婚約者は妹をご所望のようです…

春野オカリナ

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31.これからのこと…

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 ゲイルは、カインデルとレスティーナと晩餐を摂った後、サロンで今後の事や二人の出自について話をした。

 「私とお兄様は血が繋がっていない…兄妹でもない…のですね…」

 レスティーナは何処かホッとした表情を浮かべている。

 カインデルはレスティーナの表情に安堵した。兄妹でないと知った今のレスティーナの反応が怖かったからだ。

 「ティーナは、俺と兄妹の方が良かった?」

 少し意地悪な言い方だが、それでもカインデルはレスティーナの気持ちを確かめずにいられなかった。

 「少し寂しいような…嬉しいような…よくわかりません」

 その態度に戸惑いを感じるが、嫌悪している様子ではない事に再び安堵したカインデルは、ゲイルの方に向き直って自分の考えを伝えることにした。

 「俺は、出来る事ならレスティーナと一緒に公爵家を継ぎたい…」

 前までは大公家を復興して継いでいたが、元凶二人がいなくなれば元の計画通り公爵家を継ぐことにゲイルも異存はない。

 「二人の気持ちが固いなら公爵家を継ぐことに陛下は反対されないだろう。それよりも問題なのは……クロイツェル殿下とレスティーナが運命の糸で結ばれている事だ。糸が断ち切れない内は難色を示すだろうな」

 ゲイルの考えは正しい。

 未だレスティーナとクロイツェルは細いが確かに女神の運命の糸で繋がっているのだ。

 例えレスティーナ自身がカインデルを選んで、互いの心臓に糸を結びつけていたとしても女神の運命の糸が断ち切れない内は、他の貴族から反対の声も上がるだろう。

 特に王妃の実家であるギャロット公爵家から何かしらの圧はあるかもしれない。

 高位貴族なら女神の代弁者と自分の血縁者を結びつけたいと考えるのは当然だ。

 しかも国王エドウィンは、一度ギャロット公爵家に煮え湯を飲ましている。隣国セガールの公女を王妃にしたのだから…。

 それでもグレイシスが側妃となって王妃を支えてきたからこそ今のエイダールがある。その恩を忘れた訳ではない。

 6度目までの愚行をクロイツェルが繰り返せば婚約を解消できるが、今のクロイツェルは至極まともなのだ。マリアンヌに狂う前の正常なクロイツェル……。

 このまま、マリアンヌに関わることなく生きて行けばきっと素晴らしい王になるに違いないと期待されている。

 本人もそれだけの努力を積み重ねていることをゲイルやカインデルも認めるところなのだ。

 勿論、レスティーナに至っては近くで見てきたから余計知っている。

 だからと言ってカインデルも指を咥えて見ているつもりはない。

 カインデルと血の繋がりがないと知ったレスティーナ争奪戦始まったばかりなのだ。

 ──これからは遠慮などしない!今度こそ絶対にレスティーナとの未来を生きてみせる!

 カインデルの心はレスティーナとの未来で一杯になっていた。

 「取り敢えず、ティーナ。明後日の祭りに俺と一緒にいかないか?今日の仕切り直しという事で…」

 カインデルの思わぬ申し出に、レスティーナは目を見開いて驚いた。カインデルと一緒に行きたいと思ってはいたが、今日の出来事を思えば屋敷から出してもらえないと思っている。

 レスティーナはそーっとゲイルの方を見ると、ゲイルは優しく微笑んで、

 「私は仕事があるから付き合えないが、二人で楽しんでくるといい」

 あっさりと許可が下りた。

 レスティーナは、浮かれていた。浮かれて二人の空気が変わっている事に全く気付いていなかった。

 ゲイルは、話はこれでおしまいだとばかりに自室に戻る様に二人を促した。

 レスティーナの頭の中は明後日の祭りの日の事で一杯になっている。

 カインデルとのお出かけはこれが初めてで、何を着て行こうか。どこを回ろうか。などと今日貰った祭りの露店めぐりの配置図を見ながら、あれこれと自室のベッドの上に広げて考えている。


 


 「やあ、やっぱり来たね。カインデル。私に訊ねたい事があったのだろう」

 カインデルは、レスティーナが自室に戻るのを確認して、ゲイルの執務室を訪れた。

 執務室の主は、カインデルが来ることを予測していたかのような態度を見せている。

 「義父上は記憶を持っているのですか?」

 それは、先ほどから感じる違和感の正体だった。

 ゲイルは、カインデルにソファーに腰かける様に促すと、首を左右に振って『違う』と答えた。

 カインデルの期待とは違う答えにカインデルは戸惑いを覚えたのだった。
 
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