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本編 この度、記憶喪失の公爵様に嫁ぐことになりまして
カートン伯爵夫人とは
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ベッドに気怠そうに寝転がっていると、ハルト様が私の身体を引き寄せながら、
「さて何から話そうかな」
「あのう、カートン夫人とはお知り合いなのですか?」
「ああ、彼女は生徒会のメンバーで一緒だってね。書紀をしていたんだよ。因みに僕は会長をしていたよ」
「そうなんですね」
「なかなかの才女で、伯爵家の跡取り娘だった。ロバート・フェネス公爵令息と恋仲でね。彼を婿に迎えたよ。僕は、王太子でいたくなかった。だから弟たちが仕掛けた罠にわざとこれ幸いに乗っかったんだよ」
ハルト様は私の髪をくるくると指で弄びながら、私の額に口付けを落とした。なんだか恥ずかしい…。
「それから…」
「君は14才時に社交界デビューするはずだったんだが、伯爵は貴族の義務を果たさないばかりか君を屋敷に閉じ込めていた。でも不審に思った他の貴族から君の事を根ほり葉ほり聞かれるから、隠し通せなくなっていたんだ。そこで、同じ伯爵家のカートン家に家庭教師の話を持って行ったんだよ」
「どうしてそんなに詳しいのですか」
「ああ、時たまカートン伯爵夫人から手紙が来ていてね。『面白い令嬢を見つけた』と書いて寄越していた」
「面白い令嬢ですか…」
ちょっとその言葉は引っ掛かるが、この際それは置いておこう。
「まあ、カートン伯爵夫人にすれば、話のネタになるいい素材に巡り合えたっと言うところかな」
「話のネタですか」
「はは。あまり深く考えないでいいよ。僕も彼女の話のネタにされているからね。寧ろ彼女のおかげでシュリに会えたことを感謝しているよ」
「カートン伯爵夫人のおかげ?」
「そうだよ、彼女が夜会やお茶会で君の事を『病弱な深窓の令嬢』と広めたおかげで陛下がデニーロ伯爵家に縁談を持って行っただろう。だから君が来た」
「もしかして、私が来るって知ってました?」
「さあ、どうだろうね」
クスクスと笑ってごまかしていたが、きっと何か小細工をしたに違いない。
どちらにしてもカートン伯爵夫人が私の家庭教師をしていたわけが分かっって良かった。伯爵夫人が働くなんてそんなにない事なのに…ん?でも夫人は物書きだと言っていたような?
「あれっ…?夫人は創作小説を書いていると聞いた事があったんですが…」
「そういえば、ロマンス小説を書いていたなあ。僕をモデルにしたいって言っていたような…実名が出ない様に注意して許可した覚えがある」
「もしかして、今の私達の話も書いているんでしょうか?」
「そうかもしれないね」
ハルト様は知っていてもはっきりとは言わない。断言しないのだ。それはちょっと狡いなあと思ってしまった。
それから、ハルト様は自分の過去を私に打ち明けたのだ。
「さて何から話そうかな」
「あのう、カートン夫人とはお知り合いなのですか?」
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ハルト様は私の髪をくるくると指で弄びながら、私の額に口付けを落とした。なんだか恥ずかしい…。
「それから…」
「君は14才時に社交界デビューするはずだったんだが、伯爵は貴族の義務を果たさないばかりか君を屋敷に閉じ込めていた。でも不審に思った他の貴族から君の事を根ほり葉ほり聞かれるから、隠し通せなくなっていたんだ。そこで、同じ伯爵家のカートン家に家庭教師の話を持って行ったんだよ」
「どうしてそんなに詳しいのですか」
「ああ、時たまカートン伯爵夫人から手紙が来ていてね。『面白い令嬢を見つけた』と書いて寄越していた」
「面白い令嬢ですか…」
ちょっとその言葉は引っ掛かるが、この際それは置いておこう。
「まあ、カートン伯爵夫人にすれば、話のネタになるいい素材に巡り合えたっと言うところかな」
「話のネタですか」
「はは。あまり深く考えないでいいよ。僕も彼女の話のネタにされているからね。寧ろ彼女のおかげでシュリに会えたことを感謝しているよ」
「カートン伯爵夫人のおかげ?」
「そうだよ、彼女が夜会やお茶会で君の事を『病弱な深窓の令嬢』と広めたおかげで陛下がデニーロ伯爵家に縁談を持って行っただろう。だから君が来た」
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「そうかもしれないね」
ハルト様は知っていてもはっきりとは言わない。断言しないのだ。それはちょっと狡いなあと思ってしまった。
それから、ハルト様は自分の過去を私に打ち明けたのだ。
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