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四大貴族

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 滞りなく王都に到着する事が出来た……のはいいのだが……。

「何故ついて来る?」

「貴方馬車に乗っていたわよね」

「私はお嬢様の付き人でございますので」

 という具合に何故かトレジャーハンター風の女と魔術師風の男に付きまとわれていた。
 透明カーテンが何らかの方法で破られた?
 いや、かまをかけているだけの可能性もある。
 今自分からぼろを出すのは得策とは言えない。

「良かったら私の別荘に来ないかしら?」

「なにお前、どんだけ尻軽アピールしたい訳? 生憎処女しか興味ないんで断る」

 適当な理由があれば断れるだろうと踏んだ。
 変態だとでも思われれば付きまとわれることも無くなるだろう。

「なっ!? 私はまだした事ない……じゃなくて! 私の家で貴方の事を聞きたいの!」

「お嬢様、その言い方ですと伝わる物も伝わりませんよ」

「そもそもお前ら誰なんだ?」

「名前を聞く前に自分が名乗ったらいかがかしら?」

「じゃあいいや、もう会うことは無いだろうが一応またな」

 僕は早歩きで本来の目的である冒険者ギルドに向かう。

「待って!! ごめん!謝るから! だから待って!」

 歩みを止めることは無く、僕は出せる限りの早歩きで二人をまこうと試みる。
 だが、僕以上の早歩きを見せた付き人が僕の前に回り込んだ。

「申し訳ありません。少しだけでもお話を聞いてはいただけませんでしょうか?」

 付き人の方は僕の機嫌を伺うような態度で接してくる。
 だが、その声色や仕草は完璧で話を聞いてもいいかもしれないと思わされるほどだった。

「仕方ない。あっちのうるさいのと話す気は無いが、付き人の話は聞いてもいい」

「ちょっと、うるさいのって誰の事よ」

「抑えてください、お嬢様。今は彼を屋敷に招くのが先決かと」

 口ぶりからするとどこぞの貴族って所かな。
 僕に声を掛けるって事は透明を何らかの目的に使いたいって事か?
 正直、僕は神の恩恵を受けた奴らの次に貴族と王族が嫌いなんだ。
 関わりたくはないが、国家情報を入手するに当たっては適切な人物と言えるだろう。
 付き人の男が迂闊に情報を漏らすと言うのは考えづらいが、この馬鹿女なら何とかなりそうだ。
 いざとなれば黒魔術もある。

 僕達三人は別荘だとかいう屋敷に向かった。
 中に入るとメイドと執事が多数姿を現す。
 同じ服、同じ髪飾り、同じ髪型。
 どこぞの軍隊か己らは。

 客間に通されると、よい香りのするお茶を出された。
 毒入りとかを考えると迂闊に口をつけられない。
 貴重品はインベントリの中だと言っても毒で殺される可能性もあるので、完全に信用できるまでは敵地で安心するつもりは無い。

「それで? 結局お前らは誰なんだ?」

「はい。この方はシャルテ・マリテノール様。この国の貴族でも四家しか存在しない侯爵家の次女に当たるお方でございます。私はその付き人兼護衛を仰せつかっております、リオンと申します」

「シャルテとリオンな。覚えた一応僕も名乗っとくよカガミだ。今後よろしく頼む」

「私の偉大さは解ったかしら? 今なら先の非礼を詫びる機会を差し上げてもよろしくてよ?」

「僕には嫌いな物が幾つかある。一番嫌いなのは神の恩恵を受けた、たったそれだけでいきってる奴。二番目は生まれがいいだけでいきってる偽物。僕が話すのは人だ、お前の家でも血でも無い。非礼を詫びるならチャンスをやるが?」

「黙りなさいよ……あなたはさっさと私にごめんなさいって言えばいいのよ!」

「そうか。話はそれで終わりか? なら僕は帰らせて貰う。邪魔したな」

 僕は座っていたソファーから立ち上がり、帰宅の為にドアのノブに手を伸ばした。
 すると、部屋の隅に控えていた鎧の男が2人立ちふさがった。

「どけよ」

「そういう訳には行かない」

「右に同じく」

「ならどかすまでだ」

「させるとでも?」

「お前たちの意見を聞いた覚えはないな」

 一触即発。
 この部屋を第三者が見れば、確実にそう表現するだろう。
 そんな雰囲気を崩したのは、やはりと言うべきか付き人のリオンだった。

「双方落ち着いて下さい。シャルテ様、ここは貴方が非礼を詫びるべきかと」

「そう……ですね。その……カガミ様、私の非礼をお許しいただけますか?」

 シャルテは怒りが収まった訳では無いだろう。
 僕に頼みごとがあるような、打算ありきの謝罪。
 だけど、僕はそれが嫌いじゃない。
 どうあれ状況を自分の感情以外の視点から見れた事は事実だ。

「それが出来るなら合格だ」

 僕は鎧を着た護衛2人から顔を背け、最初に座っていたソファーに腰を下ろした。

「さあ、それじゃあお前らの事情について聞かせて貰おうか」

「はい。では私が領地を離れ、王都まできた理由からお話いたしましょう…………」
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