見知らぬ隣人さん

岩石の扉

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神隠し7

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「時計無くなってるねんけどどっか置いた?」

公介は羽衣音に問い掛けた。
事の重大さに気付いていない羽衣音は、ん?と言って公介に近づいた。

羽衣音の表情が曇る。

「唯香、時計をおもちゃにしたらあかんて前も言うたやんな。」

「ゆいかさわってないもん」

「ほんならなんでないん!」

「ゆいかさわってないもん、うわぁーん」

「泣いてもあかんで!どこ!」

「しらんーうわぁーん」

「羽衣音落ち着いて、唯香も泣けへん」

公介自身も少し唯香が隠したとか羽衣音が置き場所を変えたとかそういう想像をしていた。

しかし、感じられる空気から察するにどちらでもないのは明白だ。

羽衣音が移動させたなら他の時計があるのがおかしい。唯香なら隠したことをしらばっくれたりはしないだろう。

全身から汗が吹き出した。どこかに置き忘れたか、あるいはカバンの中。
いやいや、両方有り得ない。
休日にしか使わない上に出先で外すことがない。

「通帳とか印鑑とかあるか確認しよ!ほんでけいさつよぼ!」

羽衣音は通帳をしまっている引き出しを開けた。安堵の表情でこちらを向きまた険しい顔で警察に電話して、と言ってきた。

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