11 / 11
ロイド
しおりを挟む
あの日、僕は身勝手な願いを神に祈ってしまった。どうしてもやらなければならない。いや、やり遂げなければならないそう思い込んでいた。一つ目は、息子の足の事だ。
僕はサリナが婚約を解消したことを心のどこかで喜んでいた。直接何かをしたわけではないけれど、結局は僕の望みどおりになったのだから。
僕はずっとエッセンが羨ましかった。それは、僕もサリナが好きだったからだ。彼の方が先に出会ったと言うだけで簡単に手に入れた事が妬ましかった。僕よりも何でも持っている彼がサリナまで──。
だから、あの時もグレースが何かを企んでいても僕は、言わなかったし、気付かない振りをした。
だが、そのことで僕とサリナの関係は段々、冷めていくことになった。
僕は、サリナに何処か後ろめたさを感じて、長年彼女とのすれ違いの生活を送ってしまっていた。
そんな時にグレースと再び会ってしまう。グレースは、自分の不幸な結婚は、僕の所為だと言った。僕にはグレースを責める事が出来なかった。何故ならエッセンとサリナが婚約解消になった責任の一端は僕にもある。
あの時、グレースを止めていたらサリナも僕と結婚しなくて良かったのだ。その贖罪の気持ちからグレースの養子縁組の手助けをしてしまった。
その事で、サリナとの生活は益々余所余所しいものになっていく。
自分でも愚かな選択をしてしまったと後悔したが時は既に遅かった。僕とグレースの関係を誤解させてしまう決定的な事故。
あの馬車の事故で僕はグレースを庇って死んだ。
薄れゆく意識の中で、僕は何かに祈った。
───誰でもいいから願いを叶えてくれ!もう一度サリナとやり直したい──
僕の願いは叶えられた。
僕の願いを叶えたのは担当の死神だった。仮面をつけた死神は戻せる時間は僅かだと告げた。それでも僕とサリナがもう一度やり直せるのならどんな代償も払うと言ったのだ。
死神は僕が死ぬ二か月前に時を戻してくれた。だが代償として僕の死は免れなくなった。死神の話では、本当はグレースが馬車で死ぬ予定だったんだが、僕が一緒にいた所為で予期せぬ魂を迎えに来なくてはいけなくなったと告げられた。
その詫びで願いを叶えてくれたのだが、代償は大きく死神の力の範疇を超えていたらしい。それでも良かった。今度は間違えない。
何よりサリナと子供たちを優先する。
やり直しの記憶はどうやらサリナにもあったようで、時々僕の様子を覗うような視線を向けてくる。
だから、僕は何も言わずにサリナを守っていた。
たった二ヶ月だけれど、僕にとっては一生分の幸せを家族からもらった。
そして、僕からの最後の贈り物としてサリナに子供を授けた。きっとサリナはこの子たちを守って幸せに生きていける。
もう思い残すことはない。僕は二度目の人生の幕を閉じた。
サリナ…これからの君の人生に僕はいないけれど、いつでも君の幸せを祈っている。
愛しているよ…
僕は、彼女の笑顔を思い出に光の射す方向に向かって歩き出した。段々記憶が薄れてくる中で、僕を愛していると言った彼女の笑顔だけは鮮明に覚えている。
名前も分からない彼女の眩しい程の笑顔だけは……。
僕はサリナが婚約を解消したことを心のどこかで喜んでいた。直接何かをしたわけではないけれど、結局は僕の望みどおりになったのだから。
僕はずっとエッセンが羨ましかった。それは、僕もサリナが好きだったからだ。彼の方が先に出会ったと言うだけで簡単に手に入れた事が妬ましかった。僕よりも何でも持っている彼がサリナまで──。
だから、あの時もグレースが何かを企んでいても僕は、言わなかったし、気付かない振りをした。
だが、そのことで僕とサリナの関係は段々、冷めていくことになった。
僕は、サリナに何処か後ろめたさを感じて、長年彼女とのすれ違いの生活を送ってしまっていた。
そんな時にグレースと再び会ってしまう。グレースは、自分の不幸な結婚は、僕の所為だと言った。僕にはグレースを責める事が出来なかった。何故ならエッセンとサリナが婚約解消になった責任の一端は僕にもある。
あの時、グレースを止めていたらサリナも僕と結婚しなくて良かったのだ。その贖罪の気持ちからグレースの養子縁組の手助けをしてしまった。
その事で、サリナとの生活は益々余所余所しいものになっていく。
自分でも愚かな選択をしてしまったと後悔したが時は既に遅かった。僕とグレースの関係を誤解させてしまう決定的な事故。
あの馬車の事故で僕はグレースを庇って死んだ。
薄れゆく意識の中で、僕は何かに祈った。
───誰でもいいから願いを叶えてくれ!もう一度サリナとやり直したい──
僕の願いは叶えられた。
僕の願いを叶えたのは担当の死神だった。仮面をつけた死神は戻せる時間は僅かだと告げた。それでも僕とサリナがもう一度やり直せるのならどんな代償も払うと言ったのだ。
死神は僕が死ぬ二か月前に時を戻してくれた。だが代償として僕の死は免れなくなった。死神の話では、本当はグレースが馬車で死ぬ予定だったんだが、僕が一緒にいた所為で予期せぬ魂を迎えに来なくてはいけなくなったと告げられた。
その詫びで願いを叶えてくれたのだが、代償は大きく死神の力の範疇を超えていたらしい。それでも良かった。今度は間違えない。
何よりサリナと子供たちを優先する。
やり直しの記憶はどうやらサリナにもあったようで、時々僕の様子を覗うような視線を向けてくる。
だから、僕は何も言わずにサリナを守っていた。
たった二ヶ月だけれど、僕にとっては一生分の幸せを家族からもらった。
そして、僕からの最後の贈り物としてサリナに子供を授けた。きっとサリナはこの子たちを守って幸せに生きていける。
もう思い残すことはない。僕は二度目の人生の幕を閉じた。
サリナ…これからの君の人生に僕はいないけれど、いつでも君の幸せを祈っている。
愛しているよ…
僕は、彼女の笑顔を思い出に光の射す方向に向かって歩き出した。段々記憶が薄れてくる中で、僕を愛していると言った彼女の笑顔だけは鮮明に覚えている。
名前も分からない彼女の眩しい程の笑顔だけは……。
71
お気に入りに追加
925
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(22件)
あなたにおすすめの小説
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く
ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。
逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。
「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」
誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。
「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」
だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。
妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。
ご都合主義満載です!

さよなら 大好きな人
小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。
政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。
彼にふさわしい女性になるために努力するほど。
しかし、アーリアのそんな気持ちは、
ある日、第2王子によって踏み躙られることになる……
※本編は悲恋です。
※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。
※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。

【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。

嘘だったなんてそんな嘘は信じません
ミカン♬
恋愛
婚約者のキリアン様が大好きなディアナ。ある日偶然キリアン様の本音を聞いてしまう。流れは一気に婚約解消に向かっていくのだけど・・・迷うディアナはどうする?
ありふれた婚約解消の数日間を切り取った可愛い恋のお話です。
小説家になろう様にも投稿しています。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

殿下が私を愛していないことは知っていますから。
木山楽斗
恋愛
エリーフェ→エリーファ・アーカンス公爵令嬢は、王国の第一王子であるナーゼル・フォルヴァインに妻として迎え入れられた。
しかし、結婚してからというもの彼女は王城の一室に軟禁されていた。
夫であるナーゼル殿下は、私のことを愛していない。
危険な存在である竜を宿した私のことを彼は軟禁しており、会いに来ることもなかった。
「……いつも会いに来られなくてすまないな」
そのためそんな彼が初めて部屋を訪ねてきた時の発言に耳を疑うことになった。
彼はまるで私に会いに来るつもりがあったようなことを言ってきたからだ。
「いいえ、殿下が私を愛していないことは知っていますから」
そんなナーゼル様に対して私は思わず嫌味のような言葉を返してしまった。
すると彼は、何故か悲しそうな表情をしてくる。
その反応によって、私は益々訳がわからなくなっていた。彼は確かに私を軟禁して会いに来なかった。それなのにどうしてそんな反応をするのだろうか。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
なんだかな…
ロイドには生きていて欲しかったな。
着地が綺麗な話なんですが、やはり奇跡がおきたならと欲張りになりますね。
その点、ロイドは潔かった。死の記憶なんて恐ろしくて狂いそうなものなのにすごいです。
ホントに死ぬ筈だったのはグレースとは(´;ω;`)。グレースが予定通りに召されれば良かったのにp(`ε´q)ブーブー。