36 / 44
34.新たな生活の始まり
しおりを挟む
翌日、レスティーナが目覚めると屋敷の中は一変していた。
アマンダやマリアンヌの部屋は綺麗に片付けられている。
何より驚いたのは、別棟で生活をしていたカインデルが本館で生活をすることになったのだ。
カインデルの部屋は、ゲイルの隣で、レスティーナの部屋は元マリアンヌが使っていた日当たりの良い南側の部屋に移された。
アマンダが使っていた部屋も何やら内装を変えているようだった。
レスティーナが朝の支度を終えて食堂に向かうと、既にゲイルとカインデルが席に着いていた。
「やあ、おはよう。ティナ。昨夜はよく眠れたかな?」
「はい……おはようございます」
「おはよう。ティーナ。今朝は随分とゆっくりだったんだな」
「えっ…?おはようございます」
カインデルがどうして、自分の起床時間を知っているのか不思議に思いながらもレスティーナは、二人に朝の挨拶をすますと侍従が引いてくれた椅子に腰かけた。
いつもより遅く起きた所為なのか。それともアマンダやマリアンヌの声が聞こえない所為なのかは分からないが、何だかレスティーナの心は少しだけ晴れやかな気分だった。
「ティーナ。昨日の今日だ。静かに屋敷で凄そうかと思ったんだが、今日は来客がある。ギャロット公爵令嬢達を招いて略式お茶会でも楽しんだらどうだい?」
「でも、そんな急な予定では…」
「いや、大丈夫だ。昨日帰り際、彼女達には話している。今までこの屋敷に同年代の令嬢らを招いたことなんてなかっただろう。この機会に彼女等と交流を持つといい」
カインデルの言葉にレスティーナは、昨日馬車の中まで聞こえていた彼女たちの歓喜の声はこの事だったのかと納得した。
ともあれ、レスティーナ自身も昨日、慌しく帰ってしまったので、何となく心苦しくもあったからこの提案はレスティーナにとっても都合が良い。
とはいえ、相手はみんな高位貴族の令嬢…何か粗相があってはいけないと、朝から急いで支度にかかっている事も事実。
屋敷の使用人に申し訳なく思いながらもレスティーナは、友人を招いての初めてのお茶会に心を浮き立たせている。
そんな嬉しそうなレスティーナの姿にゲイルは、ホッと胸を撫で下ろした。
──良かった。今度こそ守らねば!
そう固く心に誓いを刻むのだった。
逆にカインデルは複雑な表情を浮かべている。自分が言い出した事とはいえ、自分にも見せたことないような笑顔を浮かべて、燥ぎ気味のレスティーナを見て、軽く令嬢方に嫉妬している。
矛盾しているとは思うがこればかりはカインデル自身も抑えられなかった。
もやもやとした嫉妬心を押えながら、
「レスティーナ、昨日はきちんと挨拶が出来なかったから、俺も参加してもいいかい?」
「も…勿論です。お兄様が参加されればきっと、皆さま喜びます」
レスティーナの言葉にカインデルは、
(本当は、ティーナだけが喜んでくれたらいいんだけれど…)
と心で呟いた事は内緒だ。
こうしてレスティーナの初めてのお茶会がスタートしようとしていた。
アマンダやマリアンヌの部屋は綺麗に片付けられている。
何より驚いたのは、別棟で生活をしていたカインデルが本館で生活をすることになったのだ。
カインデルの部屋は、ゲイルの隣で、レスティーナの部屋は元マリアンヌが使っていた日当たりの良い南側の部屋に移された。
アマンダが使っていた部屋も何やら内装を変えているようだった。
レスティーナが朝の支度を終えて食堂に向かうと、既にゲイルとカインデルが席に着いていた。
「やあ、おはよう。ティナ。昨夜はよく眠れたかな?」
「はい……おはようございます」
「おはよう。ティーナ。今朝は随分とゆっくりだったんだな」
「えっ…?おはようございます」
カインデルがどうして、自分の起床時間を知っているのか不思議に思いながらもレスティーナは、二人に朝の挨拶をすますと侍従が引いてくれた椅子に腰かけた。
いつもより遅く起きた所為なのか。それともアマンダやマリアンヌの声が聞こえない所為なのかは分からないが、何だかレスティーナの心は少しだけ晴れやかな気分だった。
「ティーナ。昨日の今日だ。静かに屋敷で凄そうかと思ったんだが、今日は来客がある。ギャロット公爵令嬢達を招いて略式お茶会でも楽しんだらどうだい?」
「でも、そんな急な予定では…」
「いや、大丈夫だ。昨日帰り際、彼女達には話している。今までこの屋敷に同年代の令嬢らを招いたことなんてなかっただろう。この機会に彼女等と交流を持つといい」
カインデルの言葉にレスティーナは、昨日馬車の中まで聞こえていた彼女たちの歓喜の声はこの事だったのかと納得した。
ともあれ、レスティーナ自身も昨日、慌しく帰ってしまったので、何となく心苦しくもあったからこの提案はレスティーナにとっても都合が良い。
とはいえ、相手はみんな高位貴族の令嬢…何か粗相があってはいけないと、朝から急いで支度にかかっている事も事実。
屋敷の使用人に申し訳なく思いながらもレスティーナは、友人を招いての初めてのお茶会に心を浮き立たせている。
そんな嬉しそうなレスティーナの姿にゲイルは、ホッと胸を撫で下ろした。
──良かった。今度こそ守らねば!
そう固く心に誓いを刻むのだった。
逆にカインデルは複雑な表情を浮かべている。自分が言い出した事とはいえ、自分にも見せたことないような笑顔を浮かべて、燥ぎ気味のレスティーナを見て、軽く令嬢方に嫉妬している。
矛盾しているとは思うがこればかりはカインデル自身も抑えられなかった。
もやもやとした嫉妬心を押えながら、
「レスティーナ、昨日はきちんと挨拶が出来なかったから、俺も参加してもいいかい?」
「も…勿論です。お兄様が参加されればきっと、皆さま喜びます」
レスティーナの言葉にカインデルは、
(本当は、ティーナだけが喜んでくれたらいいんだけれど…)
と心で呟いた事は内緒だ。
こうしてレスティーナの初めてのお茶会がスタートしようとしていた。
6
お気に入りに追加
2,713
あなたにおすすめの小説
愛を語れない関係【完結】
迷い人
恋愛
婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。
そして、時が戻った。
だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。

お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

恋という名の呪いのように
豆狸
恋愛
アンジェラは婚約者のオズワルドに放置されていた。
彼は留学してきた隣国の王女カテーナの初恋相手なのだという。
カテーナには縁談がある。だから、いつかオズワルドは自分のもとへ帰って来てくれるのだと信じて、待っていたアンジェラだったが──

新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

高いお金と引き換えに家族から売られた私ですが、どうやら最終的には過去一の幸せが待っているようです。
加集 奈都
恋愛
「2つも同じ顔など、我が家に必要はない。」
そう言われ、高いお金と引き換えに子供好きと噂される変態伯爵の元へと売られた男爵令嬢のアイヴィ。
幸せとは程遠い生活を送り、いやらしい要求を嫌々のむ毎日。
まだ愛玩動物としての価値があるだけ喜ばしいことなのか。それとも愛玩動物としての価値しかないことに絶望するべきなのか。
そんなことを考えていたアイヴィだったが、助けは突如としてやって来た。
助けられたことをきっかけに、高名な公爵家とされるウィンストン家の養女となったアイヴィ。そしてそこで出会う、3人の兄弟+1人の王太子。
家族に捨てられ、変態伯爵に可愛がられてしまったことで、すっかり感情を表に出すことが苦手になってしまったアイヴィと、そんなアイヴィを可愛がりたい兄弟達+王太子+大人達の物語。

やり直し令嬢は本当にやり直す
お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
(完結)「君を愛することはない」と言われて……
青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら?
この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。
主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。
以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。
※カクヨム。なろうにも時差投稿します。
※作者独自の世界です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる