンハルトの説明をベアトリーチェはフェリシアに簡単に教えた。
「フェリシア王女様。その子に名前を付けてあげて下さい。そしたら、ずっと一緒にいられますよ」
「そしたら、おともだちになってくれるの?」
「ええ、会いたいときには名前を呼べば、いつでも王女様の元に現れますよ」
「なら、『ノア』がいい。きめた、あなたのなまえは『ノア』よ」
フェリシアが少年に向かってそう呼ぶと、少年はにっこり微笑んで、フェリシアの両瞼にキスをした。目を開けるとフェリシアの両目は黒曜石の様な黒い瞳に変化した。
『ありがとう』
ノアはフェリシアににっこりほほ笑むと、光の粒子になって霧散した。
キラキラと星の輝きのような粒子は、フェリシアの周りを包み込むように舞っている。
───闇の精霊師『フェリシア』が誕生した瞬間だった。
「またあえる?あしたならだいじょうぶ」
「いいえ、お会いすることは難しいかもしれません」
「どうして、シアが悪い子だからベティは嫌いになったの?いい子にするからおともだちでいて…」
大きな灰色の瞳を潤ませて、必死でベアトリーチェに懇願してくるフェリシア。その姿にベアトリーチェはかつての自分の姿を思い起こさせる。
レイノルドにしがみ付いて、執着していた頃の醜い自分の姿を…。
ぐすんぐすんと泣いている幼子のようなフェリシアを抱きしめながら、どうか彼女に幸せが訪れる様に祈る事しかできないベアトリーチェは、無力な自分が歯痒くてならない。
すると、ベアトリーチェの意図を読んだかのように、闇の精霊が忙しげにフェリシアの周りを飛び回り、彼女のふわふわの綿毛の様な金色の髪を引っ張っている。
悪戯をしてはダメよ!
とベアトリーチェは心の中で精霊を叱った。
しかし、精霊はベアトリーチェを気にすることなく、まだ髪を引っ張っている。暫くすると、フェリシアの後ろから、黒い髪と黒い瞳を持つ褐色の肌を持った少年が立っていた。
その少年の周りをベアトリーチェの精霊が飛び廻る。
さっきまで泣いていたフェリシアは、現れた少年に向かって、
「ダメよ。出てきちゃ…」
声に出したことを拙いと思ったのか、慌ててフェリシアはその手で口を塞いだ。
じっと、少年を見ているベアトリーチェにフェリシアは、
「ベティ…ベティにも見えるの。わたしも時々見えるんだよ。でも他の人には見えないから、言っちゃダメだと思ってた」
「どうしてですか?」
「まえにじじょの前でこの子にはなしかけたら、おかしな子だと思われたの。だからきらわれるから、だまっていたの。でもベティも見えるんだ。いっしょだね。へへへっ」
屈託ない笑顔で事情を話すフェリシアに、何かを話かけている少年。
「闇の精霊だな。契約をしたがっている」
不意にベアトリーチェの後ろからレオンハルトが声を掛けた。
「闇の精霊ですか?」
「そうだ。どうやら王女が生まれた時から一緒だったらしい。しかし、王女に頼んでも理解してもらえなかったようだ。今までずっと傍で見守っていたと言っている」
「なら、どうやって契約をするんです」
「単純な話だ。名前を付けてやればいいだけだ」
レオンハルトの説明をベアトリーチェはフェリシアに簡単に教えた。
「フェリシア王女様。その子に名前を付けてあげて下さい。そしたら、ずっと一緒にいられますよ」
「そしたら、おともだちになってくれるの?」
「ええ、会いたいときには名前を呼べば、いつでも王女様の元に現れますよ」
「なら、『ノア』がいい。きめた、あなたのなまえは『ノア』よ」
フェリシアが少年に向かってそう呼ぶと、少年はにっこり微笑んで、フェリシアの両瞼にキスをした。目を開けるとフェリシアの両目は黒曜石の様な黒い瞳に変化した。
『ありがとう』
ノアはフェリシアににっこりほほ笑むと、光の粒子になって霧散した。
キラキラと星の輝きのような粒子は、フェリシアの周りを包み込むように舞っている。
───闇の精霊師『フェリシア』が誕生した瞬間だった。
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