【本編完結】この度、記憶喪失の公爵様に嫁ぐことになりまして

春野オカリナ

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番外編 この想いは永遠に…

憂鬱な会話

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 コンラッド殿下の提案で、私はオーウェン殿下とのお茶会に出席することを止めたのだ。

 あれから何度か話し合いをしたいと手紙が来ていたが、今の私は彼の顔を見て平静でいられる自身がない。

 学園に行っている間は、イランジェ様らと行動することが多くなった。イランジェ様とは同じ王子妃教育を過ごした同士の様な関係だった。

 「ねえ、本当に貴女それでいいの?」

 「何がですか?」

 「オーウェン殿下とのことよ」

 「まだ気持ちの整理がつかないので、お会いしたくないのです」

 「そうね。わたくしも同じような目に遭ったら、確かに戸惑うわ」

 学園のカフェテラスで、そんな事を話していると、向こうから歩いてくるコンラッド殿下を見つけて、イランジェ様が駆けて行った。

 二人は仲良くこちらに向かってきたが、傍から見ても二人の関係には温度差がある様に思えた。

 イランジェ様が火の様な熱を持っているのに対して、コンラッド殿下は氷の様な冷たさを放っている。

 誰もが一目瞭然で、イランジェ様が一方的に好意を寄せている事は分かり易いくらいだ。

 そんな彼が何故あの場に居合わせたのか今でも不思議だった。

 「コンラッド殿下、王宮ではその後、どうなったのですか?」
 
 興味深々で、オーウェン様のその後を聞くイランジェ様。

 「まあ、相変わらずだよ。兄上は…外面は繕っているよ」

 関係はまだ続いているという事なのだろうか。寧ろ、何も言われなかったことでもっとオープンになっているのかもしれない。

 「でもその侍女、男爵家の令嬢でしょう。自身の肩書に箔を付ける為に王宮に入ったのに、これでは嫁げなくなりますわね」

 「相手の女は跡取り娘だ。普通は外には出さないものだが、初めから狙っていたのだろう。兄弟の中で一番落としやすい人間を落としただけだ」

 コンラッド殿下は、無表情で淡々と語って聞かせた。『簡単に落とせる人間』彼の言葉は残酷で、私の心に重く圧し掛かる。

 侍女の実家の男爵家は困窮を極めていて、王宮から支給される給金も仕送りしていたのだろう。それよりも王子に取り入って多くの金銭を得た方が早いと考えたのかもしれないが、王子達にかかる費用だって年単位で決まってる予算の枠内でしか使用できない。

 しかも管理は財務関係者が収支報告を行なっている。婚約者でもない女性への贈り物などに使えば直ぐに分かる。だとすれば、私のドレスや贈り物に使うお金を彼女に宛がっていたのかもしれない。

 オーウェン殿下は理解しているのだろうか。一代限りの公爵は、妻を高位貴族から選ぶことで成り立っている。下級貴族から選べば反発が起こり、その地位を失う事になる。

 そんなリスクを犯してまで彼女に溺れているのだろうか。

 毎日の様にきている手紙には一度話をしたいというが、何の話か見当もつかない。

 「オーウェン殿下から一度話がしたいと手紙が毎日の様にきています」

 「まあ、本当に。どういうつもりなのかしら。その手紙に謝罪の言葉はあったの」

 「いいえ、ただ会って話がしたいとそれだけです」

 私が俯きながらそういうと、コンラッド殿下は、

 「なら私が同席するから、会ってみてはどうかな?少しは進展するかもしれないよ」

 「そうですね。その方がすっきりするかもしれませんね」

 そう言って、私はオーウェン殿下とのお茶会の日取りを決めた。

 その日は、朝から曇天の空模様で、今にも雨が零れ落ちそうだった。

 まるで、私の心をそのまま写し取ったかのような天気だった。



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