百地くんは愛される

なこ

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第1章 後悔先に立たず

10.(※)

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「あれ、統真は?」


 今年も新入生は無事全員捕まったようで、疲れきって憔悴した様子で舞台上に立つ新入生と、全学年のC、D組を眺めながら冷泉は退屈そうに欠伸を漏らす。彼自身も遺憾の結果なのだ。彼はずっとただ一人の新入生だけを探していたのだが、彼も他の生徒に捕まってしまったらしい。湧き上がる嫉妬に思わず唇を噛む。
 統真とよく一緒にいるガキを捕まえた時には勝ったと思ったが、結局見つけられないまま歓迎会は終わってしまった。
 しかし、いつまで経っても統真自身は戻ってこない。統真の友人達も心配そうな表情で落ち着きがない。視界の端で菖蒲が何処かに歩いていくのが見えた。生徒会庶務の双子のひとりがスピーカーに顔を近づける。


『えー、只今から閉会式で、新入生歓迎会は終了という訳なんですが、新入生の百地 統真君が体調不良の為、その場にいた風紀委員に保護されたということです。因みに風紀委員長が捕まえましたーー』


 会場が大きくどよめく。冷泉も思わず椅子から立ち上がる。ガタン、と大きな音が鳴るが落ち着いてなんぞ居られない。貴船だぞ。俺なんかよりも余程頭がおかしい
彼は、暴力を行為であると信じて疑わないイカレ野郎だ。俺だって似たかよったかと言われるが、残念俺は快楽だってきちんと与える飴と鞭タイプだ。
 副会長に諌められ、何とか着席するが本当はすぐにでも風紀室に駆け込みたい。冷泉は歯噛みする思いで、舞台を睨みつけた。









ーーバシャァッ!!

「ーーさっさと起きろ」


 顔面への衝撃と寒さに、虚空を彷徨っていた意識が急激に回復する。何度か瞬きを繰り返すが、部屋は薄暗く視界が悪い。流石にぼんやりと目前に立つ男は見えるが、部屋の全貌までは確認出来なかった。俺が両親に監禁されていた部屋を彷彿とさせる様相にドクドクと心臓が荒い音を立てる。天井から垂れ下がる鎖についた手錠で上半身裸で両手を広げるように拘束され、体重を支えていた手首や脇がズキズキと痛んだ。

 睨みあげる俺を無視した男が重厚そうな扉を開けて、外に向かって「お待たせしました」と声をかける。すると、先程の4人がぞろぞろと部屋に入ってきた。飛鳥弟の姿にスタンガンの激痛が思い出され、無意識に顔を歪めてしまう。
 近づいてくる彼をぼーっと見つめると、優しげに笑いかけてくる。


「話せるかしら?」
「ーーは、い」


 掠れた声で返事をする。ヨシヨシと濡れた俺の髪を撫で、前髪を掴み上げてくる。ブチブチと髪が抜ける痛みに悲鳴が漏れる。


「いまから、何が起こると思う?」


 リンチ、拷問、強姦、輪姦、様々な最悪の想像が頭を駆け抜けては消えていく。唇を噛み、目をそらす。こいつらの思い通りに怖がって溜まるか。さっさと帰って今日は玲太のおやつを鳥丸も含めた5人で食べると決めている。
 鳥丸は俺の居場所に気づいているだろうか。側仕えなんだったら今側にいろよ、なんて理不尽な文句が浮かぶ。菖蒲先輩も一見先輩も早く見つけてくれ。


「ーーこの痣はいつできた?」


 風紀委員長、貴船 総司がゆっくりと近づき、俺の首の痣をなぞる。ぞわりと背筋が泡立ち、鎖が許す限り思いっきり後退った。不愉快げに眉を顰めた貴船が、俺の鳩尾に拳をぶち込んでくる。肺の中の空気が全部押し出されるような衝撃に、息が詰まる。


「ーーガハッ、う、ゲホッ」
「質問してんだろうがァ、答えろ」
「……い、いぇで、中学の時に、逃げ回ってたから、捕まって」


 委員長と趣味合いそー、と端末を見ながら飛鳥兄と素敵なご両親じゃない、と微笑む飛鳥弟。鳥丸兄は俺に水をぶっかけてきたクソ野郎と共に、いつの間にか部屋から姿を消していた。

 俺の話を愉しそうに聞いていた貴船は、ヘェ、と呟くと突然俺の両手の拘束を解く。急な解放に思わず地面に崩れ落ちる俺。貴船はへたり込む俺の髪の毛をグイッと引っ張ると、もう1つ壁から突き出た鎖の前へと連れていく。




 あれは。




「い、やだ!!!やだ、離せクソ殺すぞ!」
「おーおー、威勢がいいねェ、っおらぁ!」
「ぐ、ーーぁっ!!」


 ーーガァアアン!!!

 パチパチと視界に火花のようなものが散る。壁に叩きつけられたとわかったのは地面に倒れ混んだ後で、受け身も取れず、訪れた強烈な痛みと目眩に俺は思わず嘔吐する。昼抜きだからか少量の吐瀉物が地面に広がり、貴船が楽しそうに嗤う。抵抗しなくなった俺を引き摺ると、彼は壁から伸びる鎖に取り付けられたを俺に付ける。



 身体中が震え出す。尋常ではない俺の様子を楽しそうに笑いながらみる3人。ーー走馬灯のように、トラウマがフラッシュバックする。



『これ外せよ!巫山戯んなそれでも親かよ!』

バキッ ドガッ

『黙りなさい!あんな下劣な街でよくも百地の貴方がーー』
『由貴、落ち着きなさい。君の手が痛む。こういう子には、徹底的に教えこまないと分からないからね』

『ーーな、んだそれーーっぁああ"!!いっ、だぁ"……!、!』

ーービシィッ

『拷問用の鞭だ。お前が1つ逆らう度に10打ち込む。私達の言う通りにしなさい』
『い、やに、決まってーーぁああ"ああ"ぁ!』






「ぁ、あ、やめて、父さ、もう……おねがい」


 ボロボロと涙を流して蹲る少年。美しいヘーゼルの目から流れる涙は蜂蜜のようで、貴船は思わず舐め取りたくなる。小さく身体を丸め、何処か虚空を見つめる少年は、彼の両親から余程の暴力をその身に受けたのだろう。

 笑いが込み上げてくる。隣で双子が呆れたように溜息をついているが、こればっかりは性分なんだ。赦せ。
 躊躇いなく肩に蹴りを入れる。痛みに呻き、いもしない父親に再び許しを乞う少年が面白くて何度も蹴りを入れる。


「ーーハハッ、ァは、」
「あ"っ、…ぅぐ、ーーゲボッ、は、ぁ"うっ」
「いいなァお前、もっと啼けよ」


 顔面に拳を叩き込めば吹っ飛んだ反動で首がしまり、再び嘔吐する。助けてやろうと腹をければ、息を詰まらせて涙を流す。あとはもうずっと殴る、蹴る、殴る、蹴る。
 父さん、母さん、もうやめて、わかったからたすけて、と吐瀉物と血で掠れた喉で必死に言葉を紡ぐ彼が可愛くて、でも少し嫉妬してしまう。今お前を痛めつけて可愛がっているのはこの俺だ。両親でも、冷泉でもない、この俺だ。


「あらまぁ」
「ーーへぇ」


 背後の双子の声も無視して、目の前の少年に口付ける。あの菖蒲を打ち負かしたらしいが、30分近くキスし続けた時はスタンガンもあってかビクビクと震えて可愛らしかった。今も朦朧とした意識では応えることもできないのか、必死に貴船の胸板に両手を当てて抵抗する。抵抗にもならないその力がいじらしくて、思わず頭を撫でる。


「ん、、ーっん、ふぁ、ん、く」


 頭をなでたことで落ち着いてきたのか絡めようとする貴船の舌から逃げ、上手く鼻で息をし出したので、迷わず鼻を片手で塞ぐ。再び酸欠を防ぐように口を開いた所を容赦なく塞ぐ。


「はぁ、は…ぁ、ふ、は、んん、ーー!?」

 
 陶酔するような甘いキスにぼんやりと意識を彷徨わせていた少年は、貴船が彼のズボンをおもむろに脱がすと顔を真っ青にして驚愕する。意識はこちらに戻ってきたようで何よりだ。ニヤリと笑ってやれば、ガタガタと震えて後退る。
 飛鳥兄弟に指で近づくように伝えると、愉しそうな2人が近づいてきた。


「おかえりなさい、統真ちゃん」
「な、に、」
「お、意識はちゃんとあるねー」
「今から3人一気に相手してもらうんだからなァ、持ってもらわねェと困る」


 暗に今からお前を3人でマワすんだと告げてやれば、蜂蜜色の目から溶けたように涙が零れる。委員長がそんなに気に入るなんて思わなかったわ、と呟く飛鳥弟に俺もだと返すと、貴方たち似た者同士なのね結局、と笑われる。脛に蹴りをぶち込んでおいた。
 

「冷泉とはやってねェんだろ?あいつかブチギレる所が楽しみだなァ」


 か細い悲鳴をかき消すように、3人は小さな獲物に飛びかかった。













「やぁ、弟」
「やっぱり兄さんたちか、そこを退け」


 統真強火オタクとして既にその確固たる地位を確立させつつある側仕え、鳥丸 氷雨は兄であり風紀副委員長である鳥丸 時雨を冷たく睨みつける。弟が反抗期で悲しい、と無表情で宣う兄を無視して通り過ぎようとするが、しっかり肩を掴まれて阻止される。


「今はダメだ」
「やっぱり何かしてるんだな、殺す」


 







 ドガァアアアンーー!!!


 猛然と風紀室に向かっていた菖蒲と千種、一見はあまりの轟音に思わず肩を揺らす。一見は誤魔化すようにヘラりと笑った。


「流石規格外ですねぇ」
「……『鳥』やばぁ」
「はよ行くで」


 鳥には鳥を当てがうのが一番手っ取り早いので、風紀副委員長は統真様の側仕えに任せる作戦で、敢えて鳥丸弟と別れて別階段から風紀室に向かっていたが、功を奏したようだ。しかし、同じ鳥丸とはいえ長男と次男ではやはり弟の分が悪い。急がなければ。3人は足を速めた。
 因みに彼等親衛隊がここまで行動が遅れたのにも理由がある。閉会式が終わった瞬間に猛然とこちらを追いかけてきた冷泉に捕まったのだ。「俺も行く」と菖蒲に掴みかかる彼を、痺れを切らした千種が拳一つで昏倒させた時には流石にびびったが。昏倒させた冷泉は、千種(ドン引きしている様子でこちらを見ていた副会長に預けておいた。
 頼むから無事でいてくれ、と思う。無事の基準は人それぞれだが、最低限暴力だけで済むなら。







「っ、ん、ング、ーーゲホッ…!んぐ、ッ」


 地面に崩れ落ちたままの状態で、朦朧としながらも必死で飛鳥兄のちんこを口に銜える。フェラなんて絶対にしてやるものかと、本気でただ銜えるだけの俺に呆れた彼は、俺の後頭部を押さえ込んでイラマしてくる。その間にも玩具責めが趣味らしい飛鳥弟にはローションもなしに俺のちんこに思いっきり直接電マを当てられていて、死ぬ程痛い。痛みのあまりに歯を立てれば飛鳥兄に首輪を締められる悪循環。
 

「ーーーーッヅッん"ぐ!、ぅ…ぅ"!」


 思いっきり貴船に腹を殴られ、再び嘔吐感が込上げる。その貴船はもう片方の手を俺の肛門にこれまた濡らしもせずに突っ込んで弄り回す。ーーほんとに殺されるのでは無いかという恐怖がじわじわと燻り出す。
 彼等は俺の怯えを敏感に感じとっては更に強い痛みを与えてくるのだ。涙を流せば嗤って腹を足蹴にし、嘔吐けば喉までクソちんこを突っ込んで来て、暴れれば俺のちんこを思いっきり握りしめてくる。




 怖い。辛い。誰も助けてくれない。
 思考回路がイカレていく気がする。鳥丸、樹、律、助けてよ。親衛隊はなんで来ないの。玲太、早く来て。


 プツリ、と何かが切れた音がした。











パチュ、パチュ、パチュ、

「…は、ぁ、あ、ぅ、ーーぁッ…ぁ」

ずる、ーーズチュン!

「ーーッヅッは、ぁ…ぁ、あ、ぁ」



 今何時だろう。とふと考える。もうずっとこの暗い部屋で男3人にマワされている。最初は只管痛みだけを与え続けられて、今度は俺の腫れ上がったちんこや肛門を只管快楽で埋めつくして。大量のローションを使われてからは、特に思考が働かず、声も抑えられなくて、馬鹿みたいな俺の喘ぎ声が耳障りだ。ホットローション的なやつだったのかな、なんて現実逃避していれば、心ここに在らずな状態の俺に気付いたのか、ぶっといちんこで菖蒲先輩に開発された前立腺を抉られ、最奥まで穿たれる。


「はあ" ぁッ!ーーぅ"、あ、ああ!」
「可愛い声するわねぇ」

 
 思わず腰をビクビクと逸らして快楽から逃げれば、ちんこに付けられたローターが震えを増す。涙目で俺を膝枕する飛鳥弟を見上げれば、ローターのスイッチをカチカチと弄りながらにっこりと額にキスをされる。
 前立腺の刺激に腰を上げて逃げれば、ちんこへの刺激で腰が下がり、自然と腰を自分で揺らしているような形になってより快楽が襲う。


「ひ、ーーぃ、ぁ"ッ!あ、ひッヒぅっ」
「気持ちいいなァ。珍しいんだぜェ?俺が快楽をちゃんと与えてやるなんてッ」


俺の両足を貴船の肩に乗せ、より深くまで突き刺してゆっくりと腰揺らす彼に、最早引き攣った悲鳴のような声が上がる。ニヤリと笑う彼と目が合う。


タンッ、タンッ、タンッ、タンッ

「は、は、は、あ、あ、ぁあ」
「イクぞ」


 彼の宣言と共にドクドクと俺のナカを流れる精液の感覚に、びくびくと身体が震える。締め付けてしまったのか、眉をぴくりと動かした彼は、再び腰を揺すり始める。


「あ、委員長1回ずつ交代でしょー」
「そうよそうよ!回ってこないじゃない」
「うるっせェ黙ってフェラでもさせとけ」


 頭上で交わされる言い合いと共に、口の中にちんこが突っ込まれる。微睡んだ意識の中では最早誰のものかも分からないまま、粗ちんが。死ね、と心の中で毒づいておく。


「あ、トンだ?」
「……起きないわね。体力の限界かしら」
「関係ねェよ」


 どろどろと身体の内側から身を壊していくような快楽に身を任せながら、俺はゆっくりと目を閉じた。願わくば、もう一生目覚めないように、なんて思いながら。







「ーー!」
「ーーーー!」


 もう、誰の声も聞きたくなかった。
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