上 下
5 / 36

4.セオとの出会い

しおりを挟む
説明を受けた俺は、さっそく訓練を終えたエスパーにガイディングをすべく、ガイディング室へ向かったのだった。

担当のガイディング室へ入ると、まだ誰も来ていなかった。
部屋には 真ん中にテーブル、左右にソファーがあり、テーブルにはタブレットが1つ置いてあった。
この部屋は小さな個室だが、もっと広い部屋にはベッドやシャワー室など完備された部屋もあるのだと言う。上級エスパー専用個室も ホテルの一室のように、いろいろと完備されているらしい。

ふぅ、とタブレットの近い方のソファーに腰を下ろすと、隣の部屋からバンッというドアの音とともに怒鳴り声が聞こえた。
「次、痛ぇガイドしたら、ただじゃおかねぇからな!!」
「……っ」
バタバタと去って行く足音がして、俺は心臓がバクバクしていた。
(エスパーって怖い人もいるのかな!?だんだん不安になってきた…)

トントントン…
ドアをノックする音がした。
担当のエスパーの人が来たのかも…!
「はい!」
ドアを開けるとガイド長のミラさんと、銀色の髪で紫の瞳をした長身男性が立っていた。
〈騎士〉という言葉が似合いそうな、ガッチリとした体型。レオン兄さんとは違った、かっこよさを持っていた。
(なんで、この世界の人は かっこいい人が多いのだろう…)
ミラさんがいたことで、俺は ほっとして笑顔になる。
「お待たせ、アルフィ。初めてのガイディングだから、私が少しだけ付き添うわ。さぁ、ソファーへ座って。」
 
さっき座っていたソファーへと腰を下ろした。
相手の男性はテーブルを挟んで向かい側のソファーへ座り、ミラさんは男性の横辺りに立った。

「アルフィ、こっちは弟のセオ。22才。S級エスパーよ。ちょっとガイドするには難しい子なんだけど、あの・・レオンをガイディングしたことがあると聞いたから、きっと大丈夫。」

(ミラさんの弟!?…似てないから、全然気づかなかった。確かに瞳は同じ色だ。それにしても、いきなりS級なんて、大丈夫か、俺…)
「セオさん、よろしくお願いします。アルフィ・ルイスと言います。」
 ニコッと笑顔で挨拶をした。
 第一印象、大事!!
「よろしく。セオ・コールマンだ。」
 (じっと見られた気がしたけど…気のせいかな?)
ミラさんの〈あのレオン〉という言い方にも少し違和感を感じたが、今はガイディングに集中しないと…。

「まずはタブレットの操作方法を教えるわね。」
ミラさんが俺の方へと近づき、タブレットの方法を説明する。
(なるほど…、エスパーの情報を見たり、ガイディングの時間を入力するのか。)

「じゃぁ、さっそくだけど、ガイディングしてみて。」
チラッとアルフィの方を見ると、セオは あまり表情を変えず、右手を手の平を上にして出した。

(あまり、喋らない人なのかな?それとも、お姉さんの前だから?少し顔色が悪いから、体調が悪いのかも…。)
俺も慌てて右手を出し、セオの手の平に乗せた。
少し気を送ってみる。
すると、彼はガイディングが良かったのか、握手のように手を握ってきた。

「大丈夫そうね。良かった。私は会議に行かないといけないから、何かあったらセオに腕時計型通信機デバイスから連絡してもらってね。アルフィくんのは帰りに渡すから。」
ミラさんは部屋を出て行った。
「……」
「……」
(何か喋った方がいいかな?)
沈黙を破るようにセオに話かける。
「すみません、兄以外にするのは初めてなので…ちゃんと出来てますか?」
「上手いよ。
 アルフィって呼んでも、かまわないか?俺のことはセオでいい。」
「えっと…はい。セオさん。」
「呼び捨てで。」
(年上なのに、呼び捨てでいいのだろうか…。)
「…わかりました。セオって呼びますね。」

「あ。レオンから、最近よく君の話を聞くよ。友達なんだ。」
「!? そうなんですか?!レオン兄さん、俺のこと なんて言ってました?!」
兄の友達なら安心だと、明るく反応してしまった。

その反応にクスッと笑われてしまった。
笑う姿は穏やかで、さっきまでの近寄りがたい雰囲気が嘘のようだった。
「あれは病気だな。君が可愛くて仕方ないらしい。」
「あはは…家では、くっつきたがって、困ってます。」
「だろうな。」
「今日は訓練だったんですか?」
「ああ。レオンが会議に呼ばれてたから近々、ゲートが開くかもしれない。」
「ゲート….」
「記憶をなくしたと聞いたが、大丈夫なのか?」
「はい。家族に いろいろ教えてもらって、なんとか。」
「俺で良ければ力になるから、相談してくれ。」
「はい、ありがとうございます。」

体の中の黒いモヤのようなものが消え、セオの顔色が良くなった気がする。
(このくらいで、大丈夫かな?)
「このくらいで大丈夫でしょうか?」
「ああ、楽になった。また次も頼む。」
「はい!」
優しい笑顔を向けられ、嬉しくなる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

これって溺愛ルートってやつですか?

眠れぬ森のゴリ子
BL
苦労人気質のサラリーマン、藤堂奏は惰性で読んでいたネット小説の展開にイラッとした拍子に酒を飲み過ぎ、周りにあったビンにつまずいて頭を打って死んでしまう。そしてなんやかんや神様の暇つぶしでそのネット小説の登場人物に憑依してしまう。憑依した人物はネット小説「隠された青い薔薇」に登場する主人公ルカの幼い頃の家庭教師でのちに殺されてしまう人物だった。隠された青い薔薇は俺様でチートな能力を持つルカが数々の美女とのフラグを立てながら数々の悪役を倒しついには世界を救うという内容だ。さらに奏は憑依をしただけではなく憑依人物にふさわしい行動をしなければ生存ポイントがマイナスになり、死亡してしまうルールがあった。奏の運命はいかに…!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...