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悪党は夜動く法則って本当?
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公爵邸に着くと、アリスはどうして帰宅が早いのか気になった様で、わたしに問い掛けた。
「おじょ…奥様。やけにお早い御帰りですね」
「まあ、予定が狂っちゃって…」
「では、このまま屋敷で大人しくされるのですか?」
「夜までは…」
「はあーっ、ここは大人しく待っていると言うところだと思いますが…」
「だって、気になって仕方がないのよ」
「だからといって何もおじょ…奥様が出しゃばらなくても」
今、出しゃばるって言ったかしら?いつもながらアリスは容赦ないわね。主に対して…。
しかし、わたしのそんな気持ちも関係なく、公爵家にその夜、侵入者が現れた。
目的はシュゼットの双子の片割れソルト。
窓ガラスが割れ、待機していた騎士達の何人かが怪我をしたが、何とか侵入者を拘束出来た。
「ソルト、この人たちの中に見知った人はいる?」
「その髭の男には見覚えがある。俺にシュゼットのことを知らせた男と一緒にいた」
「なら、この男に白状させればいいのね」
「な…何するんだ?いやな予感しかしないんだけど…」
「心配しないでいいわよ。ちょっと遊んでもらうだけだから」
わたしは、後ろで大きな欠伸をしながら、前足を舐めているロンの方を見て笑った。
「ひっ!!魔女みたいだ」
とソルトが呟いた事は忘れない。この件が終わったらロンと遊んでもらおうと考えた。
騎士達に頼んで、髭男を大きな木に吊るして、少し揺らすと、ロンの瞳が輝いた。
揺れる新しい玩具を認識したロンは、尻尾をブンブン振って、全長3メートルにも及ぶ巨体で飛びかかった。
高速猫パンチならぬ人間サンドバックの出来上がりである。
バシッ、バシッと小気味良い音が響き渡る中、傍で見ていたソルトと騎士達の顔の色が変化する。
侵入者たちの顔と体は赤くなっていく。
「だずげて~~~~~っ!!」
と、泣き叫んでいた。
あまりにも揺れ過ぎて、木の枝が大きく軋んだと思ったら、バキッと音を立てて折れてしまった。
髭男達侵入者はバタリとその場に重なるように倒れて、逃げよう必死でもがいていた。
ロンは侵入者たちを前足で器用に転がして遊んでいる。
髭男は他の仲間を見捨てて、逃げようとしたところに、わたしは躊躇うことなくボーガンの矢を放った。
矢は、髭男の目の前を横切り、隣の木に刺さった。
ビィヨーンと鏃が揺れている。それを見て放った私の方を交互に見た。
そして、誰が上なのか悟ったかのように髭男は奇襲の目的をペラペラと勝手に喋り出した。
彼らはガマガエル宰相に言われてソルトをある場所に連れて行こうとした。
その場所に行けばシュゼットに会えると唆して…。でも本当は多くを知ってしまったシュゼットと一緒に殺すかも知れない。
全ての罪を着せて…。
そう思うと私の中でふつふつと怒りが湧いてきた。
領地で育ったわたしはお転婆で、地元でも有名な程の悪がきだったのだから、ここで大人しく出来る訳がない。
「ねえ、ソルトと一緒にわたしも連れて行ってくれないかしら?」
「な…なんであんたも一緒なんだよ!!」
ソルトは驚いて、わたしの顔をじっと見た。
そりゃあ、このまま、彼らを王宮に突き出せばあらかたの事情は聞き取れるだろうが、果たしてそれで、後ろで手を引いている悪党どもまで一網打尽に出来るのかと言えば、違うだろう。
結局確証がなければ、トカゲのしっぽ切りのように彼らを見捨てて、ちゃっかり自分は安全な所で高みの見物をするのに違いない。
だったら、敵陣に乗り込んで、この目で悪党どもの顔を見てみたいという衝動に駆られていた。
それに何故か、悪党は夜に行動るのよね。
そうしてだか、そういう法則になっているらしい。
わたしの睨みが効いたのか?髭男は大人しくわたしとソルトを目的の場所に連れて行くことに同意した。
すぐさま、公爵家お抱えの凄腕の騎士達に召集をかけた執事長が、こっそり馬でわたしたちを乗せた馬車を追尾した。
わたしは、エミリアからもらった服に着替えている。
それにしても、今にも底板が外れそうなボロボロの馬車に乗せられるとは思っていなかったが、これこれで好都合。
外れそうな底板の隙間から、わたしはあるものをこっそり落としていた。
それを彼なら拾い食いしながら追ってくれるだろう。
そう期待しながら、ものすごーく揺れる馬車でクスリ(ニタリ)と嗤っていると、
「ほんとうに魔女みたいだから、怖いから止めてくれ!」
ソルトはそう言って、少し涙目になっている。
馬車は進むよどこまでも…。
その先には鬼が出るのか蛇が出るのか?
いや、きっとお花畑馬鹿女とワガママン王女、ガマガエル宰相が待っている。
わくわくしながら、わたしは窮屈な馬車の時間を過ごしていた。
「おじょ…奥様。やけにお早い御帰りですね」
「まあ、予定が狂っちゃって…」
「では、このまま屋敷で大人しくされるのですか?」
「夜までは…」
「はあーっ、ここは大人しく待っていると言うところだと思いますが…」
「だって、気になって仕方がないのよ」
「だからといって何もおじょ…奥様が出しゃばらなくても」
今、出しゃばるって言ったかしら?いつもながらアリスは容赦ないわね。主に対して…。
しかし、わたしのそんな気持ちも関係なく、公爵家にその夜、侵入者が現れた。
目的はシュゼットの双子の片割れソルト。
窓ガラスが割れ、待機していた騎士達の何人かが怪我をしたが、何とか侵入者を拘束出来た。
「ソルト、この人たちの中に見知った人はいる?」
「その髭の男には見覚えがある。俺にシュゼットのことを知らせた男と一緒にいた」
「なら、この男に白状させればいいのね」
「な…何するんだ?いやな予感しかしないんだけど…」
「心配しないでいいわよ。ちょっと遊んでもらうだけだから」
わたしは、後ろで大きな欠伸をしながら、前足を舐めているロンの方を見て笑った。
「ひっ!!魔女みたいだ」
とソルトが呟いた事は忘れない。この件が終わったらロンと遊んでもらおうと考えた。
騎士達に頼んで、髭男を大きな木に吊るして、少し揺らすと、ロンの瞳が輝いた。
揺れる新しい玩具を認識したロンは、尻尾をブンブン振って、全長3メートルにも及ぶ巨体で飛びかかった。
高速猫パンチならぬ人間サンドバックの出来上がりである。
バシッ、バシッと小気味良い音が響き渡る中、傍で見ていたソルトと騎士達の顔の色が変化する。
侵入者たちの顔と体は赤くなっていく。
「だずげて~~~~~っ!!」
と、泣き叫んでいた。
あまりにも揺れ過ぎて、木の枝が大きく軋んだと思ったら、バキッと音を立てて折れてしまった。
髭男達侵入者はバタリとその場に重なるように倒れて、逃げよう必死でもがいていた。
ロンは侵入者たちを前足で器用に転がして遊んでいる。
髭男は他の仲間を見捨てて、逃げようとしたところに、わたしは躊躇うことなくボーガンの矢を放った。
矢は、髭男の目の前を横切り、隣の木に刺さった。
ビィヨーンと鏃が揺れている。それを見て放った私の方を交互に見た。
そして、誰が上なのか悟ったかのように髭男は奇襲の目的をペラペラと勝手に喋り出した。
彼らはガマガエル宰相に言われてソルトをある場所に連れて行こうとした。
その場所に行けばシュゼットに会えると唆して…。でも本当は多くを知ってしまったシュゼットと一緒に殺すかも知れない。
全ての罪を着せて…。
そう思うと私の中でふつふつと怒りが湧いてきた。
領地で育ったわたしはお転婆で、地元でも有名な程の悪がきだったのだから、ここで大人しく出来る訳がない。
「ねえ、ソルトと一緒にわたしも連れて行ってくれないかしら?」
「な…なんであんたも一緒なんだよ!!」
ソルトは驚いて、わたしの顔をじっと見た。
そりゃあ、このまま、彼らを王宮に突き出せばあらかたの事情は聞き取れるだろうが、果たしてそれで、後ろで手を引いている悪党どもまで一網打尽に出来るのかと言えば、違うだろう。
結局確証がなければ、トカゲのしっぽ切りのように彼らを見捨てて、ちゃっかり自分は安全な所で高みの見物をするのに違いない。
だったら、敵陣に乗り込んで、この目で悪党どもの顔を見てみたいという衝動に駆られていた。
それに何故か、悪党は夜に行動るのよね。
そうしてだか、そういう法則になっているらしい。
わたしの睨みが効いたのか?髭男は大人しくわたしとソルトを目的の場所に連れて行くことに同意した。
すぐさま、公爵家お抱えの凄腕の騎士達に召集をかけた執事長が、こっそり馬でわたしたちを乗せた馬車を追尾した。
わたしは、エミリアからもらった服に着替えている。
それにしても、今にも底板が外れそうなボロボロの馬車に乗せられるとは思っていなかったが、これこれで好都合。
外れそうな底板の隙間から、わたしはあるものをこっそり落としていた。
それを彼なら拾い食いしながら追ってくれるだろう。
そう期待しながら、ものすごーく揺れる馬車でクスリ(ニタリ)と嗤っていると、
「ほんとうに魔女みたいだから、怖いから止めてくれ!」
ソルトはそう言って、少し涙目になっている。
馬車は進むよどこまでも…。
その先には鬼が出るのか蛇が出るのか?
いや、きっとお花畑馬鹿女とワガママン王女、ガマガエル宰相が待っている。
わくわくしながら、わたしは窮屈な馬車の時間を過ごしていた。
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