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 最年少の侯爵夫人の噂は社交界で瞬く間に広まった。

 「姉の婚約者を奪った悪女」

 エミリーは、成人してから大伯母とスタンレー侯爵の介護に追われ、社交界には出ていなかった。

 誰が流した噂かは、明白だった。しかし、同世代の令嬢以外はエミリーが善良な人柄であることを知っていた。

 アルフレッドもエリザベスを忘れる事が出来なかったが、祖父に献身的な介護を続けるエミリーを以前より好ましく思っていた。

 結局、祖父の望み通りエミリーと結婚した。

 結婚後、初めて夫婦揃って王宮の夜会に招待された。

 第二王子は、側近であるアルフレッドの妻のエミリーに興味を持っていた。

 逆にエミリーは社交界の知識が乏しく経験も無いので、本音を言えば行きたくなかった。

 姉のエリザベスの様な華やかさを持たないエミリーには、気が重かった。

 それでも王宮の夜会に欠席するわけにはいかなかった。渋々出席するも、夫であるアルフレッドは、王族に挨拶を済ませると早々に仕事仲間の所へ向かった。

 お蔭でエミリーは、壁の花だった。

 そんな中、同年代の数人の令嬢に囲まれた。

 「貴女が、ご自分の姉の婚約者を奪った悪女ですの」

 「よくこんな公の場に顔を出せましたわね」

 「学校も出ていないから教養も無いのね」

 それぞれ皮肉を言いながら、まるで値踏みをするような目線を這わした。

 彼女達の心は、嫉妬に支配されていた。

 エミリーの夫は将来を嘱望される優良物件だった。エリザベスとの破局が噂されると、皆自分にも機会があると思っていたが、当てが外れたからだ。

 ほぼ八つ当たり近い。何処の貴族であっても所詮、令嬢なのだ。エミリーは押しも押されぬ侯爵夫人。立場はエミリーの方が上なのだが、社交界に出たことのないエミリーは、令嬢達を上手くかわす手段を持っていなかった。
 
 「あら、皆様何をしていらっしゃるのかしら?」

 現れたのは、華やかなドレスを纏った姉・エリザベスだった。

 「あら、エリザベス様。お久しぶりですわ」

 輪の中の先頭に立っていた高位貴族令嬢が姉に挨拶した。どうやら顔見知りの様だ。

 
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