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戯れ
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信長の無骨な手に頬を捉えられ上向かされると、まるで蹂躙するように見つめる瞳があり、慄いた美琴は目を瞑った。
それを承諾と受け取られたのか、唇を甘噛みされ、驚いて発しそうになった声をなんとか堪える。
衆人環視の中で信長の意のままに弄ばれるのは、あまりに辛い。だが、ここで嫌だと言えば天下静謐は叶わず、光秀の面目も丸潰れだ。
自分さえ我慢すれば、天下が丸く治る。
信長の意のままにされるしか、選択肢はない。
甘噛みされ、軽く引っ張られた唇に、信長の熱いそれが被さり音を立てて吸われた。恥ずかしいのと体勢が崩れそうなのとで、広く開いた信長の着物の襟に掴まった。
それでもこのままここで組み敷かれるのだけは、何としても避けたい。
勇気を振り絞り、掴まっていた信長の胸を僅かずつ押してみると、やっと唇が解放され力が抜けそうになる。
「信長様……これ以上は……二人で」
信長にだけ聞こえるよう潜めた声で、この狂った状況を終わらせたいと願いを零す。
彼は、それを受け入れてくれた。
「下がれ」
信長の一言で、座敷にいた男たちは皆そそくさと退出して行く。
襖がぴしゃりと閉められると、信長に組み敷かれた。
ごつごつした信長の手に身体を撫でられ、心ならずも息があがる。荒っぽい触れ方は光秀とは正反対で、拒んではいないのに陵辱されているかのようだ。
だが信長は夢中で美琴を求めているに過ぎないのだろう。
時折求められる口付けや見つめてくる瞳が、宝物を手に入れた子供のように思える。
そこまで考えて、美琴は心奥で苦笑いを漏らした。こんな状況で光秀のことを思い起こしている自分に。
事を終え、美琴の隣に寝転んでいた信長に顎を掴まれ振り向かされると、一筋涙が溢れた。
決して無理矢理に抱かれたわけでないことは、美琴の身体に聞けばわかる。
ただ、美琴が自分の気持ちに気づくのが遅かった。
(私、好きなんだ……光秀様のこと)
信長のものとなる事は、望まれたのもあるが、自分で決めた事だ。けれどもそれは、自分の本心を見て見ぬ振りであったのだと、今更になって気が付いた。
燻っていた火種が、パチンと小さく爆ぜた。
「それほど嫌だったか」
信長に問われ、美琴は頭を振る。
そうだと答えても、誰も報われない。美琴が信長のものである限り、光秀は喜んでくれるだろう。
それだけでも、信長のものでいる意味が美琴にはある。
信長の瞳を見つめ、美琴は力無なく微笑んだ。
それを承諾と受け取られたのか、唇を甘噛みされ、驚いて発しそうになった声をなんとか堪える。
衆人環視の中で信長の意のままに弄ばれるのは、あまりに辛い。だが、ここで嫌だと言えば天下静謐は叶わず、光秀の面目も丸潰れだ。
自分さえ我慢すれば、天下が丸く治る。
信長の意のままにされるしか、選択肢はない。
甘噛みされ、軽く引っ張られた唇に、信長の熱いそれが被さり音を立てて吸われた。恥ずかしいのと体勢が崩れそうなのとで、広く開いた信長の着物の襟に掴まった。
それでもこのままここで組み敷かれるのだけは、何としても避けたい。
勇気を振り絞り、掴まっていた信長の胸を僅かずつ押してみると、やっと唇が解放され力が抜けそうになる。
「信長様……これ以上は……二人で」
信長にだけ聞こえるよう潜めた声で、この狂った状況を終わらせたいと願いを零す。
彼は、それを受け入れてくれた。
「下がれ」
信長の一言で、座敷にいた男たちは皆そそくさと退出して行く。
襖がぴしゃりと閉められると、信長に組み敷かれた。
ごつごつした信長の手に身体を撫でられ、心ならずも息があがる。荒っぽい触れ方は光秀とは正反対で、拒んではいないのに陵辱されているかのようだ。
だが信長は夢中で美琴を求めているに過ぎないのだろう。
時折求められる口付けや見つめてくる瞳が、宝物を手に入れた子供のように思える。
そこまで考えて、美琴は心奥で苦笑いを漏らした。こんな状況で光秀のことを思い起こしている自分に。
事を終え、美琴の隣に寝転んでいた信長に顎を掴まれ振り向かされると、一筋涙が溢れた。
決して無理矢理に抱かれたわけでないことは、美琴の身体に聞けばわかる。
ただ、美琴が自分の気持ちに気づくのが遅かった。
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燻っていた火種が、パチンと小さく爆ぜた。
「それほど嫌だったか」
信長に問われ、美琴は頭を振る。
そうだと答えても、誰も報われない。美琴が信長のものである限り、光秀は喜んでくれるだろう。
それだけでも、信長のものでいる意味が美琴にはある。
信長の瞳を見つめ、美琴は力無なく微笑んだ。
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