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13.愛を与えられる者と愛を乞う者②
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マリアンヌが登城を禁止されてからというもの、王城でのレスティーナの周りは一変した。
なんと、クロイツェルが毎日決まった時間にレスティーナのご機嫌伺いにやって来るようになったのだ。
食事は勿論、お茶の時間にも必ず現れる。急用で来れない時は、必ず侍従に連絡させる徹底ぶりなのだが、だからといって最初の頃の印象が全てなかった事にはならない。
クロイツェルもきつい口調で妹を叱責しているレスティーナの姿をその眼で見ている。今のレスティーナが本当の姿なのか、猫を被った状態なのかは判断できないのだ。
王城での生活にも慣れた頃、王妃グレイシスが姪のキャッスル公爵家のエルリアーナとクロードを呼んでお茶会をすることになった。
エルリアーナとは『ローズ・ザ・エデン』での同期で、レスティーナとは切磋琢磨しながら、お互いに良きライバルで友人でもある仲だ。
そんなエルリアーナとまたお喋りが出来るとあって、レスティーナは当日が楽しみでしかたなかった。つい、顔に出ていたのだろう。ふいにクロイツェルが、
「何をにやけているんだ?」
「え…顔に…出ていましたか…」
「ああ、余程嬉しい事でもあった様なのだな」
「はい!キャッスル公爵家のエルリアーナ様と明日、お茶をすることになったのです。『ローズ・ザ・エデン』が無くなってから会う機会がなくて、寂しかったのですが、王妃がお茶会に招待されたので私も一緒にどうかと誘われました」
嬉しそうに燥いでいる様子は年相応の女の子に見える。普段、澄まして小さな淑女として振る舞っている姿とは別人ようだとクロイツェルは思った。
だが、クロイツェルも顔に本音が出ていた様で、
「殿下…?どうされたのです。何か私が失礼な事を申し上げたのでしょうか?」
きょとんとした表情でコテンと首を傾げたレスティーナはとても愛らしく、クロイツェルは顔が火照っている事に気付いた。
「大変です!殿下!!今度は赤くなっています。お熱があるのでは……」
クロイツェルの額に手を近付けて熱を測ろうとするレスティーナの手を咄嗟にクロイツェルは払い除けてしまった。
「あ…す…すまない。だ…だが、君も悪いのだぞ!王族に許可なく触れてはダメだ」
「すみません…ついはしゃぎ過ぎてしまいましたね。どうかお許し下さい。第二殿下」
クロイツェルは単に恥ずかしかっただけなのだが、レスティーナの手を振り払った事で、折角縮まった距離はまた少し開いてしまったようだ。
実は、クロイツェルは従兄妹であるキャッスル公爵令嬢エルリアーナが苦手なのだ。
燃える様な赤い髪に藍色の瞳をした気の強い母方の従兄妹、吊り上がっている目と同じように気も強い。
何でも筋の通らない事には決して「はい」と言わない性格…。最近でこそあまり会わなくなっていたが、顔を会わせれば何を言われるかはクロイツェルは、簡単に想像できた。
その日の夕食後、王妃グレイシスから強制的にお茶会の参加を伝えられた。
がっくりと項垂れて、「やっぱりこうなったか」と心の中で呟きながら、自室に帰って気を取り直すように、今日のレスティーナを思い出して一人顔を赤くしていた。
傍で見ていた侍従が宮廷医を呼びに行こうとしたので、「病気ではない!!」といって必死に止める事になった。
机の引き出しにしまってある誕生日プレゼントをレスティーナが気に入ればいいが…。
そんな事を考えながら、眠りに着いたのだ。
なんと、クロイツェルが毎日決まった時間にレスティーナのご機嫌伺いにやって来るようになったのだ。
食事は勿論、お茶の時間にも必ず現れる。急用で来れない時は、必ず侍従に連絡させる徹底ぶりなのだが、だからといって最初の頃の印象が全てなかった事にはならない。
クロイツェルもきつい口調で妹を叱責しているレスティーナの姿をその眼で見ている。今のレスティーナが本当の姿なのか、猫を被った状態なのかは判断できないのだ。
王城での生活にも慣れた頃、王妃グレイシスが姪のキャッスル公爵家のエルリアーナとクロードを呼んでお茶会をすることになった。
エルリアーナとは『ローズ・ザ・エデン』での同期で、レスティーナとは切磋琢磨しながら、お互いに良きライバルで友人でもある仲だ。
そんなエルリアーナとまたお喋りが出来るとあって、レスティーナは当日が楽しみでしかたなかった。つい、顔に出ていたのだろう。ふいにクロイツェルが、
「何をにやけているんだ?」
「え…顔に…出ていましたか…」
「ああ、余程嬉しい事でもあった様なのだな」
「はい!キャッスル公爵家のエルリアーナ様と明日、お茶をすることになったのです。『ローズ・ザ・エデン』が無くなってから会う機会がなくて、寂しかったのですが、王妃がお茶会に招待されたので私も一緒にどうかと誘われました」
嬉しそうに燥いでいる様子は年相応の女の子に見える。普段、澄まして小さな淑女として振る舞っている姿とは別人ようだとクロイツェルは思った。
だが、クロイツェルも顔に本音が出ていた様で、
「殿下…?どうされたのです。何か私が失礼な事を申し上げたのでしょうか?」
きょとんとした表情でコテンと首を傾げたレスティーナはとても愛らしく、クロイツェルは顔が火照っている事に気付いた。
「大変です!殿下!!今度は赤くなっています。お熱があるのでは……」
クロイツェルの額に手を近付けて熱を測ろうとするレスティーナの手を咄嗟にクロイツェルは払い除けてしまった。
「あ…す…すまない。だ…だが、君も悪いのだぞ!王族に許可なく触れてはダメだ」
「すみません…ついはしゃぎ過ぎてしまいましたね。どうかお許し下さい。第二殿下」
クロイツェルは単に恥ずかしかっただけなのだが、レスティーナの手を振り払った事で、折角縮まった距離はまた少し開いてしまったようだ。
実は、クロイツェルは従兄妹であるキャッスル公爵令嬢エルリアーナが苦手なのだ。
燃える様な赤い髪に藍色の瞳をした気の強い母方の従兄妹、吊り上がっている目と同じように気も強い。
何でも筋の通らない事には決して「はい」と言わない性格…。最近でこそあまり会わなくなっていたが、顔を会わせれば何を言われるかはクロイツェルは、簡単に想像できた。
その日の夕食後、王妃グレイシスから強制的にお茶会の参加を伝えられた。
がっくりと項垂れて、「やっぱりこうなったか」と心の中で呟きながら、自室に帰って気を取り直すように、今日のレスティーナを思い出して一人顔を赤くしていた。
傍で見ていた侍従が宮廷医を呼びに行こうとしたので、「病気ではない!!」といって必死に止める事になった。
机の引き出しにしまってある誕生日プレゼントをレスティーナが気に入ればいいが…。
そんな事を考えながら、眠りに着いたのだ。
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