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誕生日
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燈子が目覚めると、外はすっかり暗くなっていた。
昼間から寝ていたためか、少し空腹を感じていた。燈子は力の入らない体をゆっくりと起こした。リビングに続く階段を降りると、母がキッチンで夕食の準備をしていた。
「おはよう。もう夜だけどね。ゆっくり眠れた?」
燈子はコクリと頷いた。母は満足そうに微笑むと、自分の鞄から小さな紙袋を取り出した。中身を見ると、猫のぬいぐるみが入っていた。
「誕生日プレゼント。これ、欲しかったでしょ。」
母からプレゼントされた猫のぬいぐるみは少し前に燈子がショッピングモールで眺めていたものだった。そこまで高価なものではないが、燈子は嬉しかった。
「ありがとう。お母さん。」
燈子はテーブルに座り、食事ができるのを静かに待つことにした。
燈子が何も言わずに座っていると、母が突然思い出したかのように話しかけてきた。
「そういえば、学校から連絡があってね。今日、休んだんでしょ?」
燈子は自分が無断欠席をしたことを怒っているのだと思った。
燈子は何も言わずに俯いた。
しかし、母から思いがけない言葉が出た。
「それはいいのよ。…むしろ良かったわね。誕生日にこんなこと聞くのも嫌かもしれないけど、クラスの男の子、死んじゃったらしいのよ。」
燈子はハッとした。
燈子は母にその男の子の特徴を聞いた。どうやら活発的でみんなのリーダーのような存在だった子らしい。
燈子は少し震えていた。
その震えは決して恐怖から来るものではなかった。
間もなくして食事が運ばれてきた。
燈子は母と本人の2人暮しだが、特別貧乏なわけではなかった。父が生前に残していた財産が膨大で2人が今後の人生を過ごしていくには十分な程であった。
しかしそのせいもあってか、父の死後、近隣の住民から貸し金をせがまれるようになった。母はストレスを抱え、引越しをした。幸い、引越しにかかったお金が気にならないほどの余裕はあった。
新しい学校に入学して直ぐに燈子はいじめを受けるようになった。
理由は父親がいないから、なんかウザイから。
弱そうだから、薄暗いから。そんな所であった。
それでも燈子は登校を辞めなかった。母に迷惑をかけたくなかった。しかし、そのせいで自分の心と体が廃れていった。
「ごめんね。母さん、明日もいつもより早く出ないといけないから。自分で起きれる?」
燈子は頷くと夕飯を食べ始めた。
元々少食の燈子はあまり好き好んで食事をしなかった。しかし、この日だけは食欲が湧いていた。
それは燈子が長い間眠っていたからではなく、何かもっと別の理由で気分がいいからであった。
「何だか今日は気分が良さそうね。…悲しいニュースはあったけど、楽しい誕生日になったかしら?」
母がそういうと燈子は頷き、微笑んだ。
本当によかった。
私にとって、こんなに楽しい誕生日だったんだから、きっとあの子にとっても最高の命日になったはずだろう。
昼間から寝ていたためか、少し空腹を感じていた。燈子は力の入らない体をゆっくりと起こした。リビングに続く階段を降りると、母がキッチンで夕食の準備をしていた。
「おはよう。もう夜だけどね。ゆっくり眠れた?」
燈子はコクリと頷いた。母は満足そうに微笑むと、自分の鞄から小さな紙袋を取り出した。中身を見ると、猫のぬいぐるみが入っていた。
「誕生日プレゼント。これ、欲しかったでしょ。」
母からプレゼントされた猫のぬいぐるみは少し前に燈子がショッピングモールで眺めていたものだった。そこまで高価なものではないが、燈子は嬉しかった。
「ありがとう。お母さん。」
燈子はテーブルに座り、食事ができるのを静かに待つことにした。
燈子が何も言わずに座っていると、母が突然思い出したかのように話しかけてきた。
「そういえば、学校から連絡があってね。今日、休んだんでしょ?」
燈子は自分が無断欠席をしたことを怒っているのだと思った。
燈子は何も言わずに俯いた。
しかし、母から思いがけない言葉が出た。
「それはいいのよ。…むしろ良かったわね。誕生日にこんなこと聞くのも嫌かもしれないけど、クラスの男の子、死んじゃったらしいのよ。」
燈子はハッとした。
燈子は母にその男の子の特徴を聞いた。どうやら活発的でみんなのリーダーのような存在だった子らしい。
燈子は少し震えていた。
その震えは決して恐怖から来るものではなかった。
間もなくして食事が運ばれてきた。
燈子は母と本人の2人暮しだが、特別貧乏なわけではなかった。父が生前に残していた財産が膨大で2人が今後の人生を過ごしていくには十分な程であった。
しかしそのせいもあってか、父の死後、近隣の住民から貸し金をせがまれるようになった。母はストレスを抱え、引越しをした。幸い、引越しにかかったお金が気にならないほどの余裕はあった。
新しい学校に入学して直ぐに燈子はいじめを受けるようになった。
理由は父親がいないから、なんかウザイから。
弱そうだから、薄暗いから。そんな所であった。
それでも燈子は登校を辞めなかった。母に迷惑をかけたくなかった。しかし、そのせいで自分の心と体が廃れていった。
「ごめんね。母さん、明日もいつもより早く出ないといけないから。自分で起きれる?」
燈子は頷くと夕飯を食べ始めた。
元々少食の燈子はあまり好き好んで食事をしなかった。しかし、この日だけは食欲が湧いていた。
それは燈子が長い間眠っていたからではなく、何かもっと別の理由で気分がいいからであった。
「何だか今日は気分が良さそうね。…悲しいニュースはあったけど、楽しい誕生日になったかしら?」
母がそういうと燈子は頷き、微笑んだ。
本当によかった。
私にとって、こんなに楽しい誕生日だったんだから、きっとあの子にとっても最高の命日になったはずだろう。
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