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女神の泉
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ミシェルウィー公爵領は王都から北の各領に帰る貴族達が必ず通る場所にある。勿論、避暑地としても有名で、白樺の高原を抜けると大きな湖があり、その周りには様々なコテージが並ぶ。貴族達はあるお祭りに参加する為に立ち寄っている。
そのお祭りとは、『女神の泉』と呼ばれる高原の中にある泉に恋の願い事をすると叶うと云うものだ。
但し、決して恋人同士で行ってはいけない。それは女神が嫉妬して、二人の仲を裂くからだ。昔、この泉に願いをした恋人同士は悲惨な末路を送り、二人の実家は没落した。この女神は、処女神で嫉妬深く若い恋人同士が嫌いだが、片思いの恋は応援する変わった女神様。
だから、良縁を望む親が女神の好物の林檎や薔薇の花を捧げる事が多かった。
紙に自分の家と子供の名を書き、泉に投げ入れると女神が願いを叶えて、相手の姿を泉に映してくれる。片想いの相手の場合だと紙に相手の名前を書いて入れると女神が仲を取り持ってくれると言い伝えられている。実際に何組かのカップルが誕生したこともある。その為、言い伝えを信じる人が増えた事で『お祭り』を先祖がし始めた。
神は気まぐれで人間の願いを叶える程暇ではないだろう。それでも言い伝えを信じてやって来る人々は後を絶たない。
私はその祭りの準備に追われて、王都での煩わしい事をすっかり忘れていた。
友人らも毎年、この祭りの数日間だけは一緒に過ごしている。
アモネアは夫が王太子殿下の側近なので、王都から出ることが出来ない。だからいい気晴らしになると喜んでいた。
それに今回は、一応婚約者であるユリウス様もミシェルウィー公爵領に立ち寄る事になっている。
「サフィニア様、お久しぶりです。随分と顔色が良くなりましたね」
「ありがとうございます。ザルツブルク侯爵令息、アモネアもようこそミシェルウィー公爵領地へ」
「ふふ、明後日のお祭りが楽しみで来たのよ」
「あら、貴女はもう必要ないでしょう」
「まあね。でも他にも目的はあるのよ。例えば夜の蛍とか」
「そうね、もうあまり見ないけど、まだ飛んではいるわね」
「でしょう。以前見た幻想的な雰囲気が良いのよ。アンソニーと見るのは始めてだしね。ロマンチックな夜が楽しめそうだわ」
私はアモネアの明け透けた様子に思わずアンソニーの方を見ると、彼は顔を俯けて手で被っている。
アモネアが揶揄う様に
「可愛い…」
耳元で小声で囁いているのが聞こえた。そのやり取りに此方まで顔が火照ってくる。
「もう、アモネアったら、旦那様がお困りじゃない」
「あら、羨ましい?そんな貴女に今日はお礼を言って頂けるのではないかしら」
アモネアが後ろを指差した。私が振り返った途端、目にした人物は
ユリウス・デントロー公爵令息
彼が涼しげな表情で熱い眼差しを向けながら、立っていた。
「サフィニア嬢、すまない黙っていて、早く君に会いたくて仕事を済ませてきた」
「いらっしゃいませ。ユリウス様…」
私は、何と言って良いのか分からずにその場に固まってしまった。
「もう、サフィニアったら、焦れったいわね。私達はいつものコテージを使わせてもらうから、後はお二人でどうぞ」
足早にアモネアはアンソニーをグイグイ引っ張ってコテージに向かった。御付きの人が大急ぎで後を追いかけていった。
相変わらずパワフルな友人に
彼女の相手は大変よね
二人の後ろを姿を見ながら不意に思ってしまった。
でも、問題はユリウス様とのやり取りだった。恋の駆け引き等分からない私は、今からどうユリウス様との時間を過ごせばいいのか考えていると
「サフィニア嬢、この後の予定がなければ、領地に案内してもらえないかい」
「あの、この後はお祭りの準備の進行状況を確認するのですが、その後でもよろしいでしょうか」
「なら、私も一緒に行くよ。二人の方が早く片付くだろう」
「ユリウス様がお嫌でないなら私もその方がいいです」
「じゃあ、早速行こうか」
「はい」
私はユリウス様とお祭りの準備を確認しに出掛けた。
そのお祭りとは、『女神の泉』と呼ばれる高原の中にある泉に恋の願い事をすると叶うと云うものだ。
但し、決して恋人同士で行ってはいけない。それは女神が嫉妬して、二人の仲を裂くからだ。昔、この泉に願いをした恋人同士は悲惨な末路を送り、二人の実家は没落した。この女神は、処女神で嫉妬深く若い恋人同士が嫌いだが、片思いの恋は応援する変わった女神様。
だから、良縁を望む親が女神の好物の林檎や薔薇の花を捧げる事が多かった。
紙に自分の家と子供の名を書き、泉に投げ入れると女神が願いを叶えて、相手の姿を泉に映してくれる。片想いの相手の場合だと紙に相手の名前を書いて入れると女神が仲を取り持ってくれると言い伝えられている。実際に何組かのカップルが誕生したこともある。その為、言い伝えを信じる人が増えた事で『お祭り』を先祖がし始めた。
神は気まぐれで人間の願いを叶える程暇ではないだろう。それでも言い伝えを信じてやって来る人々は後を絶たない。
私はその祭りの準備に追われて、王都での煩わしい事をすっかり忘れていた。
友人らも毎年、この祭りの数日間だけは一緒に過ごしている。
アモネアは夫が王太子殿下の側近なので、王都から出ることが出来ない。だからいい気晴らしになると喜んでいた。
それに今回は、一応婚約者であるユリウス様もミシェルウィー公爵領に立ち寄る事になっている。
「サフィニア様、お久しぶりです。随分と顔色が良くなりましたね」
「ありがとうございます。ザルツブルク侯爵令息、アモネアもようこそミシェルウィー公爵領地へ」
「ふふ、明後日のお祭りが楽しみで来たのよ」
「あら、貴女はもう必要ないでしょう」
「まあね。でも他にも目的はあるのよ。例えば夜の蛍とか」
「そうね、もうあまり見ないけど、まだ飛んではいるわね」
「でしょう。以前見た幻想的な雰囲気が良いのよ。アンソニーと見るのは始めてだしね。ロマンチックな夜が楽しめそうだわ」
私はアモネアの明け透けた様子に思わずアンソニーの方を見ると、彼は顔を俯けて手で被っている。
アモネアが揶揄う様に
「可愛い…」
耳元で小声で囁いているのが聞こえた。そのやり取りに此方まで顔が火照ってくる。
「もう、アモネアったら、旦那様がお困りじゃない」
「あら、羨ましい?そんな貴女に今日はお礼を言って頂けるのではないかしら」
アモネアが後ろを指差した。私が振り返った途端、目にした人物は
ユリウス・デントロー公爵令息
彼が涼しげな表情で熱い眼差しを向けながら、立っていた。
「サフィニア嬢、すまない黙っていて、早く君に会いたくて仕事を済ませてきた」
「いらっしゃいませ。ユリウス様…」
私は、何と言って良いのか分からずにその場に固まってしまった。
「もう、サフィニアったら、焦れったいわね。私達はいつものコテージを使わせてもらうから、後はお二人でどうぞ」
足早にアモネアはアンソニーをグイグイ引っ張ってコテージに向かった。御付きの人が大急ぎで後を追いかけていった。
相変わらずパワフルな友人に
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二人の後ろを姿を見ながら不意に思ってしまった。
でも、問題はユリウス様とのやり取りだった。恋の駆け引き等分からない私は、今からどうユリウス様との時間を過ごせばいいのか考えていると
「サフィニア嬢、この後の予定がなければ、領地に案内してもらえないかい」
「あの、この後はお祭りの準備の進行状況を確認するのですが、その後でもよろしいでしょうか」
「なら、私も一緒に行くよ。二人の方が早く片付くだろう」
「ユリウス様がお嫌でないなら私もその方がいいです」
「じゃあ、早速行こうか」
「はい」
私はユリウス様とお祭りの準備を確認しに出掛けた。
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