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監視
しおりを挟むブライアンはいつも視線を感じている。
それは見守る監視という視線だ。
ブライアンが前の時の様に愚かなマネをしない様に、記憶を持つ周りの人間が監視をしている。
それはあの監禁生活よりある意味自由なのかもしれないが別の意味では孤独なのだ。
だが、それが自分に与えられた罰……。
ブライアンは、息子夫婦の所には顔を出さない様にしている。
そこにはイエニーがいるからだ。
前の時のような表情をしていない、彼女に心が揺さぶられる。
暗い陰湿な表情は、明るく活力ある表情に変わっていた。
その微笑みが自分に向けられることは二度とない事を知りながら、ふと何処かで期待する愚かな自分がいる。
接触すれば、また自分は愚かな行動に出て、イエニーの幸せを壊すかもしれない。
そんな事は赦されない。
ブライアンはだからフラウ家には近づかない。
孫たちに囲まれて静かに人生の幕を閉じるとき、前の時もその前の時にも感じなかった安らぎを覚えた。
一度目はのたれ死んだ。二度目は殺された。どちらも自業自得なのだ。
だが、今世の終わりは満ち足りている。
こんな人生を送れたのはきっとイエニーのおかげなのだ。
彼女がもし、あの復讐を果たさなかったら自分が悔い改める日は来なかっただろう。
肉欲に溺れて、のたれ死ぬ運命しかなかったはずだ。
それでも願ってしまう。もし、赦されるならイエニーと過ごす平穏な人生を送ってみたい…。
だが、それは幻だ。
彼女に関わらなかったから今の幸せがあるのだから…。
また、彼女に関わればきっと自分は過ちを繰り返すだろう。
何処かで肯定する自分がいた。
自分を含め、多くの人がイエニー・フラウに囚われているのだ。
それは彼女に対する執着なのか嫉妬なのかはわからない。
ただ、今は祈るだけだ。
次の世でも平凡な幸せがあることを。
それが人間の人生において一番難しいことをイエニーとブライアンは誰よりも知っているからだ。
ブライアンは静かに目を閉じた。
その3年後にイエニーもこの世を去った。
三度目のやり直しでは二人は直接関わりを持たなかった。だから他の人の人生を狂わせることなく穏やかに終わらせる事ができたのだ。
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みんなの感想(5件)
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監視の回でブライアンは一度目の記憶をどこで取り戻したのでしょうか
その辺りの説明がなかったのですが私の読解力のせいでしょうか
野垂れ死んたようですがあの後で家が取り潰しにでもなったのですか?
イエニーは自分のブライアンへの愛を踏みにじられたと言うけど、ブライアンのメリルへの愛は尊重しないんだなーと思いました。
確かにブライアンはクズだけど、イエニー以外を愛する権利はあると思うし、2度目の人生はブライアンの気持ちを尊重して、ブライアンを諦めるべきだったと思います。
何だかただの逆恨みっぽいです。
イエニーの心を癒したのは、復讐を果たした事でもブライアンの改心でもなく、不仲にならず愛して育ててくれた両親と、愛してくれたグレゴリーですね。
ブライアンの幸せを祝えない私は心が狭いのでしょうか?誰からも愛されず、前世の自分を悔やみながら、謝る事も許されずに一人の人生を歩いて欲しかったと思ってしまいました。
名なしの主婦様
ご感想ありがとうございます(◕ᴗ◕✿)
大丈夫です。彼はずっと見張られたままの一生を終えるので、自由はある意味無いのです(・o・)
それがこの話のオチです<( ̄︶ ̄)↗