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本編 この度、記憶喪失の公爵様に嫁ぐことになりまして
頭の悪い女のすることは…
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王宮に向かう林の中の道を馬車が通り抜けようとしていた時、不審な輩に行先を妨げられていた。
「おい、女が乗っているのは分かっているんだ!出てこい!!」
出てこいと言われて出ていく馬鹿はいない。
無頼な男たちが馬車の扉を無理やり開けようとした時、中から数名の騎士達が飛び出した。
「ここまでだ」
林のあちこちに待機していた騎士達に囲まれて、暴漢たちは年貢の納め時だと抵抗とするのを止めた。
この国の騎士達のは所属する騎士団の色があり、その中でも最も恐れられている『黒の騎士団』が出張って来ていたからだ。
彼らは騎士の中でも特に腕に覚えのある者達ばかりの優秀な人材が集められている。
花形扱いのアイドル騎士『白の騎士団』とは違い、その実力は本物だった。
凶悪犯の捜査が主で、彼らはその手の拷問などにも詳しいのだ。
そんな騎士達がこんな下っ端悪党如きに出張ってきたのには訳があった。
「もうよろしいかしら」
「ああ、もう大丈夫だ」
暴漢を縄で縛りあげてから愛する妻の手を取っているのは、ロバート・カートン伯爵。
『黒の騎士団』の団長を務めている。
その隣でふふふっと淑女の微笑みを絶やさない女性は、デボラ・カートンだった。
「それで、今日貴方方がこの馬車を襲撃したのは、誰に頼まれてのことかしら」
「そ…それは…」
言い淀んでいるが、衝撃した馬車はエステル公爵家の家紋が入っている。
そう、この暴漢たちはとある人物に頼まれて、今日この道を通る公爵家の馬車を襲う様に指示されていた。
「まあ、答えなくてもよろしいですわ。すぐわかることですもの」
暴漢たちは騎士団に引きずられる様に、王宮の拷問部屋に連れて行かれた。
一方その頃、吉報を待ち望んでいた者達がいた。
「まだなの?一体いつになったら報告が来るのよ」
「まあ、待ちなさい。もうすぐよ。これで貴女がラインハルト殿下の妻になれるのよ」
「ははは、じっくりと待とうじゃないか。直に朗報がもたらせるさ」
「そうよね。これであの女がいなくなれば王太子妃は私のものよ」
「そうよ。アデイラ元王太子妃が倒れた今、ウルスラこそその座に相応しいわ。あんなメイドの産んだ汚らわしい女ではなく、正規の令嬢が必要よ」
「そうだ。わが娘ウルスラこそが相応しい」
ここデニーロ伯爵家のサロンで、声高高に三人はアシュリーの訃報を待っていた。
だが、何時までたっても彼らの待つ朗報は来なかった。
彼らが雇った暴漢たちは既に捕えられて、地下牢に収容されていることなど、目先の欲に目が眩んでいる彼らは想像もしていない。
そして、ラインハルトの放った密偵が屋敷に忍び込んでいる事にも気付いていなかったのだ。
レグナから帰ったウルスラはラインハルトが自分を受け入れなかったのは、異母姉であるアシュリーがいる所為だと考えた。
王都に帰るとウルスラは伯爵夫妻にあることないこと吹き込んで、アシュリーがラインハルトとの仲を邪魔をしたと言ったのだ。
伯爵夫妻はウルスラのいう事を真に受けて、今回の計画を立てた。
しかし、屋敷には既にラインハルトの僕が忠実の主の元に全ての事を報告していた為、カートン伯爵家にて打ち合わせ済み。
ラインハルト達は一日早く王都に着き、カートン伯爵家の馬車で王宮に向かっている。
代わりにエステル公爵家の馬車に翌日、カートン夫妻と騎士達が乗っていたという仕組みだ。
自分がどれほどの罪を犯したのか気付いていないウルスラを傍で仕えながら、ほくそ笑んでいるのはメイドとして働いているルースと執事のルーカスだった。
彼らは思う。これで特別休暇と手当てが支給されるとこの件が終われば、隣国サザーランドでゆっくりと観光しようかな。などと夢を見ていた。
だが、残念な事に彼らの夢は、もうじき生まれるアシュリーの赤ん坊の護衛という役割で潰える事になるのだった。
王宮でラインハルトはロバートから襲撃事件の報告を受けているとも知らずにデニーロ伯爵らは、まだ見ぬ栄光を夢見ていたのだった。
二日後のお披露目会までのカウントダウンが始まった。
「おい、女が乗っているのは分かっているんだ!出てこい!!」
出てこいと言われて出ていく馬鹿はいない。
無頼な男たちが馬車の扉を無理やり開けようとした時、中から数名の騎士達が飛び出した。
「ここまでだ」
林のあちこちに待機していた騎士達に囲まれて、暴漢たちは年貢の納め時だと抵抗とするのを止めた。
この国の騎士達のは所属する騎士団の色があり、その中でも最も恐れられている『黒の騎士団』が出張って来ていたからだ。
彼らは騎士の中でも特に腕に覚えのある者達ばかりの優秀な人材が集められている。
花形扱いのアイドル騎士『白の騎士団』とは違い、その実力は本物だった。
凶悪犯の捜査が主で、彼らはその手の拷問などにも詳しいのだ。
そんな騎士達がこんな下っ端悪党如きに出張ってきたのには訳があった。
「もうよろしいかしら」
「ああ、もう大丈夫だ」
暴漢を縄で縛りあげてから愛する妻の手を取っているのは、ロバート・カートン伯爵。
『黒の騎士団』の団長を務めている。
その隣でふふふっと淑女の微笑みを絶やさない女性は、デボラ・カートンだった。
「それで、今日貴方方がこの馬車を襲撃したのは、誰に頼まれてのことかしら」
「そ…それは…」
言い淀んでいるが、衝撃した馬車はエステル公爵家の家紋が入っている。
そう、この暴漢たちはとある人物に頼まれて、今日この道を通る公爵家の馬車を襲う様に指示されていた。
「まあ、答えなくてもよろしいですわ。すぐわかることですもの」
暴漢たちは騎士団に引きずられる様に、王宮の拷問部屋に連れて行かれた。
一方その頃、吉報を待ち望んでいた者達がいた。
「まだなの?一体いつになったら報告が来るのよ」
「まあ、待ちなさい。もうすぐよ。これで貴女がラインハルト殿下の妻になれるのよ」
「ははは、じっくりと待とうじゃないか。直に朗報がもたらせるさ」
「そうよね。これであの女がいなくなれば王太子妃は私のものよ」
「そうよ。アデイラ元王太子妃が倒れた今、ウルスラこそその座に相応しいわ。あんなメイドの産んだ汚らわしい女ではなく、正規の令嬢が必要よ」
「そうだ。わが娘ウルスラこそが相応しい」
ここデニーロ伯爵家のサロンで、声高高に三人はアシュリーの訃報を待っていた。
だが、何時までたっても彼らの待つ朗報は来なかった。
彼らが雇った暴漢たちは既に捕えられて、地下牢に収容されていることなど、目先の欲に目が眩んでいる彼らは想像もしていない。
そして、ラインハルトの放った密偵が屋敷に忍び込んでいる事にも気付いていなかったのだ。
レグナから帰ったウルスラはラインハルトが自分を受け入れなかったのは、異母姉であるアシュリーがいる所為だと考えた。
王都に帰るとウルスラは伯爵夫妻にあることないこと吹き込んで、アシュリーがラインハルトとの仲を邪魔をしたと言ったのだ。
伯爵夫妻はウルスラのいう事を真に受けて、今回の計画を立てた。
しかし、屋敷には既にラインハルトの僕が忠実の主の元に全ての事を報告していた為、カートン伯爵家にて打ち合わせ済み。
ラインハルト達は一日早く王都に着き、カートン伯爵家の馬車で王宮に向かっている。
代わりにエステル公爵家の馬車に翌日、カートン夫妻と騎士達が乗っていたという仕組みだ。
自分がどれほどの罪を犯したのか気付いていないウルスラを傍で仕えながら、ほくそ笑んでいるのはメイドとして働いているルースと執事のルーカスだった。
彼らは思う。これで特別休暇と手当てが支給されるとこの件が終われば、隣国サザーランドでゆっくりと観光しようかな。などと夢を見ていた。
だが、残念な事に彼らの夢は、もうじき生まれるアシュリーの赤ん坊の護衛という役割で潰える事になるのだった。
王宮でラインハルトはロバートから襲撃事件の報告を受けているとも知らずにデニーロ伯爵らは、まだ見ぬ栄光を夢見ていたのだった。
二日後のお披露目会までのカウントダウンが始まった。
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