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ください

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 手を引かれ褥のある隣の部屋へ入ると、光秀が静かに障子を閉めた。

 腰に回された手にそっと引き寄せられ、美琴は光秀の胸に顔を埋める。
 このままずっと抱きしめられていたいような、もっと熱っぽく求められたいような——。

 光秀の香りを一杯に吸い込んで息を吐くと、意地悪な声に唆された。

「どうして欲しいか、お前の唇で紡いでみろ」
 
 ちょん、と長い指で、唇をつつかれる。

「口付け、して、ください」

 恥じらいながら告げると、口元を緩めた光秀の顔が近づいて、唇が触れ合った。と思うとすぐに離れてしまう。

「これでいいか?」

 揶揄いを含んだ目に、瞳を覗き込まれる。
 頭を振って、美琴は甘えた。

「だめです! もっと……もっといっぱい、して」

 いつになく素直に紡いだ言葉が、美琴自身をも煽る。

 苛立ったように眉を顰めた光秀に、美琴の唇はすぐに塞がれた。

 触れるだけで足りるなど、あるはずもない。
 光秀にも、そう思っていて欲しい。

 重ね合わせた唇の隙間からすぐに差し込まれた舌に、口の中を舐られる。美琴も舌を伸ばし、光秀のそれと必死で絡ませた。

 ずっ、と音を立てて吸われると、美琴の喉からあられもない声が漏れ出る。追い打ちをかけるように口蓋をなぞられて、漏れ出た甘い声は、光秀の耳に届いたに違いない。

 自力で立っていられなくなりそうで、美琴は光秀の首に腕を縋り付かせた。

「ん、んんっ、んあっ」

 ガクンと膝から力が抜け、美琴はその場にくずおれる。
 へたり込んだ美琴は光秀の長い指に顎を掬われ、上向かされた。熱情の籠る眼差しに、射抜かれる。

 情欲を隠しもしない光秀の双眸に捉えられ、肉食獣の獲物になったような心地がした。
 刹那、貪るように口付けられる。

 座っていてもなお力は入らず、まさしく意のままにされている。口の中にこれほど快楽を享受できる場所があることを、美琴は初めて知った。

 たっぷり舐られて光秀の唇が離れていく頃にはくたりと力が抜け、気づけば褥に身体を投げ出していた。

「まだ口付けしかしていないが……」

 荒い息を吐く美琴は、涙の溜まった瞳でじっと光秀を見つめる。

「……光秀さま、すき……」

 美琴にできるのは、素直に気持ちを紡ぐことくらであった。

 けれどその真っ直ぐな思いが、光秀の心の中にぬるりと入り込んで、抉るように愛を伝える。

「っ……」

 また眉を顰めた光秀の頰に、美琴は手を伸ばし僅かに微笑む。

「お前になら、籠絡されるのも悪くない、か」

 伸ばした手に光秀の手が添えられ、人差し指にざらりと舌が這わされる。その煽情的な刺激に、ぞくりと背中が粟立ち小さく息を詰めた。

 触れられてもいないのに、身体が熱い。

「お前は唇も、指先ですら甘い。これほど甘くては悪酔いしてしまいそうだ」

 首筋を辿った光秀の指が、美琴の着物の上をそろりと撫でていく。下腹部辺りまで下りていった指先の動きが、そこでピタリと止まった。

 光秀の眼差しに射抜かれたまま、美琴は動くことができない。

「帯が邪魔だな」

 言うなり解いた帯が抜き取られ、着物の合わせが開かれる。晒された肌が粟立つのは、空気の冷たさのせいなの
か、視線の艶かしさのせいなのか。

 ゾクゾクと昇り来る快楽の前触れに、吐息が熱くなる。

 それからはもう、どこをどうされたのかわからない程に甘やかされ、蕩けさせられ、打ち込まれる重みを必死に受け止めた。

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