9 / 13
個々の爪
しおりを挟む
僕たちは馬車に乗っていた。
シャルテが王都で雇った神の祝福を持つ3人とだ。
男が2人女が1人。
確かに歴戦の戦士って風格はあるが、その内2人は舐めた態度が鼻につく。
基本的に恩恵は先天的な物なので生まれた時からちやほやされていたのだろう。
だが、戦力的にあてになるのは事実。
外ずらだけはよく接しておくとする。
カゲロウにもそう言い含めた。
恩恵の内容は各人とも話したくは無いと踏んでか、誰も言っていない。
自己紹介もしたにはしたが、名前と歳くらいなものだ。
僕が最年少。15才。
流石に恩恵を持つ人間が4人も乗っている馬車だ、魔物も一瞬でチリになって行く。
自慢げに神から得た身体能力を披露する男は、僕には酷く滑稽に思えた。
勿論、魔物避けという重要な役割を背負って貰った事は感謝しているが。
それと情報閲覧では神の恩恵は解らない。
解るのは身体能力、魔力、スキルだけだ。
そして彼らのうち魔物避けをしている男、テスラと1人だけ女の恩恵持ちのアルナは身体能力がAとなっている。
もう1人の男、カゲトは魔力がSでスキル量が1人だけずば抜けて多い。この3人で最強は恐らくカゲトだ。
まあ全員の恩恵が不明なので何とも言えないが。
外で魔物と戦ってるテスラもこの辺りの敵に恩恵を使うつもりが無いのか、特殊な力を使おうとはしない。
まあ、雑魚なので使う必要が無いだけだとは思うが。
馬車はここに来た時とは違う、これでもかというほどデカく、豪華な物だった。
それを2つ走らせている。
馬車は片方が僕を含める、恩恵持ち4人。それとカゲロウだ。
もう片方が雇い主の馬車だ。シャルテやリオンが乗っている。
恩恵の能力は歩兵100人分と同価値と考える事が戦術的に基本だ。
勿論、恩恵の種類によって差異は存在するが、大まかにはそうなっている。
要するにこの馬車に乗っている四人だけで歩兵400人分の働きを要求されている訳だ。
馬が違うのか、馬力の違いによって領地までは来る時よりもかなり早く到着した。
時刻は夕方6時。
明日には国境線が始まる。
そして夕食を終えた後、シャルテの意向によって情報の整理をすると僕たち恩恵を持つ4人とシャルテの父であり、この地の現領主であるセントルグ・マリテノールが一室に集まっていた。
「それじゃあまずは自己紹介と行くか。俺の名前はテスラ、歳は17。恩恵は殴れば殴るほどに相手に莫大なダメージを与える事が出来るもんだ」
僕は思う。それは当然だろうと。
まあ多分、こいつが言いたいのは追加ダメージって意味だろうけど。
「なるほど、ではテスラ君には強い個体や隊長クラスを任せるとしよう」
「おう!」
おい、恩恵まで話さないといけないのか?
聞いて無いぞ。
濁す方法を考えておかないと。
「それじゃ、次は私が自己紹介しましょう。名はアルナ、歳は17です。恩恵の内容は雷を操る事が出来ます。纏ったり、纏わせたり、発したり。魔法の様に使う事も可能です」
雷か、性質が謎過ぎるから何とも言えないな。
彼女自身がどれだけ雷という物を理解しているかによっては高い戦闘能力になるだろう。
「それはこの戦いにおいて重宝する能力だ。アルナ殿には撃滅を任せる事が出来るな」
「はい」
正直、この2人は大して期待していない。
恩恵がどうのって話ではなく、人として……だ。
戦いを舐めてる節が所々に見え隠れする。
カゲトの警戒度に比べると、この2人はその半分も危機意識を持っていない。言い切れるほどにだ。
出来れば共闘したくない相手、それが僕が見据えるこの2人だ。
「じゃあ次は俺でいいのか?」
カゲトが僕をチラッと見て来たので頷きで返した。
「それじゃあ、俺の名前はカゲト、歳……は一応17だ。恩恵は影を司る神からの物だ。影に潜ったり影を刃の様に操る事も出来る。夜は無敵だが朝は弱くなる」
「なるほど。では君には遊撃を頼んでも?」
「問題ない」
影を操る恩恵か。
汎用性は一番だな。
もしかするとカゲロウよりも強い可能性がある。
「それじゃあ僕が最後かな。僕はカガミ、歳は1人だけ15だ。恩恵は説明しづらいんだが、色んな物資を作り出す事が出来る、食料から武器まで何でもだ。まあ武器は僕専用だけど」
「なるほど、カガミ君は後衛向きだな。カゲト君と一緒にに遊撃という事でどうだろうか?」
「いや僕は1人でいい」
「いや俺は1人がいい」
意図せずカゲトと被ってしまった。
確かに影に潜る性質を考えると単独行動の方が都合がいいだろうしな。
僕を足でまといと考えてるのかもしれない。
事実僕の身体能力は雑魚だ。
恩恵を与えられると身体能力、魔力ともに常人以上になるはずだが僕の恩恵は別物のようだ。
実際僕以外のここの恩恵持ち達は、全てのステータスがB以上だった。
「それに僕にはカゲロウがいる。護衛は不要だ」
「確かに、そうであったな」
話し合いがひと段落したのを確認したのか使用人が紅茶を運んできた。
その後は更に話を詰めて、出来る限り体を休める事となった。
開戦まで残り、13時間
シャルテが王都で雇った神の祝福を持つ3人とだ。
男が2人女が1人。
確かに歴戦の戦士って風格はあるが、その内2人は舐めた態度が鼻につく。
基本的に恩恵は先天的な物なので生まれた時からちやほやされていたのだろう。
だが、戦力的にあてになるのは事実。
外ずらだけはよく接しておくとする。
カゲロウにもそう言い含めた。
恩恵の内容は各人とも話したくは無いと踏んでか、誰も言っていない。
自己紹介もしたにはしたが、名前と歳くらいなものだ。
僕が最年少。15才。
流石に恩恵を持つ人間が4人も乗っている馬車だ、魔物も一瞬でチリになって行く。
自慢げに神から得た身体能力を披露する男は、僕には酷く滑稽に思えた。
勿論、魔物避けという重要な役割を背負って貰った事は感謝しているが。
それと情報閲覧では神の恩恵は解らない。
解るのは身体能力、魔力、スキルだけだ。
そして彼らのうち魔物避けをしている男、テスラと1人だけ女の恩恵持ちのアルナは身体能力がAとなっている。
もう1人の男、カゲトは魔力がSでスキル量が1人だけずば抜けて多い。この3人で最強は恐らくカゲトだ。
まあ全員の恩恵が不明なので何とも言えないが。
外で魔物と戦ってるテスラもこの辺りの敵に恩恵を使うつもりが無いのか、特殊な力を使おうとはしない。
まあ、雑魚なので使う必要が無いだけだとは思うが。
馬車はここに来た時とは違う、これでもかというほどデカく、豪華な物だった。
それを2つ走らせている。
馬車は片方が僕を含める、恩恵持ち4人。それとカゲロウだ。
もう片方が雇い主の馬車だ。シャルテやリオンが乗っている。
恩恵の能力は歩兵100人分と同価値と考える事が戦術的に基本だ。
勿論、恩恵の種類によって差異は存在するが、大まかにはそうなっている。
要するにこの馬車に乗っている四人だけで歩兵400人分の働きを要求されている訳だ。
馬が違うのか、馬力の違いによって領地までは来る時よりもかなり早く到着した。
時刻は夕方6時。
明日には国境線が始まる。
そして夕食を終えた後、シャルテの意向によって情報の整理をすると僕たち恩恵を持つ4人とシャルテの父であり、この地の現領主であるセントルグ・マリテノールが一室に集まっていた。
「それじゃあまずは自己紹介と行くか。俺の名前はテスラ、歳は17。恩恵は殴れば殴るほどに相手に莫大なダメージを与える事が出来るもんだ」
僕は思う。それは当然だろうと。
まあ多分、こいつが言いたいのは追加ダメージって意味だろうけど。
「なるほど、ではテスラ君には強い個体や隊長クラスを任せるとしよう」
「おう!」
おい、恩恵まで話さないといけないのか?
聞いて無いぞ。
濁す方法を考えておかないと。
「それじゃ、次は私が自己紹介しましょう。名はアルナ、歳は17です。恩恵の内容は雷を操る事が出来ます。纏ったり、纏わせたり、発したり。魔法の様に使う事も可能です」
雷か、性質が謎過ぎるから何とも言えないな。
彼女自身がどれだけ雷という物を理解しているかによっては高い戦闘能力になるだろう。
「それはこの戦いにおいて重宝する能力だ。アルナ殿には撃滅を任せる事が出来るな」
「はい」
正直、この2人は大して期待していない。
恩恵がどうのって話ではなく、人として……だ。
戦いを舐めてる節が所々に見え隠れする。
カゲトの警戒度に比べると、この2人はその半分も危機意識を持っていない。言い切れるほどにだ。
出来れば共闘したくない相手、それが僕が見据えるこの2人だ。
「じゃあ次は俺でいいのか?」
カゲトが僕をチラッと見て来たので頷きで返した。
「それじゃあ、俺の名前はカゲト、歳……は一応17だ。恩恵は影を司る神からの物だ。影に潜ったり影を刃の様に操る事も出来る。夜は無敵だが朝は弱くなる」
「なるほど。では君には遊撃を頼んでも?」
「問題ない」
影を操る恩恵か。
汎用性は一番だな。
もしかするとカゲロウよりも強い可能性がある。
「それじゃあ僕が最後かな。僕はカガミ、歳は1人だけ15だ。恩恵は説明しづらいんだが、色んな物資を作り出す事が出来る、食料から武器まで何でもだ。まあ武器は僕専用だけど」
「なるほど、カガミ君は後衛向きだな。カゲト君と一緒にに遊撃という事でどうだろうか?」
「いや僕は1人でいい」
「いや俺は1人がいい」
意図せずカゲトと被ってしまった。
確かに影に潜る性質を考えると単独行動の方が都合がいいだろうしな。
僕を足でまといと考えてるのかもしれない。
事実僕の身体能力は雑魚だ。
恩恵を与えられると身体能力、魔力ともに常人以上になるはずだが僕の恩恵は別物のようだ。
実際僕以外のここの恩恵持ち達は、全てのステータスがB以上だった。
「それに僕にはカゲロウがいる。護衛は不要だ」
「確かに、そうであったな」
話し合いがひと段落したのを確認したのか使用人が紅茶を運んできた。
その後は更に話を詰めて、出来る限り体を休める事となった。
開戦まで残り、13時間
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜
海月 結城
ファンタジー
ストーカーが幼馴染みをナイフで殺そうとした所を庇って死んだ俺は、気が付くと異世界に転生していた。だが、目の前に見えるのは生い茂った木々、そして、赤ん坊の鳴き声が3つ。
そんな俺たちが捨てられていたのが孤児院だった。子供は俺たち3人だけ。そんな俺たちが5歳になった時、2人の片目の中に変な紋章が浮かび上がった。1人は悪の化身魔王。もう1人はそれを打ち倒す勇者だった。だけど、2人はそんなことに興味ない。
しかし、世界は2人のことを放って置かない。勇者と魔王が復活した。まだ生まれたばかりと言う事でそれぞれの組織の思惑で2人を手駒にしようと2人に襲いかかる。
けれども俺は知っている。2人の力は強力だ。一度2人が喧嘩した事があったのだが、約半径3kmのクレーターが幾つも出来た事を。俺は、2人が戦わない様に2人を守護するのだ。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる