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最終話
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あれ?
射精したにしては随分元気そうな声色だ。ヨロヨロと右手を股間に伸ばしてヴァギナ周辺を触る。私の思ったとおり、自分の愛液だけが感じられて彼の精はなかった。そういえば精の独特な匂いも漂ってこない。となると、和弥はまだ射精出来てないことになる。私は仰向けに体勢を変えて和弥の前身を見る。和弥のペニスは彼のヘソ辺りまで直立していた。
「和弥、出せてないよね。苦しくない?」
「んー、まあそうだけど。後は自分でやるよ」
「私の中に出してよ」
「……茜、もう体力限界じゃん。無理させられないって」
和弥の言うとおり、私の体力はほとんど残っていない。いまは興奮しているから目が冴えているけれど、落ち着いたらすぐにでも寝られそうだ。それでも和弥の精が欲しい。
「んーん。私和弥にも気持ちよくなって欲しいし、赤ちゃんだって早く欲しい。だから……、いっぱいだして?」
「……辛かったら早めに言ってよ?」
和弥の気遣いに頷いて応える。私の了承を得たことで和弥のペニスが元気そうに跳ねた。
彼がペニスをヴァギナに狙いを定めようとしているところに私は口を開く。邪魔されて和弥は若干調子を崩されたみたいだ。きょとんとした瞳が私を射貫く。
「ぎゅってして」
「わかった」
私の意図が分かったようで、彼は仰向けになっている私に密着しながら抱きしめる。和弥の汗とか身体の匂いや体温、心臓の鼓動が私に伝わって十分愛されていることが分かる。幸福感に包まれる。至近距離で見つめ合うことで幸せそうな自分の顔が見えて私は満足する。
目を瞑って唇を差し出す。数秒しないうちに私の唇と彼の唇が優しく触れ合った。何度も何度も優しくて軽いキスを繰り返す。彼の愛情が私の"女"の部分をキュンとさせる。
「挿れるね」
「ぅん、いっぱいだして?」
囁いた和弥は私との抱擁を解く。身体を起こした彼はペニスを侵入させようとさっきみたいに狙いを定めたようだ。彼と目が合う。私が頷くと和弥は腰を押し進め、ペニスが侵入してくる。
「……っん、はぁ……」
和弥専用に変えられた私のヴァギナがペニスを歓迎する。逃がさないようにしながらも享楽を脳へと届けてくる。私の膣の深いところまで入ってくると、和弥の侵入は止まった。
「ぜんぶ……はいった。そんなにしめつけないで」
彼の耐えている声と呼吸で私はキュンとなる。私で感じてくれているんだ、と思うととても嬉しい。体力が無い今だけれども、力をヴァギナに込めると和弥がよがった。快楽に耐えるように、和弥の眉間に皺が寄っている。
不規則な呼吸を繰り返しながら、和弥の両手が伸びてくる。よく分からないまま私も両手を伸ばすと、彼は私の両手を取って私の胸へと誘導した。そして、口を開く。
「あかね、じぶんでも。ね?」
「……ほんき?」
「てがたりないんだ」
「そっかぁ……」
彼の拒否をさせない嗜虐的な態度が有無を言わせない。渋々ながらも1人で慰めるように乳首をいじり出す。グミのように固い感触が伝わって、最大限まで興奮しているのが分かった。
まずは乳首と垂直に人差し指の爪を立てて弾く。自分の身体の状態を一番自分が分かるように、私の一番感じる方法で乳首を慰め出す。当然のことながら、私は直ぐに熱のこもった吐息を漏らす。両手で口を押さえられないので恥ずかしくても我慢出来なさそうだ。
そんな私の痴態をみて満足したのか、和弥は腰を振り出す。乳首だけでなくヴァギナからも快感を伝えてくる。我慢しようとしたけれど、私の口から嬌声が漏れてしまう。
「っあ! っあ! っあ! っあ!」
「いたくない? きもちいい?」
「っきも! っち、いい!! もっと、っもっとシて!!」
「わかった!!」
彼のスピードが益々上がる。私への気遣いはそのままに自分の射精欲を満たそうとする動きに、静まった私の中の何かが再びこみ上げてくる。きっと今までの様に絶頂へと導かれることだろう。
「ひゃあぁ!?」
彼の左手が私の下腹部に乗って圧迫されつつも、彼の指がそのまま私のクリトリスを押し込む。予想だにしない快楽に私は強制的によがり声を出された。クリトリスへの快感も加わって、急激に子宮の辺りが熱くなる。
自分が最も感じる乳首への愛撫、優しくいじられるクリトリス、入り口周辺の弱点とヴァギナの奥を刺激する彼のペニス。
私の3大性感帯とも呼べる場所からの悦楽が私を高まりへと導いていく。身体の至る所からの快感に私は耐えられない。疲れているけれど、再び享楽の海へと誘われそうだ。
「あ!? っか、かずや!! わたし!? もうだめ! きちゃう!?」
「おれも……! でそう! いっしょに……! イこう!!」
「ぅん! いっぱい! いっぱい! だして!」
「ああ!」
ラストスパートをかけた和弥の愛撫が極限まで苛烈化する。私も彼に負けない位自分の乳首への愛撫を強くする。この数時間で何度目になるか分からない高まりが私を襲おうとこみ上げてくる。彼の顔を一目見ておこうと涙でにじんでいる視界で彼を捉えると、和弥と視線が合った。彼も限界のようだ。
「あ、あかね!! すきだ! あいしてる!!」
「わ、わたしも! すき!! っだいすき!! かずや!」
そのまま身体全体で和弥に愛される。すると……。
「でる!!」、「だめぇぇぇぇ!!?」
私達は同時に果てた。
私は大きくのたうち回る。今までの絶頂でも一番かもしれないこの享楽の塊は我慢することが出来ない。自分の心臓の鼓動がバクバクしているのが分かるし、それしか分からないとも言う。身体の体外から襲われて耐えられない。
肌全体が敏感になっていて少しの摩擦も快楽へと変えられてしまう。広くて深いこの享楽の海からなかなか帰ってくることが出来なかった。
「「っはぁ、っはぁ、っはぁ、っはぁ」」
私の意識がようやく戻ってきたら、和弥の荒々しい呼吸も聞えてくるようになった。彼はそのまま私の右に倒れ込んで仰向けになった。一緒に天井を見る。
疲労や幸福感、彼への愛情。色々なものを大事に持っている私は彼に身を寄せる。
「いっぱいだせた? きもちよすぎてしにそうだった、わたし」
「おれも、めちゃくちゃきもちよかった……」
和弥の声は既に眠気を含んでいて意識半分で私に返事をしているようだ。まあ、無理もない。短時間で3回も果ててしまったからそれはもう疲れることだろう。
案の定私にも睡魔が襲ってきた。指を動かすのにも、何か考えようとするだけでも億劫になった私もそのまままどろみに身を任せた。
極限まで疲れ切った私の意識は幸福感に包まれながらもすっと消えた。
温かさを感じて目が覚める。ぼうっとしながらも重たい瞼を開けていくとカーテン越しから太陽の光が見えてきた。さらに、何か美味しそうな匂いも漂ってきて私の意識は覚醒を続ける。空腹を訴えるお腹がぐうとなった。
「んんー。はわぁ」
欠伸をしながら身体を起こす。ベッドや私の惨状から記憶が蘇ってきた。彼に愛されたまま寝てしまったようだ。ベッドの染みや私と彼の体液の匂い。それらが昨晩の情事を鮮明に思い出させて、思わず下腹部を触る。ヴァギナの中に和弥のペニスが入っているような感覚を味合わせる。思わず苦笑した。
そういえば和弥の姿が見えない。和弥を探すためにも若干疲労が残っている全身でベッドから降りて歩き出す。寝室の出口から彼の姿を探すと、キッチンに立って料理をしている和弥がいた。私は出かける格好をしている和弥に声をかける。
「ぉはよ、和弥。早いね」
「茜、おはよう。お風呂入ってきな。出かけるんでしょ?」
そうだ! 今日は出かける予定が合ったんだ!
壁の時計を見やると10時30分を知らせていた。今日の予定を考えると早めに準備を終わらせても良いかもしれない。お風呂に入ってこようと思い立った私は下着と部屋着を持ってそのまま脱衣所を目指す。
シャワーを浴びてさっぱりした私は部屋着を着てリビングに戻る。和弥は食卓に料理を運んでいた。私は罪悪感でいっぱいになる。
「ごめん、色々やって貰ったみたいで」
「気にしなくて良いよ、好きでやってるだけだし。今回は俺だったってことじゃん?」
「ありがと」
そう言った和弥は食卓の側の椅子に座る。私も彼に続いた。食卓の上にはフレンチトースト、海鮮サラダ、スクランブルエッグやポタージュスープなんかが載っていてどれも美味しそうだ。口の中で唾液が出てくる。
「「頂きます」」
私達の身体の糧になってくれる食糧に感謝を……。なんておこがましいけれど、2人でそう唱えて目の前の料理に食べるとしよう。朝ご飯兼お昼ご飯になってしまった料理に目を向ける。どれから食べようか。
まずはー、うん。
フォークを持って海鮮サラダへと手を伸ばす。ごまドレッシングがかかったわかめといかの味が口の中で広がって、思わずうっとりする。情事で無くなった体力を取り戻せと言わんばかりにお腹がグウグウ鳴って私はそれに応える。
マーガリンやイチゴジャムが薄く伸ばしたそれぞれのトースト、わかめやいか、オクラが載った海鮮サラダ、砂糖が入って口溶けが良いスクランブルエッグや身体の中から暖めてくれるポタージュスープ。目の前の食糧を味わいながらも次々に口の中で咀嚼する。どれもが美味しくて手が止まらない。
目の前にあった食糧は直ぐに私達の身体の中に吸収された。ペロリと平らげた私達は思わずお腹を摩って食休みに入る。
「「ごちそうさまでした!」」
「はぁー、美味しかった! ありがと、和弥!」
「どういたしまして。出発何時くらいにする?」
「……準備したらすぐ行こうか、色々寄りたいんでしょ?」
「そうだな、そうしようか!」
ご飯を作ってくれた和弥の代わりに使った食器を洗うためにキッチンに向かった。スポンジに食器用洗剤を数滴垂らして泡立たせる。その後は使ったお皿、フォークやコップなんかを洗っていった。
食休み兼食器洗いを終わらせた私は洗面所に向かう。歯磨きをしながら鏡の中の私を確認していく。
そこまで長くない髪の毛はさっきのシャワーで及第点になった。ドライヤーもかけたから髪の毛は大丈夫。
メイクもそこまで派手なものにはしたこと無いから、乳液やらファンデーションで下地を作って眉毛やアイラインを作る。そんなに化粧の時間はかからなかった。化粧をすると何割かましに綺麗に見えた様な気がする。
どんな服にしようかなー……。
頭の中でコーディネーションを色々考えていく。普段はズボンやワイシャツだから今日は女の子っぽい格好をしても良いかもしれない。となると、スカートとか? うーん、あまり良いアイデアが浮かんでこない。こうなったら。
「和弥、私どんな格好したら嬉しい?」
「清楚系! 女子アナっぽいやつ!」
「オッケー!!」
せっかくだし和弥の注文を聞こうとしたら、"女子アナっぽいやつ"と注文が返ってきた。そうすると、ロングワンピ-スみたいなのかが良いかもしれない。
私のクローゼットの中を確認して今日の服装を考える。持っている服を流し目でさっと確認していくと和弥の注文に応えられそうなものが見つかった。
部屋着を脱いで下着姿になる。お気に入りの薄緑色の下着だ。そのまま今日のコーディネートに必要な淡い水色のトップスにレーススカートを着ていく。もちろんストッキングも忘れない。
姿見で見ても"女子アナっぽいやつ"は達成出来ていると思う。和弥が喜んでくれたら嬉しいな。
最後は持ち物だ。昨日準備しておいた手提げ鞄の中をざっと見る。財布もスマホもあるし大丈夫そうだった。
準備を終えた私はリビングに向かった。既に和弥は準備を終わらせていてジャケットを羽織った今時風の男がいた。その爽やかな風貌は昨晩の情事とは打って変わっていて、こんないい男を捕まえた独占欲と優越感が少し現われた。
「茜、可愛いよ」
「和弥こそ、格好良いよ?」
2人でニシシと笑った後に私は自分の左手を彼に伸ばす。和弥の右手が私の左手と合わさり指を絡める。そして、2人で玄関の方へと向かっていく。
「忘れ物無いよね? どこから行こっか」
「大丈夫! えーっと、指輪受け取って、市役所行ってぇ」
「家具も見とく?」
「そうだね! 後はー。うん適当で良いよね」
「オッケー、じゃあ行こう」
目に見えて浮き足立っている私達が玄関を開けると、外から春の陽気が漂ってきて、新しい1年の始まりが近いことが分かった。桜の開花も始まっているらしい。お花見にも行きたいな。そして、今日は今の関係性が終わって私達の新しい関係性の始まりの日でもある。私の胸に幸福感が広がっていく。
拝啓、お母さんお父さん。私、今とっても幸せです!!
射精したにしては随分元気そうな声色だ。ヨロヨロと右手を股間に伸ばしてヴァギナ周辺を触る。私の思ったとおり、自分の愛液だけが感じられて彼の精はなかった。そういえば精の独特な匂いも漂ってこない。となると、和弥はまだ射精出来てないことになる。私は仰向けに体勢を変えて和弥の前身を見る。和弥のペニスは彼のヘソ辺りまで直立していた。
「和弥、出せてないよね。苦しくない?」
「んー、まあそうだけど。後は自分でやるよ」
「私の中に出してよ」
「……茜、もう体力限界じゃん。無理させられないって」
和弥の言うとおり、私の体力はほとんど残っていない。いまは興奮しているから目が冴えているけれど、落ち着いたらすぐにでも寝られそうだ。それでも和弥の精が欲しい。
「んーん。私和弥にも気持ちよくなって欲しいし、赤ちゃんだって早く欲しい。だから……、いっぱいだして?」
「……辛かったら早めに言ってよ?」
和弥の気遣いに頷いて応える。私の了承を得たことで和弥のペニスが元気そうに跳ねた。
彼がペニスをヴァギナに狙いを定めようとしているところに私は口を開く。邪魔されて和弥は若干調子を崩されたみたいだ。きょとんとした瞳が私を射貫く。
「ぎゅってして」
「わかった」
私の意図が分かったようで、彼は仰向けになっている私に密着しながら抱きしめる。和弥の汗とか身体の匂いや体温、心臓の鼓動が私に伝わって十分愛されていることが分かる。幸福感に包まれる。至近距離で見つめ合うことで幸せそうな自分の顔が見えて私は満足する。
目を瞑って唇を差し出す。数秒しないうちに私の唇と彼の唇が優しく触れ合った。何度も何度も優しくて軽いキスを繰り返す。彼の愛情が私の"女"の部分をキュンとさせる。
「挿れるね」
「ぅん、いっぱいだして?」
囁いた和弥は私との抱擁を解く。身体を起こした彼はペニスを侵入させようとさっきみたいに狙いを定めたようだ。彼と目が合う。私が頷くと和弥は腰を押し進め、ペニスが侵入してくる。
「……っん、はぁ……」
和弥専用に変えられた私のヴァギナがペニスを歓迎する。逃がさないようにしながらも享楽を脳へと届けてくる。私の膣の深いところまで入ってくると、和弥の侵入は止まった。
「ぜんぶ……はいった。そんなにしめつけないで」
彼の耐えている声と呼吸で私はキュンとなる。私で感じてくれているんだ、と思うととても嬉しい。体力が無い今だけれども、力をヴァギナに込めると和弥がよがった。快楽に耐えるように、和弥の眉間に皺が寄っている。
不規則な呼吸を繰り返しながら、和弥の両手が伸びてくる。よく分からないまま私も両手を伸ばすと、彼は私の両手を取って私の胸へと誘導した。そして、口を開く。
「あかね、じぶんでも。ね?」
「……ほんき?」
「てがたりないんだ」
「そっかぁ……」
彼の拒否をさせない嗜虐的な態度が有無を言わせない。渋々ながらも1人で慰めるように乳首をいじり出す。グミのように固い感触が伝わって、最大限まで興奮しているのが分かった。
まずは乳首と垂直に人差し指の爪を立てて弾く。自分の身体の状態を一番自分が分かるように、私の一番感じる方法で乳首を慰め出す。当然のことながら、私は直ぐに熱のこもった吐息を漏らす。両手で口を押さえられないので恥ずかしくても我慢出来なさそうだ。
そんな私の痴態をみて満足したのか、和弥は腰を振り出す。乳首だけでなくヴァギナからも快感を伝えてくる。我慢しようとしたけれど、私の口から嬌声が漏れてしまう。
「っあ! っあ! っあ! っあ!」
「いたくない? きもちいい?」
「っきも! っち、いい!! もっと、っもっとシて!!」
「わかった!!」
彼のスピードが益々上がる。私への気遣いはそのままに自分の射精欲を満たそうとする動きに、静まった私の中の何かが再びこみ上げてくる。きっと今までの様に絶頂へと導かれることだろう。
「ひゃあぁ!?」
彼の左手が私の下腹部に乗って圧迫されつつも、彼の指がそのまま私のクリトリスを押し込む。予想だにしない快楽に私は強制的によがり声を出された。クリトリスへの快感も加わって、急激に子宮の辺りが熱くなる。
自分が最も感じる乳首への愛撫、優しくいじられるクリトリス、入り口周辺の弱点とヴァギナの奥を刺激する彼のペニス。
私の3大性感帯とも呼べる場所からの悦楽が私を高まりへと導いていく。身体の至る所からの快感に私は耐えられない。疲れているけれど、再び享楽の海へと誘われそうだ。
「あ!? っか、かずや!! わたし!? もうだめ! きちゃう!?」
「おれも……! でそう! いっしょに……! イこう!!」
「ぅん! いっぱい! いっぱい! だして!」
「ああ!」
ラストスパートをかけた和弥の愛撫が極限まで苛烈化する。私も彼に負けない位自分の乳首への愛撫を強くする。この数時間で何度目になるか分からない高まりが私を襲おうとこみ上げてくる。彼の顔を一目見ておこうと涙でにじんでいる視界で彼を捉えると、和弥と視線が合った。彼も限界のようだ。
「あ、あかね!! すきだ! あいしてる!!」
「わ、わたしも! すき!! っだいすき!! かずや!」
そのまま身体全体で和弥に愛される。すると……。
「でる!!」、「だめぇぇぇぇ!!?」
私達は同時に果てた。
私は大きくのたうち回る。今までの絶頂でも一番かもしれないこの享楽の塊は我慢することが出来ない。自分の心臓の鼓動がバクバクしているのが分かるし、それしか分からないとも言う。身体の体外から襲われて耐えられない。
肌全体が敏感になっていて少しの摩擦も快楽へと変えられてしまう。広くて深いこの享楽の海からなかなか帰ってくることが出来なかった。
「「っはぁ、っはぁ、っはぁ、っはぁ」」
私の意識がようやく戻ってきたら、和弥の荒々しい呼吸も聞えてくるようになった。彼はそのまま私の右に倒れ込んで仰向けになった。一緒に天井を見る。
疲労や幸福感、彼への愛情。色々なものを大事に持っている私は彼に身を寄せる。
「いっぱいだせた? きもちよすぎてしにそうだった、わたし」
「おれも、めちゃくちゃきもちよかった……」
和弥の声は既に眠気を含んでいて意識半分で私に返事をしているようだ。まあ、無理もない。短時間で3回も果ててしまったからそれはもう疲れることだろう。
案の定私にも睡魔が襲ってきた。指を動かすのにも、何か考えようとするだけでも億劫になった私もそのまままどろみに身を任せた。
極限まで疲れ切った私の意識は幸福感に包まれながらもすっと消えた。
温かさを感じて目が覚める。ぼうっとしながらも重たい瞼を開けていくとカーテン越しから太陽の光が見えてきた。さらに、何か美味しそうな匂いも漂ってきて私の意識は覚醒を続ける。空腹を訴えるお腹がぐうとなった。
「んんー。はわぁ」
欠伸をしながら身体を起こす。ベッドや私の惨状から記憶が蘇ってきた。彼に愛されたまま寝てしまったようだ。ベッドの染みや私と彼の体液の匂い。それらが昨晩の情事を鮮明に思い出させて、思わず下腹部を触る。ヴァギナの中に和弥のペニスが入っているような感覚を味合わせる。思わず苦笑した。
そういえば和弥の姿が見えない。和弥を探すためにも若干疲労が残っている全身でベッドから降りて歩き出す。寝室の出口から彼の姿を探すと、キッチンに立って料理をしている和弥がいた。私は出かける格好をしている和弥に声をかける。
「ぉはよ、和弥。早いね」
「茜、おはよう。お風呂入ってきな。出かけるんでしょ?」
そうだ! 今日は出かける予定が合ったんだ!
壁の時計を見やると10時30分を知らせていた。今日の予定を考えると早めに準備を終わらせても良いかもしれない。お風呂に入ってこようと思い立った私は下着と部屋着を持ってそのまま脱衣所を目指す。
シャワーを浴びてさっぱりした私は部屋着を着てリビングに戻る。和弥は食卓に料理を運んでいた。私は罪悪感でいっぱいになる。
「ごめん、色々やって貰ったみたいで」
「気にしなくて良いよ、好きでやってるだけだし。今回は俺だったってことじゃん?」
「ありがと」
そう言った和弥は食卓の側の椅子に座る。私も彼に続いた。食卓の上にはフレンチトースト、海鮮サラダ、スクランブルエッグやポタージュスープなんかが載っていてどれも美味しそうだ。口の中で唾液が出てくる。
「「頂きます」」
私達の身体の糧になってくれる食糧に感謝を……。なんておこがましいけれど、2人でそう唱えて目の前の料理に食べるとしよう。朝ご飯兼お昼ご飯になってしまった料理に目を向ける。どれから食べようか。
まずはー、うん。
フォークを持って海鮮サラダへと手を伸ばす。ごまドレッシングがかかったわかめといかの味が口の中で広がって、思わずうっとりする。情事で無くなった体力を取り戻せと言わんばかりにお腹がグウグウ鳴って私はそれに応える。
マーガリンやイチゴジャムが薄く伸ばしたそれぞれのトースト、わかめやいか、オクラが載った海鮮サラダ、砂糖が入って口溶けが良いスクランブルエッグや身体の中から暖めてくれるポタージュスープ。目の前の食糧を味わいながらも次々に口の中で咀嚼する。どれもが美味しくて手が止まらない。
目の前にあった食糧は直ぐに私達の身体の中に吸収された。ペロリと平らげた私達は思わずお腹を摩って食休みに入る。
「「ごちそうさまでした!」」
「はぁー、美味しかった! ありがと、和弥!」
「どういたしまして。出発何時くらいにする?」
「……準備したらすぐ行こうか、色々寄りたいんでしょ?」
「そうだな、そうしようか!」
ご飯を作ってくれた和弥の代わりに使った食器を洗うためにキッチンに向かった。スポンジに食器用洗剤を数滴垂らして泡立たせる。その後は使ったお皿、フォークやコップなんかを洗っていった。
食休み兼食器洗いを終わらせた私は洗面所に向かう。歯磨きをしながら鏡の中の私を確認していく。
そこまで長くない髪の毛はさっきのシャワーで及第点になった。ドライヤーもかけたから髪の毛は大丈夫。
メイクもそこまで派手なものにはしたこと無いから、乳液やらファンデーションで下地を作って眉毛やアイラインを作る。そんなに化粧の時間はかからなかった。化粧をすると何割かましに綺麗に見えた様な気がする。
どんな服にしようかなー……。
頭の中でコーディネーションを色々考えていく。普段はズボンやワイシャツだから今日は女の子っぽい格好をしても良いかもしれない。となると、スカートとか? うーん、あまり良いアイデアが浮かんでこない。こうなったら。
「和弥、私どんな格好したら嬉しい?」
「清楚系! 女子アナっぽいやつ!」
「オッケー!!」
せっかくだし和弥の注文を聞こうとしたら、"女子アナっぽいやつ"と注文が返ってきた。そうすると、ロングワンピ-スみたいなのかが良いかもしれない。
私のクローゼットの中を確認して今日の服装を考える。持っている服を流し目でさっと確認していくと和弥の注文に応えられそうなものが見つかった。
部屋着を脱いで下着姿になる。お気に入りの薄緑色の下着だ。そのまま今日のコーディネートに必要な淡い水色のトップスにレーススカートを着ていく。もちろんストッキングも忘れない。
姿見で見ても"女子アナっぽいやつ"は達成出来ていると思う。和弥が喜んでくれたら嬉しいな。
最後は持ち物だ。昨日準備しておいた手提げ鞄の中をざっと見る。財布もスマホもあるし大丈夫そうだった。
準備を終えた私はリビングに向かった。既に和弥は準備を終わらせていてジャケットを羽織った今時風の男がいた。その爽やかな風貌は昨晩の情事とは打って変わっていて、こんないい男を捕まえた独占欲と優越感が少し現われた。
「茜、可愛いよ」
「和弥こそ、格好良いよ?」
2人でニシシと笑った後に私は自分の左手を彼に伸ばす。和弥の右手が私の左手と合わさり指を絡める。そして、2人で玄関の方へと向かっていく。
「忘れ物無いよね? どこから行こっか」
「大丈夫! えーっと、指輪受け取って、市役所行ってぇ」
「家具も見とく?」
「そうだね! 後はー。うん適当で良いよね」
「オッケー、じゃあ行こう」
目に見えて浮き足立っている私達が玄関を開けると、外から春の陽気が漂ってきて、新しい1年の始まりが近いことが分かった。桜の開花も始まっているらしい。お花見にも行きたいな。そして、今日は今の関係性が終わって私達の新しい関係性の始まりの日でもある。私の胸に幸福感が広がっていく。
拝啓、お母さんお父さん。私、今とっても幸せです!!
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