23 / 48
本編 この度、記憶喪失の公爵様に嫁ぐことになりまして
王都に帰ってきました
しおりを挟む
夏の暑さが終わり、少し肌寒くなってきた秋。
紅葉にはまだ早い時季に王都から延期された夜会が開かれることになった。
私とハルト様も出席するよう伝えられた。今回の出席者にはサザーランド国からペティール侯爵が参加する旨の通達がきている。
馬車から車窓を眺めていた私にハルト様が、
「アシュリー、王都に着いたらアルバートの所に行こうと考えているんだ。陛下からも王宮に泊まる事を勧められているが、僕は君を王宮に連れて行きたくないんだ」
「でも、ペティール侯爵は王宮に泊まられるのでしょう?それにハルト様のお部屋を見てみたいと思うのですが、いけませんか」
「僕の部屋はもうないと思うよ。直に弟が使うからね」
「そうですか」
彼が育った思い出の部屋を覗いて見たかった私はガクリと肩を落とす。でもよく考えれば王宮から出た王子の部屋をそのままにしておくわけがない。しかも王太子の部屋だったのだからそれも当然かな。
「なら、カートン伯爵家はどうだろう。彼女からも王都に来る際は部屋を用意して待っていると手紙がきている」
「それなら嬉しいです。先生のお宅にお伺いを立てて下さい」
「ああ、そのように先触れを出しておこう」
ハルト様は不安そうな私の顔が晴れやかになったのを見て、安堵した表情を見せた。
同じ道を通っているはずなのに、今はなんだかとても楽しい。初めて王都からレグナに向かう馬車の中で、今ほどの気持ちはなかったと思う。
たぶん、今度はハルト様が一緒だからかもしれない。
一人よりも二人の方度は楽しいのだと初めて思った。
馬車から見える景色さえも前回よりも色鮮やかに見える私はなんだかんだいっても現金なのだ。
馬車の中でもハルト様は書類を確認している。こんなに忙しいのに、どうして暇を見つけては私の元に来れるのか不思議だ。
そんな事を考えているとお腹の子が蹴っている。きっとこの子も早く外に出たいと言っているようで最近その頻度が増えてきている。
「どうしたの?気分が悪くなった」
「いいえ、子供が最近お腹をよく蹴るので、早く外に出たいのかなっと思っただけです」
「いけない子だな。母親を困らせて、生まれてくればお仕置きが必要だな」
そんな事を冗談交じりに呟いていたハルト様。ふふっと二人で笑いあっていた。
馬車はそんな私たちを静かに王都まで運んで行った。
紅葉にはまだ早い時季に王都から延期された夜会が開かれることになった。
私とハルト様も出席するよう伝えられた。今回の出席者にはサザーランド国からペティール侯爵が参加する旨の通達がきている。
馬車から車窓を眺めていた私にハルト様が、
「アシュリー、王都に着いたらアルバートの所に行こうと考えているんだ。陛下からも王宮に泊まる事を勧められているが、僕は君を王宮に連れて行きたくないんだ」
「でも、ペティール侯爵は王宮に泊まられるのでしょう?それにハルト様のお部屋を見てみたいと思うのですが、いけませんか」
「僕の部屋はもうないと思うよ。直に弟が使うからね」
「そうですか」
彼が育った思い出の部屋を覗いて見たかった私はガクリと肩を落とす。でもよく考えれば王宮から出た王子の部屋をそのままにしておくわけがない。しかも王太子の部屋だったのだからそれも当然かな。
「なら、カートン伯爵家はどうだろう。彼女からも王都に来る際は部屋を用意して待っていると手紙がきている」
「それなら嬉しいです。先生のお宅にお伺いを立てて下さい」
「ああ、そのように先触れを出しておこう」
ハルト様は不安そうな私の顔が晴れやかになったのを見て、安堵した表情を見せた。
同じ道を通っているはずなのに、今はなんだかとても楽しい。初めて王都からレグナに向かう馬車の中で、今ほどの気持ちはなかったと思う。
たぶん、今度はハルト様が一緒だからかもしれない。
一人よりも二人の方度は楽しいのだと初めて思った。
馬車から見える景色さえも前回よりも色鮮やかに見える私はなんだかんだいっても現金なのだ。
馬車の中でもハルト様は書類を確認している。こんなに忙しいのに、どうして暇を見つけては私の元に来れるのか不思議だ。
そんな事を考えているとお腹の子が蹴っている。きっとこの子も早く外に出たいと言っているようで最近その頻度が増えてきている。
「どうしたの?気分が悪くなった」
「いいえ、子供が最近お腹をよく蹴るので、早く外に出たいのかなっと思っただけです」
「いけない子だな。母親を困らせて、生まれてくればお仕置きが必要だな」
そんな事を冗談交じりに呟いていたハルト様。ふふっと二人で笑いあっていた。
馬車はそんな私たちを静かに王都まで運んで行った。
51
あなたにおすすめの小説
契約結婚なら「愛さない」なんて条件は曖昧すぎると思うの
七辻ゆゆ
ファンタジー
だからきちんと、お互い納得する契約をしました。完全別居、3年後に離縁、お金がもらえるのをとても楽しみにしていたのですが、愛人さんがやってきましたよ?
なんでも押し付けてくる妹について
里見知美
恋愛
「ねえ、お姉さま。このリボン欲しい?」
私の一つ下の妹シェリルは、ことある毎に「欲しい?」と言っては、自分がいらなくなったものを押し付けてくる。
しかもお願いっていうんなら譲ってあげる、と上から目線で。
私よりもなんでも先に手に入れておかないと気が済まないのか、私が新品を手に入れるのが気に食わないのか。手に入れてしまえば興味がなくなり、すぐさま私に下げ渡してくるのである。まあ、私は嫡女で、無駄に出費の多い妹に家を食い潰されるわけにはいきませんから、再利用させていただきますが。
でも、見た目の良い妹は、婚約者まで私から掠め取っていった。
こればっかりは、許す気にはなりません。
覚悟しなさいな、姉の渾身の一撃を。
全6話完結済み。
婚約破棄?はい、どうぞお好きに!悪役令嬢は忙しいんです
ほーみ
恋愛
王国アスティリア最大の劇場──もとい、王立学園の大講堂にて。
本日上演されるのは、わたくしリリアーナ・ヴァレンティアを断罪する、王太子殿下主催の茶番劇である。
壇上には、舞台の主役を気取った王太子アレクシス。その隣には、純白のドレスをひらつかせた侯爵令嬢エリーナ。
そして観客席には、好奇心で目を輝かせる学生たち。ざわめき、ひそひそ声、侮蔑の視線。
ふふ……完璧な舞台準備ね。
「リリアーナ・ヴァレンティア! そなたの悪行はすでに暴かれた!」
王太子の声が響く。
婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~
春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。
6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。
14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します!
前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。
【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】
私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約してました~
marumi
恋愛
大国、セレスティア帝国に生まれた皇女エリシアは、争いも悲しみも知らぬまま、穏やかな日々を送っていた。
しかしある日、帝都を揺るがす暗殺事件が起こる。
紅蓮に染まる夜、失われた家族。
“死んだ皇女”として歴史から名を消した少女は、
身分を隠し、名前を変え、生き延びることを選んだ。
彼女を支えるのは、代々皇族を護る宿命を背負う
アルヴェイン公爵家の若き公子、ノアリウス・アルヴェイン。
そして、神を祀る隣国《エルダール》で出会った、
冷たい金の瞳をした神子。
ふたつの光のあいだで揺れながら、
エリシアは“誰かのための存在”ではなく、
“自分として生きる”ことの意味を知っていく。
これは、名前を捨てた少女が、
もう一度「名前」を取り戻すまでの物語。
※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。
【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました
よどら文鳥
恋愛
ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。
ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。
ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。
更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。
再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。
ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。
後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。
ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。
(完)婚約解消からの愛は永遠に
青空一夏
恋愛
エリザベスは、火事で頬に火傷をおった。その為に、王太子から婚約解消をされる。
両親からも疎まれ妹からも蔑まれたエリザベスだが・・・・・・
5話プラスおまけで完結予定。
婚約破棄された王太子妃候補ですが、私がいなければこの国は三年で滅びるそうです。
カブトム誌
恋愛
王太子主催の舞踏会。
そこで私は「無能」「役立たず」と断罪され、公開の場で婚約を破棄された。
魔力は低く、派手な力もない。
王家に不要だと言われ、私はそのまま国を追放されるはずだった。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
この国が長年繁栄してきた理由も、
魔獣の侵攻が抑えられていた真の理由も、
すべて私一人に支えられていたことを。
私が国を去ってから、世界は静かに歪み始める。
一方、追放された先で出会ったのは、
私の力を正しく理解し、必要としてくれる人々だった。
これは、婚約破棄された令嬢が“失われて初めて価値を知られる存在”だったと、愚かな王国が思い知るまでの物語。
※ざまぁ要素あり/後半恋愛あり
※じっくり成り上がり系・長編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる