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本編 この度、記憶喪失の公爵様に嫁ぐことになりまして

久しぶりの王都です

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 王都に着くとハルト様は、カートン伯爵家を訪ねた。

 既に先触れを出していた為、門番も直ぐに門を開けてくれたのだ。

 中に案内されるとエントランスホールで先生ことデボラ・カートン伯爵夫妻が待っていた。

 「エステル公爵ご夫妻、当家にようこそおいで下さいました」

 「ああ、すまないが王都に滞在する間、世話を掛けるがよろしくお願いする」

 「はい、お任せください」

 「先生、いえ。伯爵夫人、お久しぶりですね」

 「ええ、アシュリー様もお元気すそうで良かったですわ」

 先生と久しぶりに会った私は喜びを噛み締めていた。

 「妻は産み月間近だから、慎重に頼むよ」

 「お任せ下さい。わたくしも出産経験がございますので、よく心得ております」

 先生はそう言って、私達を部屋に案内してくれた。

 晩餐には小さな男の子が二人いた。先生のお子様だった。

 嫡男がセドリック、次男がバゼルと言ってとてもかわいい子供だった。

 私の大きなお腹を見ながら、

 「この子が女の子だったら、お嫁にほしい」

 と言ってくれた。

 「どうして?お嫁に欲しいの」

 「だって、公爵夫人の娘なら美しいでしょう」

 そう言った途端、何だか冷たい冷気に混じって殺気を感じて振り向くと、ハルト様が物凄く嫌な黒い笑みを見せている。

 隣のロバート様とアルバート様も顔色が悪い。

 「ラインハルト様、子供のいう事ですから真に受けないでください」

 と小声で言っているのが聞こえてきた。

 「あら、ふふふ、二人ともアシュリー様に一目ぼれしたのかしら」

 「「はい」」

 という元気な声が返ってきた。

 何だか背筋が凍りそうなほどの寒気がしたのは気のせいだと思いたい。

 「あらあら、アシュリー様は愛されていますね」

 と言っているが、子供相手でもハルト様が容赦しなそうなので止めてほしい。

 「悪いけれど、アシュリーは僕の可愛い奥さんだから渡さないよ。それにその子もね。どうしても欲しいのならその子に選ばれるように努力してね」

 にっこりと美麗な微笑みを子供たちに向けていたが、子供達はひきつけを起こしそうな程怯えている。

 夢に出そうだな。

 などと思っていたら、私の腰を引き寄せて額に軽く口付けを落とした。

 これは所謂マーキングですか?

 人前でやめて下さい。

 ピカッと光る素晴らしい笑顔を私に向けるのもやめて下さい。

 私のHPが減っていくのを感じながら、晩餐は和やか?に終わった。

 晩餐の後、先生は私を連れてサロンに向かった。

 そこで、出産や子供の世話などの話をしてくれた。

 楽しい話も終わって、私は先に部屋に戻ったのだ。
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