プールサイド

なお

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幼馴染とクラスメイト

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「さぼってないよ!居残りしてただけなのに、なんでそこまで…」

あ、やば。
言い返しながら、怒鳴られてびっくりした衝撃で、鼻がツーンと……
目、赤くなってないかな。
水泳のしごきなら耐えられるけど、今のはなんか……

「居残り?何のだよ?」
「数学が……」
「あー、おまえ苦手そう」
「…………」

なんかいやな言い方……
私は、涙が見えないようにさっさとゴーグルをつけて、自分のレーンに入った。
プールサイドにホワイトボードがあって、そこには今日の練習メニューが書かれている。
コウキたちは今休憩中らしい……

あんな怒鳴らなくてもよくない??
こわいよ。

やっぱりあんなの気にしない。
あいつのこと考えて眠れなかったのがもったいない。
あんなやつのこと、好きになるわけない。

朝と同じようにがしがし泳ぎ、日が暮れた。




「なおー。ごめん今日彼氏と帰るね!」

藍瑠が、急ぎ気味に着替えをこなしてて、私は疲れでぼーっとしていた。とにかく眠たい。

「うん…わかったあ」

野原君のことは言えないしな……
るんるん更衣室を出て行く藍瑠を見送って、着替えてたら、一番最後になってしまった。
最後の人は体育教官室まで更衣室の鍵を戻しに行かなきゃいけない。
ガラガラとドアをしめながら、暗くなった窓の外を見たら、ぼんやり映る人影があった。

……いると思った。
コウキだ。

「…………コウキも最後?」
「まあな。何するにもおっせーないつも」
「ウザっ!」

でも、昔のタイムは2歳離れたあんたといい勝負でしたけどね。
ブレは私の完勝でしたけどね。

なんなの。なんか知らないけどまだ怒ってんの。
女々しいってこういうことを言うんだよ。
蛍光灯のあかりが点々とつく廊下で、私が前、コウキが後をついてくる。

「私、男子更衣室の鍵もついでに返しに行くから貸してよ」
「オレも行く」 
「………」

ついてきてまた嫌味言うの?
また、大きな声で怒鳴るの?
少しは性格丸くなったと思ってたのに、子供のまんま。


「失礼しまーす」
「水泳部、鍵返しにきました」

壁に鍵をひっかけて退室し、無言で歩く私たち。
門が見えた頃、コウキが、「勉強教えてやろっか?」と言った。

「いらない。」

これ以上弱み握られてバカにされたくないもん。
門を出てスタスタ歩く。コウキも足早になってきたから、走って横断歩道を渡った。
信号は赤になって、コウキはまだ渡れない。

「なお!待ってろ!」
「イヤだよ!命令しないで!」

コウキの言う通りになんてしたくない。
今のうちにと駅まで進む。
どうして、あんなに必死で追いかけてくるの。なんで、こんなに心を掻き乱してくるの?
なんで、私はあいつのこと嫌いになれないの?

逃げておきながら、後ろが気になって振り向いたら、すぐそこに肩で息をしているコウキがいた。

「足はえーよ!」
「…………」

無言で、結局並んで歩く。
コウキが、自分の頭をかきむしって私を見る。

「……なに?」
「泣かせてごめん」

やっぱり、謝った……

私が涙目になったの見てたんだ。
謝りたくて、ついてきたんだ。

コウキは気まずそうに続けた。

「ごめん。あれは……イライラしてて」
「……やつあたり?」
「ちがう、八木が…………」
「藍瑠?」
「あーちがう……違う違う」
「なんなの」
「クッソもう、わかんねぇかなぁ~」

わかんねぇかなあって、なに。
ちゃんと言ってくれなきゃわからない……

コウキの髪、まだ濡れてる。
ちょっときつめの目元と、薄い唇。
目が合って、あわててそらす。

「も、もう、いいよ。急に怒鳴んないでくれれば……」
「だって、おまえが男といるからだろ~」
「え?」

見つめたら、コウキは下を向いて顔を隠した。

「……って、八木が言うしさぁ……」

私が野原君といたから怒ってたの?

どく、って心臓が……

「なかなか来ねーし……」

どく、どく、どく。


急行電車がホームを通過して、突風が吹く。

「すっげー風…」

顔、あげられない。
それは風のせいじゃなくて……
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