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33.ゲイルの過去
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ゲイルが15才の時に王都で流行った病にかかって両親は亡くなった。一命を取り留めたゲイルも後遺症が残ったのだ。
その当時は分からなかったが、2年後に病にかかった男女が不妊になるという症状が現れた。
ゲイルの一族は、殆どが流行病で亡くなり、ゲイルは一人息子でありながら、子供が作れない身体になったのだ。
15才という若さで公爵家を継ぎ、後見人は母方の伯父マダガス侯爵が務めた。
「義父上、これだけですか?」
「これだけ…ま…まさか時間が巻き戻ったのはこれが初めてではないのか?」
「…ええ…これで7回目です。そしておそらくこれで最後かと…ですので失敗はできないのです」
「そうか……」
ゲイルは、カインデルの言葉でそれが真実だと悟った。
「この日記に使った万年筆は、ジュリエッタとアルフォードから贈られたものだ。この日記が今ここにあるのは、きっと二人が私を恨んでいるからなのだろう。私がレスティーナを幸せに出来なかったから…戒める為に日記を私の元に送ったのかもしれない」
カインデルは、絞り出すように話すゲイルをただ見つめていた。そして、今まで胸の奥にしまっていたある疑問を口にしたのだ。
「ずっと義父上に聞きたい事がありました。何故、あの義母上と結婚されたのですか」
「確かに…だが、あの時はそうするしか方法がなかった。ジュリエッタと出会ってから、ソニア伯母上と一緒に神殿に通った。表向きはジュリエッタを伯母上に会わせるという目的で、そして、そこである伯爵令嬢と出会った。彼女は当時、多額の借金を抱えた没落寸前の伯爵家の令嬢だった。だからこちらの事情を話して、結婚を条件に生家への援助を申し出た。彼女は家族が助かるならと快く承諾してくれた。もし、彼女を妻にし、カインデルとレスティーナを引き取っても彼女ならきちんと母親の役目を全うしてくれたと思う。……だが、そうならなかったのは、その話を聞いたアマンダが事もあろうに大勢の集まる夜会で、自分の婚約者を取ったと彼女に詰め寄ったのだ。それも私が地方に出向に行っている時にだ。その後は思い出したくもない…分かるだろう。彼女は婚約者に色目を使うふしだらな女という烙印を押されて、社交界から追放された」
「………」
「彼女の家はその後急に没落していったよ。私が帰った時には一家離散の状態だった。家令のテレンスはその伯爵家の生き残りだ。アマンダはテレンスを見ても気付かなかったよ。彼は令嬢の父親で、その場にいたのに……。令嬢は裕福な商人の後添えになって今は幸せに暮らしている。私にできる事はその位しかなかった。伯爵家縁の人を見つけ出すのに何年もかかった。彼らに新しい職場を世話することが私に出来る贖罪だと考えたのだ。アマンダが流した噂の所為で、私に縁談は来なくなった。私はアマンダと結婚するしかなくなった。結婚して君が生まれた頃にまたアマンダは口を滑らせて、当時の王妃アヴェリル殿下を貶めた」
カインデルはグッと膝に置いている手をきつく握りしめた。
「アマンダは王妃グレイシス殿下から、罰を与えられた。毎回お茶に不妊の薬を混ぜられ、子供が産めない身体になった。だからマリアンヌは生まれるはずのない子供なのだ。アマンダが望んでレスティーナが女神に頼んで作ったアマンダの分身の様なものだ」
「これで義母上は大人しくなるでしょうか」
「そうなることを願ってはいるが、学院にマリアンヌが通う様になればまたレスティーナに絡んでこないとも限らない。それまでにクロイツェル殿下との婚約に決着を付けられればいいのだ…」
「そうですね。レスティーナを神殿に連れて行っても糸を切ることが出来ない今は……」
カインデルとゲイルは真剣な表情で、日記を見つめていた。
今直ぐにどうすることもできないもどかしさに苛立ちを感じていた。
二人は、今後もクロイツェルの動向を注視し、細目に連絡を取り合う事にしたのだ。
その当時は分からなかったが、2年後に病にかかった男女が不妊になるという症状が現れた。
ゲイルの一族は、殆どが流行病で亡くなり、ゲイルは一人息子でありながら、子供が作れない身体になったのだ。
15才という若さで公爵家を継ぎ、後見人は母方の伯父マダガス侯爵が務めた。
「義父上、これだけですか?」
「これだけ…ま…まさか時間が巻き戻ったのはこれが初めてではないのか?」
「…ええ…これで7回目です。そしておそらくこれで最後かと…ですので失敗はできないのです」
「そうか……」
ゲイルは、カインデルの言葉でそれが真実だと悟った。
「この日記に使った万年筆は、ジュリエッタとアルフォードから贈られたものだ。この日記が今ここにあるのは、きっと二人が私を恨んでいるからなのだろう。私がレスティーナを幸せに出来なかったから…戒める為に日記を私の元に送ったのかもしれない」
カインデルは、絞り出すように話すゲイルをただ見つめていた。そして、今まで胸の奥にしまっていたある疑問を口にしたのだ。
「ずっと義父上に聞きたい事がありました。何故、あの義母上と結婚されたのですか」
「確かに…だが、あの時はそうするしか方法がなかった。ジュリエッタと出会ってから、ソニア伯母上と一緒に神殿に通った。表向きはジュリエッタを伯母上に会わせるという目的で、そして、そこである伯爵令嬢と出会った。彼女は当時、多額の借金を抱えた没落寸前の伯爵家の令嬢だった。だからこちらの事情を話して、結婚を条件に生家への援助を申し出た。彼女は家族が助かるならと快く承諾してくれた。もし、彼女を妻にし、カインデルとレスティーナを引き取っても彼女ならきちんと母親の役目を全うしてくれたと思う。……だが、そうならなかったのは、その話を聞いたアマンダが事もあろうに大勢の集まる夜会で、自分の婚約者を取ったと彼女に詰め寄ったのだ。それも私が地方に出向に行っている時にだ。その後は思い出したくもない…分かるだろう。彼女は婚約者に色目を使うふしだらな女という烙印を押されて、社交界から追放された」
「………」
「彼女の家はその後急に没落していったよ。私が帰った時には一家離散の状態だった。家令のテレンスはその伯爵家の生き残りだ。アマンダはテレンスを見ても気付かなかったよ。彼は令嬢の父親で、その場にいたのに……。令嬢は裕福な商人の後添えになって今は幸せに暮らしている。私にできる事はその位しかなかった。伯爵家縁の人を見つけ出すのに何年もかかった。彼らに新しい職場を世話することが私に出来る贖罪だと考えたのだ。アマンダが流した噂の所為で、私に縁談は来なくなった。私はアマンダと結婚するしかなくなった。結婚して君が生まれた頃にまたアマンダは口を滑らせて、当時の王妃アヴェリル殿下を貶めた」
カインデルはグッと膝に置いている手をきつく握りしめた。
「アマンダは王妃グレイシス殿下から、罰を与えられた。毎回お茶に不妊の薬を混ぜられ、子供が産めない身体になった。だからマリアンヌは生まれるはずのない子供なのだ。アマンダが望んでレスティーナが女神に頼んで作ったアマンダの分身の様なものだ」
「これで義母上は大人しくなるでしょうか」
「そうなることを願ってはいるが、学院にマリアンヌが通う様になればまたレスティーナに絡んでこないとも限らない。それまでにクロイツェル殿下との婚約に決着を付けられればいいのだ…」
「そうですね。レスティーナを神殿に連れて行っても糸を切ることが出来ない今は……」
カインデルとゲイルは真剣な表情で、日記を見つめていた。
今直ぐにどうすることもできないもどかしさに苛立ちを感じていた。
二人は、今後もクロイツェルの動向を注視し、細目に連絡を取り合う事にしたのだ。
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