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スマホ
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牢を出され、恒興の館で世話になっていた美琴は、すっかり元気を取り戻した。
恒興の館の一室を間借りし、彼の遠縁の者だという事にして住まわせてもらっている。実際恒興は、実の兄であるかのように美琴を気にかけ、可愛がった。
それは彼の性格なのだろう。人は互いに助け合って生きねば、と常々思い実践している、恒興らしい行動だ。
美琴はというと、史跡見学に来た時の軽装から慣れない着物に着替え、言葉遣いにも出来るだけ神経を注いで、現代人だと気付かれないように振舞っている。
恒興以外の人と話す時は緊張を強いられるが、こうして庭で花を愛でている時は、気を抜いていられる。
館の中でなら何をしていても何処にいても、恒興は文句を言わない。やる事がなさすぎて寧ろ暇を持て余しているのだが。
庭の一角に咲いた芙蓉の前に立ち尽くし、少しずつ重なり合って咲く桃色の花びらをじっと見つめた。香りは特にないが、美しい色合いが安らぎを与えてくれるようだ。
美琴は懐から取り出したスマホの電源を入れ、カメラを起動させると、優しげな色合いの花を画面に映し、ディスプレイの丸印をタップする。シャッター音が鳴り、写真が撮れた。
意外とあっさり返してもらったリュックの中に、放り込まれていたのを持ち出してきたのだ。
撮れた写真を眺めていると、背後から「おい」と声をかけられ、美琴はビクッと身体を震わせた。
スマホを胸の前に持ったまま、ゆっくりと振り返る。
聞き覚えのある声は美琴の予想通り、光秀のものだった。腕組みで廊下の柱に背を預け、不機嫌そうに美琴を睨んでいる。
庭に出ていたのがまずかったのだろうか。恒興ならば咎められる事もないが。
「すみません。花が綺麗だったので、つい」
スマホを手にしたまま廊下へ上がると、光秀に止められた。
「待て。それは何だ」
高い位置にある光秀の顔を見上げると、彼の視線はスマホへ注がれている。
(ああ、携帯電話、知らないよね)
戦国時代にあるはずもない電子機器が珍しいのは、当たり前のことだ。光秀が興味を持つのも頷ける。
恒興の館の一室を間借りし、彼の遠縁の者だという事にして住まわせてもらっている。実際恒興は、実の兄であるかのように美琴を気にかけ、可愛がった。
それは彼の性格なのだろう。人は互いに助け合って生きねば、と常々思い実践している、恒興らしい行動だ。
美琴はというと、史跡見学に来た時の軽装から慣れない着物に着替え、言葉遣いにも出来るだけ神経を注いで、現代人だと気付かれないように振舞っている。
恒興以外の人と話す時は緊張を強いられるが、こうして庭で花を愛でている時は、気を抜いていられる。
館の中でなら何をしていても何処にいても、恒興は文句を言わない。やる事がなさすぎて寧ろ暇を持て余しているのだが。
庭の一角に咲いた芙蓉の前に立ち尽くし、少しずつ重なり合って咲く桃色の花びらをじっと見つめた。香りは特にないが、美しい色合いが安らぎを与えてくれるようだ。
美琴は懐から取り出したスマホの電源を入れ、カメラを起動させると、優しげな色合いの花を画面に映し、ディスプレイの丸印をタップする。シャッター音が鳴り、写真が撮れた。
意外とあっさり返してもらったリュックの中に、放り込まれていたのを持ち出してきたのだ。
撮れた写真を眺めていると、背後から「おい」と声をかけられ、美琴はビクッと身体を震わせた。
スマホを胸の前に持ったまま、ゆっくりと振り返る。
聞き覚えのある声は美琴の予想通り、光秀のものだった。腕組みで廊下の柱に背を預け、不機嫌そうに美琴を睨んでいる。
庭に出ていたのがまずかったのだろうか。恒興ならば咎められる事もないが。
「すみません。花が綺麗だったので、つい」
スマホを手にしたまま廊下へ上がると、光秀に止められた。
「待て。それは何だ」
高い位置にある光秀の顔を見上げると、彼の視線はスマホへ注がれている。
(ああ、携帯電話、知らないよね)
戦国時代にあるはずもない電子機器が珍しいのは、当たり前のことだ。光秀が興味を持つのも頷ける。
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