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最強は最強へと

プロローグ 能力決め

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 生と死、生き残ったもの、生き残れなかったもの、その二つが同時に存在することは無い。
 それが世界の理だった。

「そういう事なんだな?」

「はい。私たちの世界を救ってください」

「ああ、俺が楽しめるんならそれでいい」

「それでは一番目の貴方の人生から最強を選択してください」

 俺がこんな場所に居るのには勿論理由が有る。
 俺は死んだんだ。
 全うしたとは言えない結果だったのだろうが、それでも絶対に事実は変わらない。
 騒ぎ散らす事も出来るが意味が無いのは解っている。
 俺が死んだのは十八の時だった。
 死因は不明。
 俺の目の前にいる女がそう言ったのだからそれは誰にも解らない事なのだろう。
 死んでしまった事が覆しようの無い事実であるならば、俺にはどうする事も出来ない。

 それじゃあ今からを考えよう。
 この女は俺よりも高次元の法則から飛び出してきた存在。
 もしくはそんな存在に関わりのある何者か。
 死後の人間に干渉できるという事はそう言う事だ。
 死後では無いと干渉できないという条件があるのかもしれないが。
 それでも俺に選択の自由があるようには思えない。

 うん、彼女の言っている事をひとまず整理してみよう。
 まず、ここは世界の狭間だという事。
 この場所は死後の知的生命体が来る場所で、そもそもここにこの女がいる理由は無いのだと彼女は言う。
 だが女の持つ技術を使いこの空間に割り込んだ。
 それはここに来る者と話をする為だと言う。
 彼女が望んでいる事は俺に他の世界へ行けって事。
 そこで俺は、その世界を危機におとしいれている外的要因を排除しろと言われた。
 そもそも彼女たちはその世界を正常に管理していたが、その外的要因のせいで人口や技術力が著しく低下。
 それを何とかするために俺に手伝ってもらいたいと言う事だ。
 俺以外にも彼女と対話し、その世界に行った人間は多くいるそうだ。
 実際死んだ人間すべてにこの話を持ち掛けているらしいので、かなりの数が世界を移動しているらしい。
 ちなみに異世界へ行かなければ通常通り消滅が待っている。
 選ぶ選択権を与えるつもりはなさそうだ。
 彼女が言っている事が嘘か真なのか証明する手立ても持ち合わせてはいない。

 次が彼女の言っている最強の話だ。
 俺達異世界人は人生を一度体験している。
 それはかなりのアドバンテージになるだろうが外的要因を排除するにはどうしても力が足りないのだとか。
 そこで行うのが最強を与える事。
 仮に時間を操る能力であっても、不死の能力であっても、授ける事が可能らしい。
 実際、昔の転生者にはそれを選択した者もいたそうだ。
 さらに彼女が担当しただけでも、二万人以上の転生者がいるようなのだ。
 そこで俺は一つの疑問を抱いた。

「そんな多くのチートどもが行ったにも関わらず、その外的要因とやらは片付かないのか?」

 当然の疑問だ。
 彼女の言葉を信じるならば、二万人以上が自分の最強を持って転生したのだ、それでもダメとはどういう事だろうか。

「はい。解決しておりません。それどころか相手は数を増やしているのが現状です」

「それはどうしてなんだ?」

「原因はいくつかあります。まず転生者が自分の力を正しく理解できていない点。次に最初の転移場所がその人物にとって生存不可能な場所である事。最後は度胸でしょうか」

 一つ一つ聞いて行こうか。
 度胸に関しては何となく解るが、それ以外はちょっと意味が解らない。

「まず自分の力を理解できていないと言うのは?」

「はい。例えば時を止める能力を持つ人間がいました。その人間が能力を発動した瞬間、その人間を含め全ての時間が停止し、私どもが介入し時を動かしました」

 は? それってつまりコイツ等がくれる最強ってのは言葉通りの物になるって意味か。
 自分以外を止める能力と言えば良かったのか。
 哀れな奴だ。

「他に質問はございますか?」

「ああ。最初の転移場所は選べないのか?」

「いえ、言ってくだされば望む場所へ転移させます」

「そうか……」

 逆に転移場所を指定しなければランダムで決定される訳か。
 上空や宇宙空間、深海だったら詰みだな、岩の中とかいう選択肢もあるのか?
 コイツ、多分だけどかなり言葉が足りない。
 彼女がそういう性格なのか、他にも居るって奴ら全員そうなのかは解らないが。
 これは慎重に事に当たる必要があるな。

「聞きたいんだが、他の奴らはどんな物を持って行ったんだ?」

「一番多かったのは、誰かと同じ力、という奴ですね。アニメやゲームのキャラと同様の力を身に着けたいとおっしゃっていました。その他ですと洗脳、不老不死、核兵器、能力略奪、分身、喋った事が実際に起こる、私。など千差万別です」

「お前を連れていく事も出来るのか?」

「はい。精密な複製をお渡しします」

「あ、そっか」

「はい」

 複製とかまじまじ言われると、なんか萎えるな。
 持って行った奴が聞いて無い事を願おう。
 知らない方が良い事なんていっぱい有るに決まってる。

 さて、俺の最強か。
 なんでも貰えるとなると逆に思いつかなくなる。
 アレにしようとも思うし、それならこっちでもってなる。
 言い方によっては全てを混ぜた能力も可能なんじゃ無いのか。
 そんな考えがよぎる。
 けど、思いつかない。
 俺が人生で考えられる最強……

「決めた」

 まあ単純明快だわな、自分の能力なんだ、自分で作る。

「俺の能力は『システム』だ」

「『システム』でしょうか、解りましたそれでは転移を開始しますね」

「ちょっと待て」

「何でしょうか」

「もっと具体的『システム』の内容を決める」

「畏まりました」

「パソコンって出せるか?」

 ドスン!
 パソコンが降って湧いた。

「ここに」

「これで、俺が俺のためにシステムを作る。時間制限とか無いよな?」

「解りました。存分に」

 よし!
 うまくいったようだ。
 『システム』って言った瞬間飛ばされそうになった時はヤバいと思ったが、やはり細かく能力を設定する事も可能なようだな。
 俺が使用するシステムだ、チートな物以外はあり得ない。
 パソコンには既にシステムと書かれたアプリケーションが追加されていた、それ以外は基本的な物しかない。
 そのアプリを開くと全てを設定できるような形でエクセルのような画面が立ち上がった。
 正直ここまでやりやすいソフトは見た事がない。
 能力を設定して行こう。
 まず、今の俺では外的要因とやらには絶対に太刀打ちできない。
 急な身体能力の増加も避けたい。
 欲しいのは成長システムだ。
 レベル制を書き加える。
 レベル上昇によるスキルボーナス。
 偉業達成による称号ボーナス。
 クエスト達成による経験値ボーナス。
 経験値の所得方法は思いつく限り多く作っておく。
 スキルはポイント制でレベル上限は出来る限り多く設定。
 ググって見つけた能力をあるだけスキル一覧に追加していく。
 勿論スキル全ては俺に対して最適化する。
 例えば自分の出した炎で火傷はしない。
 ポイントを使わずとも、それに付属する行動をすればスキルを入手できるようにも設定する。
 次にメニュー画面の作成。
 音声によるログの収集。
 攻撃力や防御力、武器や装備なども細かく表示するステータス表示。
 持ち物をシステム内部に数的情報として保存する機能。
 他にも思いつく限りの設定を織り込む。
 レベルの上限は無限。
 称号やスキル効果は勿論重複する。
 称号とスキルの数はシステムの自己学習能力によって常時増え続ける。
 例えばスキル欄に載っていない能力を見たり調べたりすると、俺自身もポイントで同じ物を獲得できるようになる。
 それと職業による成長の方向性も組み込む。
 例えば戦士でレベルが上がると攻撃力と防御力の上昇率が高くなる。
 薬剤師で薬を作るとスキルが手に入りやすくなる。
 システムの制限は緩められるだけ緩めた。
 だが、最初から最強状態になったり最強の職業になったりは出来ないようだ。
 能力がシステムなのだからしょうがない。
 実際、最強の身体能力なんて物にするようりは汎用性が桁違いなのだから、それくらいは目をつむろう。
 全ての職業の成長率を上げられるだけ上げる。
 向こうの世界の平均ステータスを疑似的に作り出し、それに対応するように数字をいじった。
 このシステムのレベル一万が異世界の最低ステータスだった、などという穴をなくすためだ。
 俺の作ったシステムでは、異世界人の一般ステータスは100だ。
 それに加えて転生者が仮に筋力upの最強を持っていた場合は筋力が無限となる。
 俺のシステムでは、自分のヒットポイントがゼロにならない限りはどんな傷を受けようが即時回復する。
 痛覚はシステムで設定できる。
 ゼロパーセントを初期値にしておく。

「大体完成したな」

「お疲れ様です。能力を確立いたしますか?」

「まだだ、このシステムの中にお前らが持っている知識を入れてくれ」

「知識を、でしょうか?」

「ああそうだ。俺の作ったこれだけじゃ外的要因とやらを区別できないからな。それとこの設定を起点として不備の出ないように調整を頼みたい」

「承知しました」

 やはりだ。
 彼女は俺の言葉を絶対順守するようだな。
 まあ無理な事を頼んでごねられるわけにも行かないので最低限の事しか頼むつもりは無いが。
 知識さえ入れてくれれば、彼女が担当した二万人の能力は習得スキル欄に追加される。
 それに絶対的に俺より高次元の存在だ、世界その物に干渉するシステムの足りない部分も補って貰えるかもしれない。
 例えば異世界の完全な知識とか。
 全ての質問に答えるシステムとかな。
 中身が足りなくて設定できなかったが、彼女の協力があれば可能かもしれない。
 俺一人の知識で作るよりは確実だろう。
 まあ、最悪彼女が異世界の知識を持っていなかったとしても、地球のウィキの情報は入れてるから安心感が違う。

「それでは転移しますか?」

 彼女の情報整理も終わったようだ。
 流石に早すぎないか?
 俺が設定に何時間、いや何日使ったと思ってんだよ。
 まあ高次元の存在だしな、思考加速とか並行思考とか持ってても不思議じゃない。
 勿論その二つは俺の所得スキル一覧にも乗っている。

「ああ、転移場所は細かく決められるのか?」

「はい。地図を表示しますね」
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