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罰
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「ああ、そんなに怯えないで私のサフィ。これは君を生かす為の手段何だよ。あの女が犯した罪によって何の罪のない君や使用人、領民が罰せられるのを君だって見たくないだろう」
殿下は甘く悪魔の様な声で私を誘惑する。まるでそうしなければならない様に仕向けている。私はそんな殿下が憎らしくてキッと睨むように目を向けた。
「ふふ、君でもそんな顔をするんだね。いつもの君よりずっと魅力的だよ。これからも私にだけありのままの君を見せて欲しい」
そう言いながら、私の髪を一房手に取り口付けを落とす姿は憎々しいほど絵になっている。
呆気にとられている私とは対象的なユリウス様は何か言いたげな表情を浮かべていた。
「殿下、私は今ユリウス様の婚約者です。その申し出は受けられません」
「だそうだよ。ユリウス説明してやって欲しい」
殿下にそう促されたユリウス様は
「婚約は殿下からの提案だ。それに君の命を守る為には他に手立てがないのだ。分かってほしい」
「では、私に囁いた言葉は偽りだったのですか?」
愛していると言ったのは本心ではないのだろうか?そうなら私の気持ちを揺さぶる様な言葉は欲しくなかった。
「殿下の前ではっきり言っておこう。私の言った言葉に偽りはなかった。しかし、私にもどうしようもない事だ。理解してほしい。私の立場を…」
私にもユリウス様の辛い立場は理解できた。妹の犯した罪は重い。国家反逆罪に問われても誰も文句が言えない程の罪だ。
明るみになれば公爵家の人間は処刑され、使用人らも路頭に迷うことになる。領民も領主次第で今の生活より困窮を極める事になるかもしれない。もし、ユリウス様が私を逃がす為に手を尽くしたなら彼の輝かしい未来を奪う事になるのだから。
彼は普通の公爵令息ではなく今、現在の王位継承権第二位の資格を持っている。王太子殿下に何かあれば彼が王位を継ぐのだから、迂闊なことは出来ないだろう。
彼の心中を全て推し量ることは出来ないが私にも彼の身にかかる重圧は理解できた。
だが、まだわからないのは、何故ローズマリアの子供が、殿下の血筋でない事が分かったのかという事だ。私は思い切って訊ねてみることにした。
「殿下、何故ローズマリアの産んだ子供が殿下の子供ではないと分かったのですか?」
「ああ、君は婚約者だったから知らされていないのだね。これは王家の秘密だ。私とユリウスは本当は同じ髪の色なんだ。この髪は王族だけが持って生まれる。ユリウスには髪の色を染めてもらっているんだよ。私と見分けが付く様にね。しかし、あの女の産んだ子供には王族特有の髪を持って生まれなかった。つまり他の人間の子種で授かった子供だという事だよ」
「では、本当の父親は誰なのですか?」
「はは、王宮に勤める平民上がりの騎士だった。実家に宿下がりをしている時に度々密会していたようだ。そうならそうと言えば婚約を解消したのに、どこまでも君を貶め、苦しめる忌々しい女だ」
「殿下、いくら殿下が尊い身分の方でも死んだ人間を悪し様に言うなんて、殿下らしくありません」
「ああ、君にはまだ知らせていないな。あの女は生きているよ。今は北の塔に閉じ込めている。長い事使っていなかったから、中は寂れているかも知れないがあの女には相応しい場所だと思うがな」
殿下の言葉に私は驚いた。妹は生きている。亡くなったと言うのは表向きの事。今は罰を与える為の保留期間という事なのか。
「殿下、お願いです。妹が生きているなら妹に会わせて頂けないでしょうか。彼女の口から本当の事を聞きたいのです」
「いいだろう。あの女から直接聞くがいい。その上でこれからの事を考えればいい」
私は殿下に連れられて、ローズマリアのいる北の塔に向かったのだ。
殿下は甘く悪魔の様な声で私を誘惑する。まるでそうしなければならない様に仕向けている。私はそんな殿下が憎らしくてキッと睨むように目を向けた。
「ふふ、君でもそんな顔をするんだね。いつもの君よりずっと魅力的だよ。これからも私にだけありのままの君を見せて欲しい」
そう言いながら、私の髪を一房手に取り口付けを落とす姿は憎々しいほど絵になっている。
呆気にとられている私とは対象的なユリウス様は何か言いたげな表情を浮かべていた。
「殿下、私は今ユリウス様の婚約者です。その申し出は受けられません」
「だそうだよ。ユリウス説明してやって欲しい」
殿下にそう促されたユリウス様は
「婚約は殿下からの提案だ。それに君の命を守る為には他に手立てがないのだ。分かってほしい」
「では、私に囁いた言葉は偽りだったのですか?」
愛していると言ったのは本心ではないのだろうか?そうなら私の気持ちを揺さぶる様な言葉は欲しくなかった。
「殿下の前ではっきり言っておこう。私の言った言葉に偽りはなかった。しかし、私にもどうしようもない事だ。理解してほしい。私の立場を…」
私にもユリウス様の辛い立場は理解できた。妹の犯した罪は重い。国家反逆罪に問われても誰も文句が言えない程の罪だ。
明るみになれば公爵家の人間は処刑され、使用人らも路頭に迷うことになる。領民も領主次第で今の生活より困窮を極める事になるかもしれない。もし、ユリウス様が私を逃がす為に手を尽くしたなら彼の輝かしい未来を奪う事になるのだから。
彼は普通の公爵令息ではなく今、現在の王位継承権第二位の資格を持っている。王太子殿下に何かあれば彼が王位を継ぐのだから、迂闊なことは出来ないだろう。
彼の心中を全て推し量ることは出来ないが私にも彼の身にかかる重圧は理解できた。
だが、まだわからないのは、何故ローズマリアの子供が、殿下の血筋でない事が分かったのかという事だ。私は思い切って訊ねてみることにした。
「殿下、何故ローズマリアの産んだ子供が殿下の子供ではないと分かったのですか?」
「ああ、君は婚約者だったから知らされていないのだね。これは王家の秘密だ。私とユリウスは本当は同じ髪の色なんだ。この髪は王族だけが持って生まれる。ユリウスには髪の色を染めてもらっているんだよ。私と見分けが付く様にね。しかし、あの女の産んだ子供には王族特有の髪を持って生まれなかった。つまり他の人間の子種で授かった子供だという事だよ」
「では、本当の父親は誰なのですか?」
「はは、王宮に勤める平民上がりの騎士だった。実家に宿下がりをしている時に度々密会していたようだ。そうならそうと言えば婚約を解消したのに、どこまでも君を貶め、苦しめる忌々しい女だ」
「殿下、いくら殿下が尊い身分の方でも死んだ人間を悪し様に言うなんて、殿下らしくありません」
「ああ、君にはまだ知らせていないな。あの女は生きているよ。今は北の塔に閉じ込めている。長い事使っていなかったから、中は寂れているかも知れないがあの女には相応しい場所だと思うがな」
殿下の言葉に私は驚いた。妹は生きている。亡くなったと言うのは表向きの事。今は罰を与える為の保留期間という事なのか。
「殿下、お願いです。妹が生きているなら妹に会わせて頂けないでしょうか。彼女の口から本当の事を聞きたいのです」
「いいだろう。あの女から直接聞くがいい。その上でこれからの事を考えればいい」
私は殿下に連れられて、ローズマリアのいる北の塔に向かったのだ。
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